造りすぎのムダとは?7つのムダの内 最悪のムダと呼ばれる理由

造りすぎのムダとは?7つのムダの内最悪のムダと呼ばれる理由

造りすぎのムダとは?7つのムダの内 最悪のムダと呼ばれる理由

製造業には、様々なムダが存在することを知っていますか?加工のムダ、在庫のムダ、手直しのムダなどがあり、どれもコストの増大や生産性の低下を招くことから、避けるべき要因として広く知られています。

中でも、造りすぎのムダは、他のムダにもつながるとして、最も避けるべきムダともいわれています。

造りすぎのムダとは、どのようなことを指すのか。ムダを排除する方法と合わせて紹介します。

最悪のムダと言われる「造りすぎのムダ」

造りすぎのムダとは、どのようなムダのことを指すのでしょうか?

造りすぎのムダとは?

造りすぎのムダとは?

造りすぎのムダとは、製品を造りすぎることによるムダです。製品が余ることで、企業の不利益となります。

一見すると、製品がたくさんあればあるほど利益になると思いそうですが、実際の利益とするには製品を売らなければなりません。ですが、過剰に生産したことで買い手が付かず、折角製品を造ってもムダとなってしまいます。

造りすぎのムダを減らすためにも、製品は「必要なモノを、必要な時に、必要なだけ造る」ことが大切です。

最悪のムダと呼ばれる理由

最悪のムダと呼ばれる理由は、造りすぎることで他のムダも誘発するからです。造りすぎれば保管するための倉庫を圧迫し、管理費用がかかります。運搬する手間も増え、ムダな労力もかかるでしょう。

また、製品を作るには、資材や設備が必要です。必要ない製品を作るために、大切な資材や必要以上の光熱費が使われてしまいます。

さらに、製造には人材も使われます。必要ない作業に必要な人材も使われることは、作業効率のムダともいえるでしょう。

他にも、新製品が発売されたら、破棄も検討する必要があります。電化製品が良い例で、前モデルの製品がいくら残っていても、新モデルの製品が販売されれば売れなくなります。

様々なムダによって企業に負担を強いることから、造りすぎのムダは最悪のムダと呼ばれているのです。

トヨタ生産方式から生まれた7つのムダ

造りすぎのムダについて詳しく知る前に、まずは出所である7つのムダについて知っておく必要があるでしょう。

7つのムダは、世界的に有名なトヨタ自動車が定義したムダであり、他の製造業にも当てはまることから、共通認識として広く知られています。

トヨタ生産方式とは?

トヨタ生産方式とは?

トヨタ生産方式とは、トヨタ自動車が生み出した、工場における生産活動の一つです。トヨタ自動車創業者である豊田喜一郎らが提唱した考えを、元副社長である大野耐一らが体系化しました。

生産方式を意識し取り組むことで、コスト削減や生産効率の向上を実現させ、企業の利益とします。

7つのムダ以外にも、顧客の注文に合わせて生産する「かんばん方式」。1人の作業者が複数の作業をこなせるようトレーニングをする「多能工」。不良品が生じた際に自動で停止する仕組みを作る「自働化」。使う設備を理解し他企業との差を付ける「カタログエンジニア」など、様々な基本概念によって成り立ちます。

7つのムダとは?

7つのムダとは、トヨタ生産方式を形成する基本概念の一つです。生産をする中で「付加価値(メリット)が無い出来事や結果」として、7つのことを取り上げています。

主なムダは、以下の7種類です。企業の利益を高めるためにも、以下の内容について意識する必要があります。

7つのムダ 概要
造りすぎのムダ 不要な製品を作ることのムダ
手待ちのムダ 作業員が手待ち(待機)状態となる人材ムダ
動作のムダ 不要な作業・動作をすることによる時間のムダ
運搬のムダ 不要なモノの移動・輸送をする作業のムダ
不良・手直しのムダ 造り直しや工程の見直しによる作業のムダ
加工のムダ 不要な加工による、資源と作業のムダ
在庫のムダ 倉庫を圧迫することのムダ

また、7つのムダを改善しないことを、利益や作業効率を損なう結果として、8つ目のムダとして考える場合もあります。

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造りすぎのムダが誘発する7つのムダ

造りすぎのムダが、どのように他のムダを誘発するのか。詳しく見てみましょう。

在庫のムダ

在庫のムダは、倉庫を圧迫するムダです。不要な製品を造りすぎることで、他の製品や資材などが置けなくなります。新しい保管場所を用意するにしても、場所代や維持費が余計にかかり、不要なモノのために余計な費用が掛かるでしょう。

また、製品のモデルチェンジによって、保管していても不要となるケースもあります。その場合は、生産にかかった様々なリソースだけではなく処分費用も必要となり、多大な損失となってしまいます。

もちろん、在庫があることで「販売する機会」が得られ、利益を得る可能性もあります。ですが、そのような事例は稀であり、大体の場合はデメリットとなることから、避けるべきムダとして扱われます。

動作のムダ

動作のムダは、不要な作業・動作をするムダです。不要な作業に貴重な人材を使うのは、人件費のムダといえるでしょう。作業してた時間を他の作業に割り当てていれば、必要な製品の生産効率を上げることもできたでしょう

また、動作のムダが多いと生産効率も下がります。ムダな動作が多いほど、一つの製造にかかる時間が長くなり、製造できる数が減るからです。

他にも、考え方によっては「作業員をムダに疲れさせた」ともいえます。動作のムダは、作業員にとってもデメリットしかありません。

ムダな生産を避けるのはもちろん、動作のムダをなくすには、作業工程を見直すことも重要です。

運搬のムダ

運搬のムダは、不要なモノを動かすムダです。造りすぎにより、本来なら必要のないモノの移動や整理を強いられます。

たとえ不要なモノでも、ただ積み上げて置くわけにはいきません。作業や管理の邪魔になるため、レイアウトを決める必要があります。場合によっては、他の在庫の移動も必要となり、ムダな労力となるでしょう。

運搬のムダをなくすためにも、造りすぎを防止するのはもちろん、あらかじめレイアウトをしっかり決めておき、計画的な整理整頓をすることが大切です。

手待ちのムダ

手待ちのムダは、作業しないことのムダです。作業させないことで、作業できる人材をムダにしてしまっています。同じように設備を使わない事もムダであり、その期間に別の作業をさせていれば、利益の向上が見込めたでしょう。

一見すると造りすぎと無関係に思えますが、「余計なモノを作る時間がある」ということは「時間を持て余している」ことに過ぎません。造りすぎのムダに隠れ、手待ちのムダが発生していることを示します。造りすぎのムダを無くすことで手待ちのムダが発覚し、配置やシフトを見直す切っ掛けとなるのです。

他にも、造り過ぎた場合は生産を止める必要があり、その際に手待ちのムダが発生します。もし、残業をしてまで生産をしていた場合は、「手待ちのムダを発生させるために、残業代まで支給して働かせていた」ともいえるでしょう。

手待ちのムダは、シフト調整が甘かったり、作業員に無理をさせることで主に発生します。作業員に対して、暇と無理を与えないよう、シフト調整を見直してください。

ムダを排除する方法

ムダを排除するには、どのような対策を取ればいいのか。主な方法をいくつか紹介します。

ジャスト・イン・タイム

一つ目の方法は、ジャスト・イン・タイムを意識することです。ジャスト・イン・タイムとは、トヨタ生産方式の一つであり、「必要なモノを、必要な時に、必要な量だけ供給する」考えの事です。必要なモノのみを供給することで、造りすぎを防ぐことができます。

そのためにも、生産管理システムなどによる、情報共有が重要になってきます。情報を共有することで後工程に必要な分量が分かり、必要なモノを必要な分だけ用意できるでしょう。

受け取った方としても、材料や仕掛品に制限があることから、ムダに造り続けることもなくなり必要な数だけ製品が造れます。

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かんばん方式

二つ目の方法は、かんばん方式を採用することです。かんばん方式もトヨタ生産方式の一つであり、「ある程度必要数を想定して生産し、足りない場合は、必要に応じて生産する」考えの方式です。

ジャスト・イン・タイムを実現するための方式であり、必要な数が分かってから生産を開始することで、ムダな生産を防ぎます。もちろん。受注してから生産を始めるのでは遅すぎますので、ある程度の在庫を造ったうえでの事です。

仮に、予想で100個生産していた場合、120個の受注なら追加で20個を生産します。必要な数がわかっていますので、造りすぎる心配はありません。逆に、受注が80個の場合でも、20個を余すだけで造りすぎのムダを抑えられます。

そのため、かんばん方式の採用には、予想を立てるためのIT[技術が必要です。loTによって過去データや世情データを収集し分析することで、ある程度の予測が立てられます。

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モノの管理の改善

三つ目の方法は、モノの管理方法を改善することです。造りすぎる理由の一つは「在庫数が分かっていない」ことが挙げられるため、モノの管理を分かりやすくすることで造りすぎを防ぎます。

部品や製品を整頓して物理的に分かりやすくするのはもちろん、生産管理システムなどを用いて、常に在庫を把握できるようにすることも重要です。

他部門とも連携を図り、生産状況をしっかり把握しましょう

タクトタイムを適切に設定

四つ目の方法は、タクトタイムを設定することです。タクトタイムとは、「製品1つ作るのに必要な目安時間」のことであり、タクトタイムより実際に作る時間(サイクルタイム)が短いと、製品を造りすぎてしまいます。

造りすぎを防ぐためには、タクトタイムを明確にし、タクトタイムを基準にすることで最終的な生産時間を決めてください。そして、タクトタイムとのズレが生じないよう、作業や工程を細かく調整していきましょう。

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ECRSによる改善

五つ目の方法は、ECRSを参考にし生産を見直すことです。ECRSとは、「作業を改善する際に検討する項目」のことであり、4つの視点から改善点を探します。

ECRSの4つの視点 概要
排除(Eliminate) ムダな部分を排除
統合と分離(Combine) 似た作業は統合し、長い工程は分離し整理する
交換(Rearrange) より簡単な方法・モノに交換する
簡素化(Simplify) 作業内容を簡略化する

やり方としては、ECRSを上から順に参考にして、生産工程を見直します。順番が上の方が、改善による影響が大きく優先すべき項目です。4ステップに分けて見直すことで、ムダがなくなり全体がスッキリします。

在庫のムダ、動作のムダ、運搬のムダ、手待ちのムダがすべて改善され、造りすぎによるムダを防げるでしょう。

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まとめ:ムダを排除してコスト削減

造りすぎのムダとは、過剰在庫によるムダです。在庫が多いことで倉庫を圧迫し、管理コストに影響を与えます。

さらに、余計な生産をすることで、資源、人材、設備、時間もムダに消費し、企業に対して損失を与えてしまうでしょう。

一見すると在庫が多いことでメリットに感じますが、実際には様々なムダが生じ、企業にとってはデメリットとなります。

造りすぎによるムダ、さらには7つのムダを発生させないためにも、しっかりとした管理や情報共有を行うことが大切です。

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