トヨタの6S活動とは?7S、8Sとどんどん増える構成要素

トヨタの6S活動とは?7S、8Sとどんどん増える構成要素

トヨタの6S活動とは?7S、8Sとどんどん増える構成要素

5S活動というものを聞いたことはありますか?5S活動とは、整頓や清掃を目的とした活動のことであり、品質保全や作業効率の改善のため、欠かせない活動のことです。より良い環境を作るため、多くの企業が5S活動に尽力しています。

そんな5S活動ですが、自動車の製造で有名なトヨタ自動車では、新しく「作法」を加えることで、6S活動としています。より良い環境を目指すためには、従来の5S活動だけでは不十分であり、作法も必要だと判断したためです。

また、企業によっては他の要素も加えており、7Sや8S活動とする企業も増えてきています。今後の販売競争を制するためには、従来の活動のままではなく、新しい活動も必要となってくるでしょう。

トヨタで実施される「作法」とは、どのような活動内容なのか。6S活動の内容や、他の活動内容について紹介します。

トヨタの6S活動とは?

トヨタの6S活動とは?

5S活動と6S活動では、どのように違うのか。それぞれの活動内容について確認してみましょう。

5S活動とは?

5S活動とは、QCD(品質・コスト・納期)の改善を図るための活動の事です。「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Shitsuke)」からなる活動をまとめた言葉であり、それぞれの頭文字を取って5S活動としています。

SCDは、企業の信用を守るために欠かせない要素です。低品質、納期の遅れが目立つようだと、「あの企業は希望するレベルで納品してくれない」として、次からは依頼されなくなります。近年はインターネットによって評判も広まりやすく、信用の低下は、そのまま倒産の危機につながるといっても過言ではありません。

また、コストが高すぎるのも、企業として良くありません。利益が少なくなることから経営が苦しくなり、企業の成長を妨げる要素となるでしょう。

以上のような理由から、QCDの改善は企業の発展に欠かせない要素といえます。そして、QCDの改善を目指すためにも、5S活動が望まれるのです。

関連記事

製造業でよく耳にする5S活動。現場環境を改善することで作業効率や生産性が向上することから、多くの企業が注目・取り入れています。 もちろん、5Sの考えは製造業だけではありません。医療業界、物流業、サービス業、小売業なども実施して[…]

製造業における5Sとは?活動の目的と製造業における効果

トヨタの6S活動に追加された「S」

トヨタの6S活動では、新しく「作法(Saho)」が追加されます。作法とは「正しい行動をする」事です。礼儀正しい作法を身に着け、行動として実行します。

人は、普段の行いが仕事にも反映する生き物です。普段から乱暴な態度を取る人は、仕事中にも乱暴な態度を取ります。日常と仕事で切り替えている人も多いですが、完全に切り替えるのは難しく、仕事の節々で乱暴な行動が目立ってしまいます。

仕事が乱暴だと、5S活動も乱暴になりやすいです。綺麗に清掃したつもりでも汚れが残っていたりなど、活動内容は不十分となります。そのため、普段から礼儀を意識し、仕事中でも丁寧な作業ができるよう心がけます。

活動が丁寧かつ正確なら、より活動の効果も高くなります。末端の従業員も含め、すべての従業員が意識することが、「作法」における活動の目標といえるでしょう。

トヨタの6S活動の構成要素

トヨタの6S活動は、以下の構成要素によって成り立ちます。それぞれどのような内容なのか、確認をしてみてください。

  • 整理:必要と不要を区別
  • 整頓:置き場所の明確化
  • 清掃:掃除とともに点検
  • 清潔:綺麗な状態を維持
  • しつけ:ルールを守り習慣化
  • 作法:正しい行動の実施

整理:必要と不要を区別

整理とは、必要と不要で分けることです。壊れた道具、死蔵された材料、納品できない不良品など、使い道がない物をまとめて処分をします。

不要な物は、残していても保管スペースを圧迫するだけです。必要な物が置けなくなるだけではなく、管理コストもかかります。

また、場合によっては移動や作業の邪魔となり、作業効率も低下します。物が邪魔で掃除ができないと、埃が積もって製品の品質にも悪影響を与えるでしょう。

以上のような理由から、不要な物は残すべきではありません。「いつか使うかもしれない」と思うかもしれませんが、今使い道が不明な物は、基本的に今後も不明なままとなります。

トヨタ自動車では、使わない在庫のことを「在庫のムダ」と判断し、過剰在庫とならないよう製造ラインを調整しています。同じように、過剰に物が溜まらないよう、不要な物はきっぱりと処分してください。

整頓:置き場所の明確化

整頓とは、保管場所を明確にすることです。道具はAの棚。部品はBの棚。掃除用具はロッカーなど、置き場所を決めることで探す時間と手間を減らします。

また、使いやすいよう整頓することで、作業効率も向上します。作業の邪魔にならないだけではなく、必要な物にすぐ手が届き、効率的に作業ができるでしょう。

他にも、道具の転落や道具につまずくといった心配もなくなり、現場の安全性も向上します。

ただ棚や箱に仕舞うだけは、6S活動が求める整理ではありません。分かりやすく使いやすいよう片づけることが、6S活動が求める整理となります。

仕舞う場所を決めるのはもちろん、使った物は元の場所に片づけるよう心がけてください。

清掃:掃除とともに点検

清掃とは、掃除をすることです。パネルの油汚れ、床の水たまり、作業機械の埃などを、汚れが残らないよう綺麗にします。

汚れが残ったままだと、設備の故障につながります。設備の故郷や埃の混入などにより、不良品も発生しやすくなるでしょう。

また、安全性も損なわれます。濡れた床で転倒する事故は、毎年よくあることです。化学薬品による汚れは空気を悪くし、従業員の体調不良も誘発させます。

内容としてはただの掃除でも、品質管理や安全性に対する影響はとても大きいです。掃除を面倒くさがらず、毎日しっかり掃除をしてください。

他にも、トラブルや問題が生じないよう点検することも大切です。点検によって事前に問題点が発覚すれば、問題となる前に素早く対応ができます。

生産がしやすい環境を作るためにも、徹底した清掃を行ってください。

清潔:綺麗な状態を維持

清潔とは、綺麗な状態を保つことです。整理・整頓・清掃を定期的に行うことで、綺麗な状態を維持します。

整理・整頓・清掃は、続けていくことに意味があります。一度しただけで終わりでは、すぐに元の状態に戻ってしまうでしょう。折角、整理・整頓・清掃を頑張っても、それでは意味がありません。

活動の効果を維持するためにも、整理・整頓・清掃を続けていく必要があります。

業務にチェックシートなどを導入して、毎日の清潔活動を心がけましょう。

しつけ:ルールを守り習慣化

しつけとは、活動を習慣化させることです。従業員全員が自主的に行えるよう、活動を習慣化させます。

必要性を教え個人の自主性を育てるのはもちろん、作業前や作業後など、活動する時間を設けることで習慣化していきましょう。

また、やり方を統一化することも大切です。同じ清潔でも、人によって基準は異なります。それぞれで認識が異なると、活動に抜けが生じ十分な成果が得られません。情報を共有することで、すべての従業員が同じように活動ができるようになります。

作法:正しい行動の実施

作法とは、正しい行動を行うことです。「トヨタの6S活動に追加されたS」の項目でも触れたように、礼儀正しく行動することで活動方法を見直します。

礼儀正しいといっても、堅苦しくする必要はありません。作業間の掛け声、道具や設備の扱い方、移動方法、操作方法などを丁寧かつ落ち着いて行うだけです。

落ち着いて作業をすれば、人的ミスや事故の予防にもなります。正しい行動ができるよう、普段から気を付け、習慣化していきましょう。

その他の企業で採用されている6S、7S

他にも、現場で必要なSは色々あります。また、企業や業種によって、必要となるSは同じではありません。

他にはどのようなSが存在するのか。自社に活かすためにも、ぜひ知っておきましょう。

洗浄(Senjyo)、殺菌(Sakkin)

洗浄や殺菌は、主に食品製造業で必要とされるS活動です。食中毒を始めとしたリスクを防ぐため、徹底した滅菌作業が求められます。

汚染された食品を扱うということは、企業の信用を損ねるということです。食中毒のリスクがある商品は、誰も購入したいとは思いません。洗浄や殺菌をする活動は、食品製造業にとって必要不可欠な要素といえます。

活動を習慣化させるためにも、マニュアルやチェックシートを導入し、活動を習慣化させることが大切です。

安全(Safety)、安心(Smile)

安全や安心は、主にサービス業で必要とされるS活動です。快適に過ごすためのサービスを提供するため、安心と安全を保障する活動が望まれます。

具体的な例としては、スマイルが挙げられます。笑顔による対応は、人に安心と安らぎを与えます。不安な時も笑顔で対応してくれれば、安全だと実感もできるでしょう。

サービス業における安心安全は、製造業における品質管理と同じです。提供する商品自体は異なりますが、考え方自体は製造業と同じといえます。

また、製造業では、従業員に向けた取り組みとして「安全」を含める場合もあります。危険な製造環境では、従業員は安心して働けません。作業効率が悪くなるだけではなく、離職者も増えてしまうでしょう。

そのような心配がないよう、業務の安全を確保し、従業員が作業しやすい環境を作ります。

サービス業の活動だからといって無視はせず、顧客と従業員のことを考えた、安全安心な生産を行ってください。

習慣(shuukan)

習慣は、活動内容を習慣化させるS活動のことです。基本的な内容は5S活動における「しつけ」と同じであり、決められた内容を習慣化することで、活動内容を維持します。

新しいSとして加える理由は、それだけ習慣に対する意味を重視しているからです。5S活動の最終的な目標は「維持し続ける」事であり、そのために習慣化は必要となります。

しつけでも十分意味は通じますが、より活動を強調するため、別枠として習慣を加えているのです。

節約、創意工夫

節約や創意工夫は、新しい時代に合わせたS活動のことです。今行われている生産を見直し、新しくすることでQCDの向上を目指します。

近年は、物価高騰の影響からコストダウンが意識されています。少しでも出費を抑えるためには、ムダな要素を排除しなければなりません。

特に、事務部門やサービス部門は、製造部門に比べ効率化が不十分といえます。ペーパーレスや節電など、製造部門以外でも、節約の取り組みが求められます。

また、近年はニーズの移り変わりも激しく、市場の変化に対応するための創意工夫も求められます。昔と同じ生産のままでは、近年の流れについていけません。

多品種少量生産に対応するための生産方式や、ニーズに合う製品作りなど、企業それぞれの創意工夫が必要となります。

まとめ:2S、5S、7S、8Sとどんどん増えるS活動

6S活動とは、従来の5S活動に、新しく「作法」を合わせた活動のことです。トヨタでは、作業効率の向上には新たに「正しく行動する」ことが必要と考え、作法を加え活動を実施しています。

丁寧な作業をすればミスも少なくなり、最終的に、高品質な製品を短期間で作れるようになるでしょう。

また、作法以外にも、様々なS活動があります。洗浄、滅菌、安全、安心など、業種によっては5Sに匹敵するほど必要な要素です。もちろん、主な業種以外でも、必要になる場面はあります。S活動に加えなかったとしても、それぞれのS活動を意識して取り組むようにしてください。

Sの種類は、いくつあっても問題ありません。紹介したS以外にも「しっかり」や「最善」といった項目を掲げる企業もあります。5S活動はもちろん、他にも「自社には何が必要なのか」をよく考え、自社に合わせたS活動を行ってください。

動画「多品種少量生産時代の生産管理システム 失敗しない3つのヒント」を
無料プレゼント!

多品種少量生産、試作、特注、一品物など種類が増えるほど管理が煩雑になり、生産管理システムを導入する会社が増えています。「システムが現場に合っておらず、ほとんど使われていない」そんな失敗を未然に防ぐポイントがわかります。

下記ボタンからダウンロードページに移動していただくと「多品種少量生産時代の生産管理システム・失敗しない3つのヒント」の動画を無料でダウンロードしていただけます。