「7つの設備ロス」とは?生産性や設備効率を阻害するムダとロスを減らして生産効率を上げる4つの方法

「7つの設備ロス」とは?生産性や設備効率を阻害するムダとロスを減らして生産効率を上げる4つの方法

「7つの設備ロス」とは?生産性や設備効率を阻害するムダとロスを減らして生産効率を上げる4つの方法

生産ロスとは、製造の際に生じる損失のことです。商品がムダになるのはもちろん、生産に使われた、資材、時間、人材、電気などがムダとなり、製造において避けるべきことの一つとして扱われています。

生産ロスはどのような場面で発生するのか。7つの設備ロスや、ロスを減らすための方法について紹介します。

7つの設備ロスとは?

7つの設備ロスとは?

7つの設備ロスとは、設備が原因となって生じる、ロスの分類のことです。主に7つの原因が考えられ、それぞれ分類されています。

  • 故障ロス
  • 段取り・調整ロス
  • 刃具交換ロス
  • 立上りロス
  • チョコ停・空転ロス
  • 速度低下ロス
  • 不良・手直しロス

生産性を向上させるためには、それぞれの頻度を見直し、各対策を講じることが大切です。

また、設備操業度を阻害するロスとされる「シャットダウンロス」を合わせて、8大ロスとする場合もあります。シャットダウンとは「停止」や「休止」のことであり、設備に問題が無くても、点検や休憩で設備を止めること自体が生産ロスになるといった考えです。

極論ではありますが、「昼休憩をするため設備を止める」ことが、生産ロスになるといえるでしょう。

もちろん、シャットダウンの考えは、企業の考え方や生産効率によってことなります。シャットダウンが設備ロスになるかどうかは各企業で異なりますので、自社に合わせて対策を取ることが重要です。

設備効率を阻害する7つのロス

7大ロスとはどのような原因なのか。それぞれ確認してみましょう。

故障ロス

故障ロスは、設備が故障し、生産停止となる生産ロスのことです。故障中は設備が使えず、生産がストップします。本来なら生産できたことを考えると、時間的なロスが発生しているわけです。

また、設備の修理も必要となり、金銭的なロスも発生します。さらに、故障する寸前の製品は不良品になる可能性が高く、物量ロスや資源ロスも発生するでしょう。

故障ロスは、生産ロスの中でも特に大きな問題ではありますが、経年劣化も関係し、防ぐのが難しいロスです。壊さないよう大切に扱うのはもちろん、こまめにメンテナンスを挟んで、大停止にならないよう注意する必要があります。

段取り・調整ロス

段取り・調整ロスは、切り替えの際に生じる生産ロスのことです。ロットの切り替えや別製品の切り替えの際に原材料の補充などをしますが、その切り替えが上手くいかず時間的ロスとなります。

生産ロスを減らすためにも、次の作業へと向けた事前準備が必要です。

ただし、時間を短くするため、準備の手抜きをするのは厳禁です。手抜きした結果、故障や不良品の発生に影響します。掃除や整頓が原因で、トラブルになる可能性も少なくはありません。

必要な作業をするうえで、いかに効率的に作業が行えるかが望まれます。

刃具交換ロス

刃具交換ロスとは、刃具の付け替えによって生じる生産ロスのことです。刃具は「はぐ」と読むそうですが、ドリルやフライスなどの製品を加工する時に使用する切削工具のことをいいます。刃具の交換には設備を止める必要があり、その間、生産自体が止まり時間的ロスが生じます。

もちろん、刃具の故障による交換なら、不良品も発生します。故障ロス同様に、大きな被害が生じるでしょう。

設備停止時間を減らすためにも、素早い交換はもちろん、壊れにくい刃具の仕様が望まれます。

立上りロス

立上りロスは、作動までの遅さによる生産ロスのことです。設備の立上げが遅いと、その分作業ができず、時間的ロスや物量ロスが生じます。

特に、休日明けの立上げなど、停止時間が長いと設備は冷えており、立ち上がりは遅くなりがちです。始業してすぐ生産を開始するためにも、動作確認も兼ねて、設備の試運転(空運転)が望まれます。

他にも、準備する作業者による問題もあります。新人と熟練者で作業効率は異なり、立ち上がりの時間も変わってきます。準備のばらつきが生じないよう、マニュアルの作成・指導が必要です。

チョコ停・空転ロス

チョコ停とは、ちょっとしたことで設備を停止させる生産ロスのことです。たとえ、一度の停止時間が数分だとしても、回数が多いと、総合的な停止時間は長くなります。総合的には故障と同様の停止時間となり、時間的ロスになる場合も珍しくはありません。

また、何らかの原因から空転している可能性もあります。排出口で詰まって一時停止になったり、原材料の導入が上手くいかなかったりなど、故障とは違いますが、生産ロスの原因となります。

一回の停止時間が短いことから軽視されがちですが、頻度が多くなれば、その影響は大きいです。特に、無人運転をする際は、空転に気が付かずに長時間の生産ロスになる場合もあります。

頻度が目立つようなら、応急処置で済ませず、しっかりとした原因究明が必要です。

速度低下ロス

速度低下ロスとは、生産スピードが遅いことによる生産ロスのことです。設備本来のポテンシャルと比較すると、生産率は下がり時間的ロスが発生しているのが分かります。

速度が低下する主な原因として考えられるのは、設備の劣化です。パーツにガタがきており、動作が遅くなります。生産速度を算出し、極端に下がっているようなら、メンテナンスや買い替えを検討する必要があるでしょう。

ただ、不良品の発生を防ぐためや設備の消耗を抑えるため、わざと遅くしている場合もあります。理由があって遅くしている可能性もありますので、過去のデータや上司への確認も行うようにしてください。

不良・手直しロス

不良・手直しロスとは、トラブルが生じた際の修正に関する生産ロスのことです。故障した際には修理、チョコ停の場合は設定の見直しなど、各種対応を行うことで、時間的ロスが発生します。

当然ですが、トラブルが生じたら放置するわけにはいきません。応急処置で済ませる場合もありますが、チョコ停を防ぐためにも、根本的な解決が求められます。

素早いトラブル対応はもちろん、トラブル内容をまとめ、発生させないための対策が必要です。

生産効率を阻害する16大ロス

7つの設備ロス以外にも、生産ロスにつながるロスが存在します。それが「人の効率を阻害する5大ロス」と「原単位の効率を阻害する3大ロス」であり、設備操業度を阻害するロスの「シャットダウンロス」と合わせて、「生産効率を阻害する16大ロス」としてまとめられています。

人の効率を阻害するロスと原単位の効率を阻害するロスには、どのような問題が含まれるのか、それぞれ確認をしてみましょう。

人の効率を阻害する5大ロス

人の効率を阻害するロスとは、効率的ではない作業のことです。不用な行動・工程・作業が多いことでムダに作業員に仕事をさせ、時間を浪費することで生産性が低下します。

人の効率を阻害するロスは、以下の5つです。

人の効率を阻害する5大ロス 説明
管理ロス 材料待ち、指示待ち、修理待ちなど、手待ちによる時間的ロス
動作ロス 作業の遠回り、整頓されていないなど、動作の無駄による時間的ロス
編成ロス 工程の手順によって手待ちが発生するなど、作業工程・編成による時間的ロス
自動化置換ロス 自動化ができる簡易作業を人力で行う時間的ロス
測定調整ロス 必要以上に検査、測量を行うことによる時間的ロス

ロスの共通事項としては、作業にムダが生じていることが挙げられます。手待ちによる時間のムダ、効率の悪さによる作業のムダ、人力による人材のムダなど、様々なムダが生産効率を低下させています。

自動車会社で有名なトヨタ自動車では、生産性を上げるため、「作り過ぎによるムダ」や「在庫のムダ」など、7つのムダを挙げています。5大ロスとは異なりますが、ムダを指摘している部分は同じであり、ムダを省くことで生産性の向上につながるといえるでしょう。

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作業員には給料が支払われており、人材コストが掛かっています。生産性はもちろん、人材コストのムダをなくすためにも、作業を見直す必要があります。

原単位の効率を阻害する3大ロス

原単位の効率を阻害するロスとは、生産するにあたって消費するもののことです。生産するためには必要ですが、多すぎると金銭的な負担となります。

原単位とは、一定量の製品を生産する際に使用もしくは排出するモノや時間の量のことをいいます。例えば、製品を生産する際に必要になるエネルギーのことをエネルギー原単位と呼び、製品を生産する過程で排出される二酸化炭素の排出量のことを排出原単位と呼びます。

原単位の効率を阻害するロスは、以下の3つです。

原単位の効率を阻害する3大ロス 説明
歩留りロス バリ取りやランナー部分など、加工によって発生する原材料のロス(金銭的なロス)
エネルギーロス 生産に使用された電気代や燃料代などの金銭的なロス
型・治工具ロス 治工具の修正や制作に掛かる金銭的なロス

ロスの共通事項としては、資金の無駄遣いが挙げられます。電気代や修理費用はもちろん、原材料の購入にも資金が必要です。歩留りロスが多いようだと、それだけ、余分に原材料を購入する必要があります。

また、消費が多いことで、生産効率にも影響します。歩留りロスが多いと製品に使う原材料が少なくなる、エネルギーロスや治工具ロスが多いとコスト削減のために設備の制限が必要になるなど、コストの圧迫から生産に制限が課せられてしまうでしょう。

生産に制限を設けないためにも、無駄遣いのない効率的な作業が望まれます。

生産システムのロスをゼロにするTPM活動

製造工程におけるロスをなくすためには、TPM活動を意識することも大切です。

TPM活動とは、「Total Productive Maintenance」の頭文字を取った、「全従業員が一丸となってロス対策を行い、効率的な作業工程を実施する活動」のことです。現場作業員はもちろん、営業、研究、物流、事務など、ロス削減の活動を企業全体に広げ、発生するロスに対する対策を講じます。

また、TPM活動は以下の基本理念によって構成されます。

  • 儲ける企業体質づくり:活動は、結果として会社の利益にすること
  • 予防哲学(未然防止):発生してから対処するのではなく、未然に防ぐ
  • 全員参加(参画経営・人間尊重):全員が活動を意識し取り組むことが大切
  • 現場現物主義:机上の空論で終わらせず、実際に試して議論すること
  • 常識の新陳代謝:古い考えに捕らわれず、新しい考えや常識も取り入れること

TPM活動では、昔ながらの「上層部による決定」ではなく、「現場を優先した考え」が求められています

そのためにも、「製品・設備開発管理体制づくり」や「品質保全体制づくり」、「教育訓練の体制づくり」など、様々な体制づくりが必要です。

生産管理システムなどによって作業工程をデータ化し、問題点やトラブル内容などをまとめ、各部署で共有することにより対策を行っていきましょう。

ロスを減らして生産効率を向上させる方法

ロスを減らして生産効率を上げるにはどうしたら良いのでしょうか。方法を考えてみましょう。

現状把握と原因の明確化

1つ目の方法は、現状把握と原因の明確化することです。いくら「問題がある」と分かっても、原因が分からなければ対応のしようもありません。現状すらも分かっていないようなら尚更です。

まず大切なのは非効率的な原因を究明することであり、その原因に対して、対策を講じることが基本となります。

そして、対策によってどのように変化したかを明確にし、結果を視覚化して評価すると良いでしょう。

5S活動の徹底

2つ目の方法は、5Sを徹底することです。5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」のことで、5S活動を徹底することで生産効率の向上が見込めます。

生産において必要なものと不要なものを整理整頓することで、必要なものが必要な時に取り出すことができ、整理して不要物を処分することで整頓しなければならない物も減らすことができます。また、物を置く時のルールを決めておくとより良いです。

工場内や機械設備の清掃を定期的に行なうことで、作業現場全体を清潔な状態を保つことができます。それにより故障の原因を排除し、より効率よく機械・設備を稼働させることができます。

5つのSを確実に徹底して実施することが大切になります。まずは意識することから始めてみるのも良いでしょう。

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TPM活動を取り入れる

3つ目の方法は、先ほども挙げたTPM活動を取り入れることです。「生産システムのロスをゼロにするTPM活動」の項目でも触れましたが、活動を取り入れることで、できることも増えていきます。研究部門による壊れにくい刃具の形成や、管理部門による在庫ロスの削減など、様々な形で製造部門をサポートします。

他にも、衛生部門によるリスク対策や、営業部門による生産のマネジメントなど、生産以外でも、TPM活動による影響は大きいです。

生産率の問題は製造部門の問題ではありますが、生産率の低下による利益の低下は、製造部門だけの問題ではありません。

製造部門だけでは分からない問題も多いです。製造部門だけで解決しようとはせず、他部門との連携も意識してください。

生産管理システムの導入

4つ目の方法は、生産管理システムを導入することです。生産管理システムとは、AIやloTなどのIT技術を取り入れた管理システムのことであり、納期、製造、在庫、原価などの生産情報をまとめて管理します。

管理データからは在庫情報や進捗状況が把握でき、在庫ロスや編集ロスなどの問題にも、すぐに対応できるでしょう。

また、管理機能の一つである「生産計画機能」を活用すれば、生産計画の立案もサポートできます。人が行う作業を減らすことで、自動化置換ロスの削減にもつながるのです。

他にも、「品質管理機能」によって測定調整ロスを減らしたり、「工程管理機能」から管理ロスや編成ロスを把握したりなど、様々な形で、ロス削減効果が期待できます。

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まとめ:ロスを減らして製造現場の生産効率を上げる

生産のロスは、様々な原因によって発生します。不良品の発生による物量ロス、ムダな作業による時間的ロス、電気代や修理費用による金銭的ロスなど、様々な形でロスとなります。

特に問題といえるのが、設備によるロスです。設備ロスは生産性に直結し、会社の利益向上を目指すためにも、改善が求められます。

ロスを減らし生産性の向上を目指すためにも、ぜひTPM活動や生産管理システムの導入を検討してみてください。

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