近年、様々な形でデジタル化が進んでいます。電子マネー、電子書籍、オンラインショップ、タブレット教材など、デジタル化への影響は、身近な場所で見ることができます。
企業でもデジタルへの移行は進んでおり、loTやクラウドサービスなどの導入は進められています。将来的にもデジタル化への移行は重要であり、今後の時代の流れに合わせるためにも、デジタル化について理解しておく必要があるでしょう。
そもそも、デジタル化とはどのような変化を示すのか。デジタル化によるトレンドや、デジタル化するメリットなどを紹介します。
経済産業省も推進する製造業のデジタル化
デジタル化を目指すためには、まずデジタル化について知っておく必要があります。
デジタル化とは、どのようなことを指すのでしょうか?
デジタル化とは?
デジタル化とは、アナログ作業をデジタルによる作業へ切り替えることです。書類の保管方法を紙とファイルからクラウド管理へと移行するように、IT技術を活用することで新しいビジネス形態へと変化させます。
他にも、Web会議への変更や署名のクラウド化なども、デジタル化による変化といえるでしょう。
近年は技術の発展が目覚ましく、様々な事がデジタル化されています。電子マネーもデジタル化の一つであり、普段の生活の中で、デジタル化に触れる機会も少なくはありません。
製造業のデジタル化
製造業のデジタル化とは、アナログ管理をデジタル管理にすることで、生産性の向上や作業効率の向上などを目指すことです。
例えば、生産管理システムを導入することで、工程の見直しや在庫管理などが楽になります。
他にも、デジタルツインによって仮想空間内で製品開発が進められるなど、より生産効率を上げられるでしょう。
IT化やDXとの違い
IT化(Information Technology)とは、IT技術を日常や社会へ取り入れることです。作業用ロボットなどのIT技術を導入することで、生活や仕事をより便利にしてくれます。
また、DX(Digital Transformation)とは、IT化によって企業や社会の仕組みを変革させる意味があります。
デジタル化との違いは、目的の違いです。IT化は「IT技術の導入・活用する」ことであり、デジタル化は「アナログデータをデジタルデータに変換する」ことを目的とします。
つまりは、「既存の作業をデジタル作業に変換することがデジタル化」であり、「デジタル技術を用いたIT技術を活用することがIT化」といえるでしょう。
製造業務で例を挙げるなら、「在庫管理を生産管理システムで行うことがデジタル化」であり、「生産管理システムで在庫の過不足を防ぐことがIT化」といえます。
どちらも似たような表現ではありますが、明確な違いがあり、同じではありません。
ただ、IT化もデジタル化も、DXには必要な事です。最終的な目的をDXとする場合は、どちらに対しても意識した取り組みが必要となります。
製造業のデジタル化の現状
製造業界でのデジタル化は、世界的にも浸透しています。技術大国であるアメリカはもちろん、中国などもデジタル化によって大きく成長をしました。他の国でもデジタル化の試みは進み、製造業界にとってデジタル技術は必要不可欠な技術となるでしょう。
ですが、その一方で日本のデジタル化は芳しくありません。2020年に経済産業省が発表した「2020年版ものづくり白書」によると、約半分の企業がデジタル技術を導入していないことが分かりました。全体の24%(導入してない割合の半分)は「活用を検討中」であるものの、導入には至っていない状態です。
導入の課題としては「ノウハウの不足」「人材の不足」「予算の不足」などが挙げられ、特に、中小企業にとっての問題となっています。
ものづくり大国として有名な日本ではありますが、デジタル技術の活用に関しては、他の国よりも遅れているのです。
製造業におけるデジタル化のトレンド
デジタル化といっても、具体的にどのような内容か分からない人もいると思います。
デジタル化とはどのようなことを指すのか、デジタル化の例をいくつか紹介します。
IoT機器の導入による効率化
loTとは、「モノのインターネット」のことです。パソコン、自動車、デバイス、人など、あらゆるモノをインターネットでつなぐことで、情報のやり取りを可能にします。
外出先からの消灯や湯沸しなど、日常生活でも活用されている技術であり、触れたことがある人も多いと思います。
生産現場では、主に情報管理に活用されます。生産管理システムによってリアルタイムによる管理を可能にし、ボトルネックなどの問題を素早く改善するのです。
他にも、センサーからの情報を取得したり、逆に作業用ロボットに指示を出したりなど、工場のデジタル化・IT化には欠かせない技術です。
ペーパーレス化
ペーパーレス化とは、書類などの紙を使わないことです。メールやWordソフトなどを使うことで紙を必要とせず、連絡や記録を行います。
それにより、紙やインクの消費量を抑え、コスト削減効果が期待できます。
また、「紙に書く」といった作業が必要なくなり、書類作成時間が短縮されます。それにより、空いた時間を別の作業に使うことができるほか、書類作業に追われることなく、ストレスフリーな状態で仕事ができるでしょう。
製造業の皆様は、職場に図面や書類の管理にお困りではないでしょうか? 印刷して棚などで保管している場合、欲しい図面を探すのに多くの時間がかかってしまうのではないでしょうか? 近年、図面や書類を紙ではなくデータで管理する「ペーパー[…]
オンライン会議
オンライン会議とは、インターネット上で会議することです。ZOOMなどの会議ソフトを導入することにより、自宅に居ながらでも、会社の会議に参加できます。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い在宅ワークが増えたことで、多くの企業がオンライン会議を導入しました。
製造業でもそれは同じで、役員会議などに活用されます。出勤の必要がないことから、外出先ホテルからの参加や、海外支部からの参加も可能にします。
また、出勤しないことで交通費の節約にもなります。企業としてはコスト削減、個人としては出社の手間が省けると、今後も期待されているデジタル技術です。
RPAなどの導入による自動化
RPA(Robotic Process Automation)とは、「ロボットによる自動化」を意味する言葉です。AI搭載の作業用ロボットを導入することで、人の手が必要ない、自動化された作業現場が作れます。
また、ロボットにはドローンも含まれます。ドローンによる高所の点検や清掃も、一種のRPAといえるでしょう。
介護用ロボットや災害救助用ロボットなどもあり、製造業界以外でもRPAの可能性が期待されています。
近年、新しい製造現場の形として、RPAに注目する企業が増えてきています。導入による作業の効率化はもちろん、人材不足の解消にもなることから、導入を検討する企業も少なくありません。 RPAとはどのようなシステムなのか。他の類似シス[…]
スマートファクトリー
スマートファクトリーとは、「DXされた工場」を指す言葉です。「考える工場」とも表現され、loTやRPAなど様々なデジタル技術を導入することで、人の手が必要ない、自動化された工場を目指します。
ドイツ政府は、スマートファクトリーを中核とした政策である「インダストリー4.0」を2011年に提唱しており、それに向けた取り組みが進められています。
日本政府が指す「Connected Industries」とは少し方向性が異なりますが、DXによる新しい工場の形として注目がされています。
- Connected Industries
- 人、機械、システムが協調することで、新しい価値と社会を作る方針
「スマートファクトリー」について聞いたことはありますか?第四次産業革命を目指した取り組みであり、将来的にはほとんどの企業がスマートファクトリー化すると考えられています。 国内はもちろん、世界各国でもスマートファクトリーに対する[…]
デジタルツイン
デジタルツインとは、仮想世界に現実世界と同じものを作成するデジタル技術のことです。
仮想世界とは、デジタルの世界に作ったもう一つの世界であり、仮想世界にモデリングをすることで、様々な事が可能となります。
例えば、製品開発についてです。現実世界では修正するたびに新しく製造し直さなければなりませんが、3Dモデリングならデータを修正するだけで簡単に改善できます。それにより、開発にかかる時間を大幅に削減できるだけではなく、試作のたびに作成するコストも削減できるのです。
また、デジタル世界での開発なら、研究する場所も必要ありません。仮想世界を共有できるデバイスがあれば、海外からでも参加できます。
さらに、VR(仮想現実)やMR(複合現実)も活用することで、よりリアルに製品に触れて考えることができるでしょう。
他にも、住宅をモデリングした住宅見学、都市をモデリングした災害シミュレーションなども可能にします。
仮想世界だからこそできることは多く、今後の製造業界において、期待されるデジタル技術です。
デジタルツインという技術を知っていますか?「ツイン」とは「双子」という意味があり、文字通り「デジタルの双子」と言う意味になります。 大まかに説明すると、現実世界のモノをデジタル世界に再現する技術になりますが、応用性と実用性が高[…]
製造業のデジタル化するメリット
デジタル化をすると、どのようなメリットが生じるのでしょうか?デジタル化によるメリットをいくつか紹介します。
- 生産性の向上
- 作業員の負担軽減
- 人材不足の解消
- 作業員の働き方の改善
- 製品の品質向上
生産性の向上
一つ目のメリットは、生産性が向上することです。アナログがデジタル化すれば作業時間が短縮され、空いた時間を作業する時間に活用できます。
単純に、数字を計算するにしても、暗算より電卓を活用する方が圧倒的に早いです。桁や数が多いほど、その差は大きく広がるでしょう。
デジタル化が進むほど作業時間は短縮され、生産性は向上していきます。
作業員の負担軽減
二つ目のメリットは、作業員の負担が軽減されることです。人力作業(アナログ)が機械作業(デジタル)へと切り替わることで、作業量が大幅に削減されます。
書類作業をするにしても、手で書いて作成するより、パソコンで作成する方が何倍も楽です。
また、「重量物の運搬」や「高所での作業」といった心身に負担の大きい作業も、デジタル化・IT化によって代わりにロボットが担当します。
負担だけではなく安全性も保証され、作業員が作業しやすい現場へと改善されるでしょう。
負担の軽減は離職率の低下にもつながり、人材不足の解消にも関係していきます。
人材不足の解消
三つ目のメリットは、人材不足が解消されることです。デジタル化によって作業効率が改善され、最少人数でも作業ができるようになります。
また、作業用ロボットが導入されれば、人間の代わりとして働いてくれます。実際に、弁当の品入れができる作業用ロボットは開発されており、すでに導入されている現場も存在します。
近年における少子高齢化の影響により、製造業はもちろん、様々な業界で人手不足が問題となっています。技術継承も難しくなり、将来が不安な企業も少なくはありません。
ですが、デジタル化が進めば人手不足は解消され、企業の拡大も目指せます。企業を継続し利益を上げるためにも、工場のデジタル化は重要になっていきます。
作業員の働き方の改善
四つ目のメリットは、作業員の働き方改善に取り組めることです。作業時間の短縮や人材不足が解消されることで、勤務状況を見直すことができます。
作業時間が短縮されれば、作業も早く終わります。今までのように残業する必要もなくなり、定時帰宅も夢ではありません。それに伴い、残城代が必要なくなることで、コスト削減にもつながります。
また、人材不足が解消されれば、交代要員も用意できます。有給休暇の消費ができるのはもちろん、属人化を防ぐことにもつながるでしょう。
作業員の働き方改善は、作業者はもちろん、企業にとっても大きな意味があります。
製品の品質向上
五つ目のメリットは、製品の品質向上が目指せることです。ロボットが作業することで品質が統一化され、技術の違いによる品質不一致を防ぎます。
万が一問題が生じた場合でも、センサーやカメラによって素早く反応し、対応する事で品質低下を防げるのです。
また、デジタル技術を活用することで、作業の標準化も可能にします。センサーなどによって熟練技術者の手法を分析し、マニュアル化することで誰でも熟練技術者の技能を習得できるでしょう。
技術継承は、製造業が抱える問題の一つです。変わらぬ品質を守り続けるためにも、デジタル化が必要になります。
まとめ:製造業のアナログ作業をデジタル技術で効率化する技術
デジタル化とは、アナログ作業をデジタル作業へと切り替えることです。今までの手作業をパソコンを使って作業することで、より素早く効率的に、処理することができます。
生産性の向上はもちろん、作業員の負担軽減、技術継承、品質向上、さらには人材不足の解消にもなり、企業・工場のデジタル化は、今後の運営に欠かせない要素といえるでしょう。
DXやスマートファクトリーを目指す世界としては、今後も、様々な形でデジタル化が進むと考えられます。デジタル化を基準とした仕組みも多く開発され、アナログのままではいろいろと厳しいです。
急いでデジタル化をする必要はありませんが、世界の発展に合わせ、デジタル化を進めてみてください。