現在日本では、人材不足が問題とされています。少子高齢化を始めとした影響により、多くの企業で人が集まらない状態です。人がいないことから事業縮小や倒産する企業もあり、社会全体における深刻な問題となっています。
製造業でも人材不足の影響は大きく、課題の一つとして挙げられています。製造業ならではの原因や問題もあり、将来のためにも対策が必要になるでしょう。
人材不足となる原因には何があるのか。人材確保のための対策と合わせて紹介します。
製造業の人手不足の理由
なぜ、人手不足となっているのか。製造業ならではの要因も踏まえて紹介します。
- 製造業の3Kの負のイメージ
- 新型コロナウィルスの影響
- 世代交代の失敗と後継者不足
- 国内の労働人口の減少
製造業の3Kの負のイメージ
一つ目の理由は、3Kのイメージが強く人が集まらないからです。
- キツイ
- 汚い
- 危険
3Kとは、「きつい」「汚い」「危険」の頭文字を取った労働条件が厳しい職場を指す言葉であり、仕事が辛い事から、「避けるべき職場」の代名詞としても使われています。他にも、「(残業が多くて)帰れない」「(規則や仕事内容が)厳しい」「給与が安い」なども、新しいKとして挙げられています。
製造業では、重量物を扱うことも多く「きつい」仕事が多いです。工業油などで「汚い」現場も多く、さらには重量物の落下やマシントラブルなどの「危険」な出来事も多いことから、3Kの代表的な職業ともいえるでしょう。
そのことから、工場の離職率は高く、人材不足に拍車をかけています。
もちろん、近年は電子部品を扱う「楽」な工場も多く、自動化によって「綺麗」で「安全」な現場も多いです。ですが、製造業を知らない人にとっては、昔からの「工場は3K」といったイメージのままであり、求人があっても、応募をためらってしまいます。
3Kであることから長期就労されにくく、だからといって求人を出しても、悪いイメージがあることで応募が少ない状態です。
新型コロナウィルスの影響
二つ目の理由は、新型コロナウィルスの影響です。
2019年から広まった新型コロナウイルスですが、多くの企業に影響を与えました。感染を防ぐための出勤制限や、業績悪化による解雇など、耳にする機会も少なくはなかったでしょう。
新型コロナウイルスへの対策によって現場の人が減り、業務に支障をきたす企業・工場も少なくはありませんでした。
特に、製造業はリモートワークが難しい業種であり、出勤制限による影響は、他の業種よりも大きいです。出勤制限による規模の縮小、規模の縮小により収益の低下、収益が低下することにより経営不振、経営不振により解雇を余儀なくされるといったように、連鎖的に人材不足へとつながっていきます。
現在は、新型コロナウイルスへの対策が広まっていることから、出勤制限はほとんど解除されるようになりました。ですが、社会全体の人材不足の影響もあって、再雇用が難しい状態です。
その結果、新型コロナウイルスが蔓延するまでは問題なかった企業も、人材不足に悩まされています。
世代交代の失敗と後継者不足
三つ目の理由は、後継者となる技術者が育たないからです。
熟練の技術者にもなると、1人で何役もこなせますが、新人ではそうはいきません。本来なら熟練者から新人へ技術継承をすることで役目を引き継ぎますが、人材不足で後継者がいないことから、技術継承も上手く行かない状態です。
その結果、1人で何役もこなせる技術者が育たず、人材不足(技術不足)を実感してしまいます。
人材不足によって世代交代が上手くいかず、技術継承が上手くいかないことから人材不足に悩まされるといった、悪循環が生じるのです。
国内の労働人口の減少
四つ目の理由は、単純に労働者が少なくなっていることです。
内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」を基に総務省が発表した「生産年齢人口の減少」によれば、近年の日本の労働人口が年々減り続けているようです。
少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれている(図表2-1-1-1)。生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念される。
さらに、グローバル化の影響によって、海外で働く人も増えています。職業の多様化も進んでおり、労働者は職業を自由に選べます。
その結果、3Kのイメージが強い製造業は避けられ、人材不足となっているのです。
製造業の人材不足の現状
漠然と「製造業界は人手不足だ」といわれても、ピンとこない人も多いと思います。
人材不足はどの程度なのか。製造業の現状を確認してみましょう。
製造業の人材不足の実態
経済産業省が発表したデータによると、国内の製造業就業者数は、20年前と比較し約11%の減少を見ることができます。数値で示すと約140万人が減っており、今後も減り続けると考えられています。
また、それに伴い就業者の平均年齢も上がり続けています。35歳以下のいわゆる若手と呼ばれる年代は、20年前と比較して約8%の低下を示し、逆に65歳以上の高齢者は、約5%上昇しているのです。
当然ですが、60歳を超えれば、定年退職し始めるのが一般的です。若手が業界に入ってこないと、先細る一方といえるでしょう。
業界を守るためにも、人材不足の解消は、製造業界にとって大きな課題となっています。
技能人材の不足
人材不足の中でも、特に深刻なのが技能人材の不足です。技能人材とは技術者・作業者のことであり、技術人材がいないと仕事になりません。
経済産業省が発表したデータによると、企業が求める人材として、約半分の企業が技術人材を挙げています。特に、中小企業からの要望が大きく、約6割の企業が必要としています。
中でも、近年必要とされる技術人材は、IT技術に強い人材です。近年は急激なデジタル化の影響により、多くの企業・工場がデジタル化を検討しています。ですが、デジタル化への移行には知識が必要であり、そのための人材を確保しなければなりません。
IT技術に強い人材を確保するのが難しいだけではなく、教育に回すための人材も不足しており、近年における問題となっています。
進まないデジタル化
人材不足の影響によって、工場のデジタル化も進みません。「技能人材の不足」でも触れたように、IT技術に強い人材がいないことで、デジタル化に踏み切れないからです。
工場のデジタル化には、莫大な費用がかかります。上手く活用することで品質や生産性の向上、作業員の負担軽減などを期待できますが、使いこなせないと、ただ高い買い物をするだけとなります。
IT人材が不足していることからデジタル化が進まず、世界的に見ても、日本のデジタル化は遅れているといわれています。
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製造業の人材確保対策
人材不足が続くようでは、仕事として成り立ちません。慢性的な人材不足を解消するためには、どのような対策を取ればいいのでしょうか。
- 負のイメージを脱却
- 採用の見直し(HRテック)
- 業務と人材育成の効率化
- デジタル化の促進
- 外国人や女性の活用
負のイメージを脱却
一つ目の対策は、負のイメージを改善することです。
求人が集まらない理由は「3Kを嫌っている」からであり、3Kのイメージを払拭できれば、自然と人は集まってきます。
実際に、作業機械の導入によって、3Kから脱却している企業・工場はたくさんあります。残業を削減した働き方改革を実施する企業・工場も多く、近年では、いわゆる「ホワイト企業」と呼ばれる好待遇な企業・工場も少なくはありません。
企業・工場の内側を見せるためにも、自社サイトや求人サイト、SNSなどで積極的に広めていくことが大切です。
また、近年ではVRを活用した企業・工場見学も注目されています。実際に見て感じることによって、新しいイメージを持ってもらえるでしょう。
採用の見直し(HRテック)
二つ目の対策は、採用の見直しをすることです。
例えば、今まで自分たちでしてきた採用を、外部に依頼すれば作業の手間が省けます。空いた時間は製造に集中することができ、ある程度は人材不足の解消につながるでしょう。
また、求人サイトに掲載することで、より多くの人に募集を知ってもらえます。転職エージェントなどの手厚いサポートのあるサイトなら、求職者に紹介もしてくれます。
他にも、募集の条件を緩めたり条件を良くしたりなど、採用方法や条件を見直すことで、人材を確保しやすくなります。
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業務と人材育成の効率化
三つ目の対策は、業務や人材育成を効率化することです。
「採用の見直し」の際にも紹介したように、業務の一部を外部に依頼(外注)することで、人材不足を解消します。
また、作業環境や工程を見直すことも大切です。より効率化されれば、人数が少なくても作業を回せるようになります。
それに伴い、人材育成の効率化も目指しましょう。内容をマニュアル化することで、誰でも簡単に熟練の技術を学べます。
採用の見直しとともに、業務内容の見直しも人材不足の解消に必要なことです。
デジタル化の促進
四つ目の対策は、デジタル化を促進することです。
作業用ロボットの導入や管理AIの導入など、デジタル技術を取り入れることで、人の作業や負担を減らし、少人数でも仕事ができる環境を作ります。
また、「負のイメージを脱却」「採用の見直し」「業務と人材育成の効率化」といった他の対策にも、デジタル技術は活用可能です。「VRによる工場見学」「loTによる求職者の検索」「生産管理システムによる工程管理」といったように、デジタル技術によって、より効果的に対策が進められます。
近年は、第四次産業革命を目指した政策が、世界各国で実施されています。日本でもその試みは同じであり、工場の自働化を国が推奨しているのです。
人材不足の解消はもちろん、将来を見据えた対策として、工場のデジタル化を検討する必要があります。
外国人や女性の活用
五つ目の対策は、外国人や女性の雇用も視野に入れることです。
近年は、グローバル化や女性の社会進出によって、外国人労働者や女性労働者が増えています。それら労働者を雇用することで、人材不足を補うことができます。
新しい風を取り入れることで、古いイメージの払拭にもつながるでしょう。
ただ、新しい風を入れるためには、環境を整える必要があります。日本語が不自由な外国人労働者のために、画像を中心としたマニュアルの作成。女性労働者のために、力仕事を必要としないデジタル技術の導入や女性用更衣室の増設など、働きやすい環境を作る事も大切です。
日本の製造業が抱える3つの大きな課題
日本の製造業界には、解決すべき3つの課題が存在します。日本の製造業を守るためにも、今後は意識して対策を取る必要があるでしょう。
- 人材不足
- IT活用の遅れ
- 上手くいかない技術継承
どのような課題が挙げられているのか。確認をしてください。
人材不足
一つ目の課題は、人材が不足していることです。
「製造業の人材不足の現状」で触れたように、日本の人材不足は増加傾向にあり、将来的にも問題となっています。
少子高齢化が加速する近年において、待っているだけでは新しい人材は集まりません。人材不足を解消するためにも、負のイメージを払拭し採用条件を広くしたり、デジタル技術によって人の代わりとなる労働力を投入する必要があります。
IT活用の遅れ
二つ目の課題は、ITの活用が世界的に見ても遅れていることです。
総務省が2021年に発表した「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」によると、約6割の企業がIT化やDXへの取り組みを「実施していない、今後も予定なし」と答えています。
特に中小企業の解答が大きく、国がIT化を推奨していても芳しくありません。
IT化のメリットは、品質や生産数の向上や、トレンドを収集できることにあります。IT化が進む他国の工場は、それらのメリットが日本よりも優れていることを意味するでしょう。
今のままでは、海外の技術革命についていけず、将来的には海外市場から取り残される可能性があります。そのような事態を防ぐためにも、同じステージに立てるよう、工場のIT化が望まれます。
上手くいかない技術継承
三つ目の課題は、技術継承が上手くいかないことです。
どんなに優れた技術者であっても、定年によっていつかは退職しなければなりません。ですが、後継者がいないことから熟練の技術を継承できず、退職によって技術が失われることを危惧しています。
特に、中小企業において大きな課題となっており、このままいくと、将来的に技術者が育たないことで、倒産する企業も出てくるでしょう。
「ものつくり大国」として高い技術を有する日本ですが、技術継承が上手くいかないことで、将来的には技術力で他国に負ける可能性も十分あり得ます。
そのような事態にならないためにも、技術継承ができるよう、人材不足を解消する必要があります。
まとめ:人手不足に対処し会社の業務効率を上げる
人材不足の原因は、主に少子高齢化を始めとした労働人口の減少にあります。他にも、製造業ならではの原因として、負のイメージによる求人の少なさや、技術継承者がいないことで先細ることも挙げられます。
人材が不足すると、業務を万全に回すことができず、業務を縮小しなければなりません。ですが、業務を縮小すると利益も減ってしまい、企業が傾く原因となるでしょう。
企業の将来を守るためには、人材の確保が急務といえます。今までの採用状況を見直し、製造業の窓口を広げることが大切となります。
また、デジタル化を目指すことも人材不足解消には効果的です。人の代わりにロボットやAIが働くことで、人の手が必要なくなります。
少子高齢化は社会的な問題であり、解決するのは難しいです。ですが、だからといって諦めるのも良くありません。利益を上げ企業を拡大するためにも、人材確保に尽力を尽くしてください。