知っておきたい「ISO22400」~製造業のIoT導入に向けて~

生産管理の標準化指標「ISO22400」とは何か

モノづくりのIoT化やDX※が進む中、「ISO22400」という言葉を記事や書籍などで聞いたことはあるけどよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

本記事ではISO22400とは何なのか?概要を説明し、導入のメリットも紹介いたします。
※IoT:Internet of Things(モノのインターネット)。モノがインターネット経由で通信すること。
※DX:Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)。ビジネス用語においては『ITを導入・活用してビジネスをより良いものに変革すること』と指す。

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ISO22400とは

ISO22400を調べると「MES領域の評価指標を国際標準化したもの」といった内容が出てくるかと思います。MESや評価指標と、初めて目にする方はわからないポイントも多いかと思います。1つずつ見ていきましょう。

MESについて

MES(Manufacturing Execution System)とは製造実行システムのことをいいます。

製造実行システムとは、良い製品を限られた資源(ヒト・モノ・時間)から効率よく製造することを目的とし、製造工程の可視化や管理、作業者への指示や支援などを行う情報システムを指します。

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評価指標について

ISO22400では生産性、品質、環境、能力、在庫、保全の6つのカテゴリに分類し、34項目のKPI(重要業績評価指標)を定義しています。

ISO22400のKPI
分類生産性品質環境能力在庫管理保全
KPI・労働生産性
・負荷度
・生産量
・負荷効率
・利用効率
・総合設備効率
・正味設備効率
・設備有効性
・工程効率
・品質率
・段取率
・設備保全利用率
・工程利用率
・直行率
・廃棄度合
・廃棄率
・手直率
・減衰率
・環境エネルギー消費量・機械能力指数
・クリティカル機械能力指数
・工程能力指数
・クリティカル工程能力指数
・在庫回転率
・良品率
・総合良品率
・製品廃棄率
・在庫輸送廃棄率
・その他廃棄率
・設備負荷率
・平均故障間隔
・平均故障時間
・平均復旧時間
・改良保全率

各KPIごとに定義式や構成要素が定められており、生産設備、生産システムから取得出来る情報はもちろん、作業者のオーダー別実作業時間といった、自動で取ることが難しい生産情報も含まれます。

ただし、これら全てを管理する必要はありません。重要なのは製品特性や業種、受注特性を基に、優先順位を付けて構築することです。

ISO22400の主な評価指標

上記のカテゴリ別の分類表の中からいくつかの評価指標について紹介します。

労働生産性(Worker Efficiency)

労働生産性(Worker Efficiency)とは、労働者1人当たりまたは1時間当たりに生産できる成果を数値化した指標のことです。1人の労働者につきどれくらいの利益が得られたのかを数値で表すことができます。

労働生産性の計算式は、労働時間や人員コストなどを数値化した「労働投入量」を使用して、労働者1人に対する付加価値額や生産量を「労働生産性」として計算します。

労働生産性 = 成果(生産量・付加価値など) / 労働投入量(資源・労働量など)
また、労働生産性には種類があり、「生み出した成果に対しての付加価値」を表す「付加価値労働生産性」と「成果に対しての生産量や金額」を表す「物的労働生産性」の2種類があります。
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総合設備効率(Overall Equipment Effectiveness)

総合設備効率(Overall Equipment Effectiveness)とは、生産管理における稼働率や生産性を評価するための指標のことです。稼働率、性能、品質を算出して、その結果をすべて掛けることで、総合的な設備の効率を評価することができます。

総合設備効率の計算式は、「予定した稼働時間に対する実際の稼働時間の割合」である「時間稼働率」、「生産時間に対する実際の生産数の割合」である 「性能稼働率」、「生産量に対する良品の割合」である「良品率」で計算します。それぞれの要素も算出するための計算式があり、さまざまな要素を含んで計算します。

総合設備効率 = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
「生産効率を阻害する16大ロス」の中で挙げられる設備が原因となって生じるロスの分類として「7つの設備ロス」があります。このような重大なロスを減らしていくためにも、工場の設備を効率良く稼働させるための指標としてISO22400の中でも重要な要素の1つといえます。
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改めてISO22400とは?

ISO22400は標準化指標

MES領域の評価指標を標準化したもので、生産システムの生産性指標を標準化したことにより、ベンチマーキングが可能となりました。このことによって、業種/業態や企業ごとにバラバラだったMES領域の評価指標をセンサーや制御機器などから必要なデータを収集することができるようになり、経営に必要な情報や生産現場の情報などを統合的に可視化することが可能となりました。

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ISO22400はIoT推進にも重要な要素

さらに、製造業のIoTを推進する上でもデータを有効活用するためには標準化することが重要とされています。「モノ」がつながる上で、通信の規格やデータのフォーマットに互換性がないことが重要になります。仮にデータの形式が異なっていたりするとデータの活用がうまくいかず、IoTを導入する意味がなくなってしまいます。

そんなIoTを活用して製造業で実現できる3つの機能や製造業がIoTを導入するメリットをご紹介している記事をご案内します。

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ISO22400の確認しておきたいポイントとは?

これまでの解説を踏まえてISO22400を深堀りしていきましょう。 追加で確認したいポイントはデータ収集の最小単位と統合管理を行う範囲についてです。

データ収集の最小単位は設備やラインです。また、統合管理を行う範囲は最小単位である設備やラインから工程、生産拠点、事業体、企業、企業間で統合化する考え方をとっています。

従って、設備→工程→生産拠点→事業体→企業→企業間で統一した指標で評価が可能となります。

ISO22400の対象範囲

ISO22400導入のメリット

データ取得の最小単位を設備やラインとし、指標を標準化することで、異なる工場設備から同一の指標を用いたベンチマーキングが可能になることがISO22400の大きな特徴です。

すなわち、企業、拠点、工場を横断して、経営情報~現場の情報を統合的に可視化できるようになります。 具体的には以下の3つのメリットがあります。

  1. 企業間の新規取引やM&Aにおける評価に有効
  2. 設備や工程を横断して客観的に評価可能
  3. ボトルネックとなっている設備・工程が把握可能

欧州の大手メーカーでは、ISO22400による評価指標がシステム化されていることという取引条件を設けている例もあります。大手製造業の傘下になったり、複数の製造業が統合されメガサプライヤーとなったりする際に、新たに指標を標準化をする必要もありません。

また、ISO22400の導入は製造業のIoT導入における生産管理の指標という観点においてもメリットがあります。ISO22400が導入されることによって、評価指標とその算出式の標準化が可能となり、設備やシステムの提供者もパッケージ化が容易にもなり得ます。

このようにISO22400導入による標準化指標の管理には大きなメリットがあるといえます。

まとめ:生産管理の標準化の指標としてさまざまなメリットがある

実際に、ISO22400を導入する際には各KPIごとの概要、および定義式や構成要素も把握する必要があります。 今回はそもそもISO22400って何?という方向けに概要や導入メリットを説明しました。

生産管理システムを導入する際に、ISO22400での標準化も視野に入れる機会となれば幸いです。

製造業が生産管理システムを導入する目的やメリットについては下記記事をご参照ください。

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