製造業において、品質管理はとても重要な要素です。品質の維持は企業の信用につながるため、優先的に取り込む必要があるでしょう。
品質管理といえば製品の検査が一般的ですが、ほかにもできることはいろいろあります。品質の維持はもちろん、品質の向上を目指す場合は、別の角度から取り組むことも大切です。
品質管理はどのように行なえばいいのか。品質管理を構成する要素や、品質管理を行なうための手法などを紹介します。
品質管理とは?
品質管理とは、生産管理において製品の品質を保ち、より品質の向上を目指す取り組みのことです。不良品が発生しないよう管理し、自社製品の品質を維持することで、顧客ニーズに応えています。
品質管理と「品質保証」の違い
品質保証とは、自社製品の品質を保証する取り組みのことです。自社製品の品質が満たされていることを証明し、購入した顧客が満足できるよう、アフターサポートも行ないます。
品質管理との違いは、管理する対象です。品質管理は生産工程を管理するのに対して、品質保証は製品の品質を保証します。
品質管理が自社に向けた活動なのに対して、品質保証は顧客へ向けた活動ともいえるでしょう。
また、管理する範囲も異なります。品質管理は「生産から出荷まで」なのに対して、品質保証は「生産から流通した後も」です。品質保証は顧客への責任を負うものであるため、顧客の手に渡った後も保証します。
とはいえ、品質管理は顧客の信用に応えるための活動ですので、品質保証の一部といえるでしょう。それぞれ対象や範囲は異なりますが、品質に関する活動であることは変わりありません。
品質管理に関する規格「ISO9001」
品質管理に関する規格には「ISO9001」と呼ばれるものがあります。「ISO9001」とは、国際標準化機構(ISO)が定める品質マネジメントシステム(QMS)の規格のことです。国際的な規格であり、「ISO9001」を取得することで、品質が管理されていることの証明となります。
また、企業にとっても「ISO9001」を取得し続けることには意味があります。「ISO9001」を表示し続けるには毎年審査する必要があり、合格するには、継続的な品質改善が必要となるからです。常により良い品質を意識することで、生産工程の改善や労働環境の改善につながっていきます。
製造業においてなぜ品質管理が必要なのか?
品質管理が必要な一番の理由は、顧客からの信頼を得るためです。不良品が出荷されるのを防ぐことで、顧客ニーズを満たした製品を提供することができます。
不良品が出荷されてしまうと、顧客に不利益を与えてしまいます。低品質なことで使えないだけではなく、場合によっては事故や火事などの原因にもなるでしょう。そして、その原因が購入した製品だと判明すれば、製品や企業への信用性が低下します。
企業の信用を失うことで、製品の売れ行きが悪くなります。利益がでなければ、企業の運営は成り立たちません。経営を安定させ企業を存続させるためにも、品質管理は重要といえます。
また、品質管理はコストや納期にも影響します。不良品が出ないことで余計に資材を使わずにすみ、指示書通りに製品が作られることで納期に間に合うからです。
製造業では、製造業において欠かすことのできない重要な要素としてQCD(品質、コスト、納期)を挙げています。QCDを維持し企業の利益を高めるためにも、品質管理は必要といえるでしょう。
品質管理の3つの構成要素
品質管理は、主に3つの要素から構成されます。品質管理を行なうためにも、それぞれどのような内容かを知ることが大切です。
工程管理
工程管理とは、製造の進捗を管理する取り組みのことです。作業員、資材、作業手順、設備など、製造に関わるすべての要素を統括し、計画通りに進められるよう整えます。
主な取り組みとして、作業の標準化(マニュアル化)が挙げられます。標準化することで誰でも同じように作業ができるようになり、品質のバラつきを防ぐことができるのです。
また、設備の点検を行なえば、機械トラブルを防ぐことができます。機械のトラブルは不良品の排出が増加するだけではなく、生産効率も低下します。生産性を高めるためにも、機械トラブルは防ぐ必要があるでしょう。
ほかにも、作業員の技術研修や作業工程の見直しなどがあり、作業工程を管理することで、品質を保つことができます。
品質検証
品質検証とは、製品の品質を保証するための取り組みのことです。完成した製品の検査を行ない、想定される品質になっているかを確認します。
いくら工程管理を行なっても、完全に不良品を防ぐことは難しいです。不良品が顧客に届いてしまわないよう、機械や人の目による品質検査が必要となります。
また、品質を検査するだけではなく、検査方法も検証することが大切です。合格ラインに問題ないか、検査方法に不備がないかも判断し、確実に不良品が見分けられるよう準備を整えます。
品質改善
品質改善とは、品質を向上させるための取り組みのことです。不良品の再発を防ぐのはもちろん、さらなる品質の向上も目指します。
主な流れとしては、まず始めに問題点を洗い出しから行ないます。そして、なぜトラブルとなったのかを分析し、分析した結果を基に対応策を立案します。
また、継続的に続けられるようにすることも大切です。いくら効果があったとしても、コストや労力的に難しい場合は有効な対応策とはいえません。コストや労力、教育のしやすさなども考慮し、対策を根付かせることで品質改善となります。
品質管理のための具体的な考え方・手法
品質改善を行なうための方法として、以下のような考えや手法が挙げられています。問題解決や対策を考察する際は、ぜひ活用してみてください。
QC7つ道具
QC七つ道具とは、収集したデータを基に、問題解決や品質改善を目指す分析手法のことです。
全部で7つのフレームワークから構成されており、目的に合わせて使い分けます。
- グラフ:数値の推移を可視化し、比較することで変化を確認する
- チェックシート:項目をチェックし記録することで、抜けのないデータ収集を可能にする
- パレート図:棒グラフと折れ線グラフをまとめた図。数値の大きさから優先順位を判断する
- ヒストグラム:データを区画ごとに区切り、分布状況を可視化することで、問題部分を特定する
- 特性要因図(魚の骨図):結果と要因の因果関係を可視化し、根本的な問題を特定する
- 散布図:関連する2種のデータを縦軸と横軸にまとめ、それぞれの相関性を可視化することで把握する
- 管理図:時系列別に各工程を折れ線グラフでまとめ、工程の問題点を確認する
主に、データを活用して品質問題の原因を特定したいときに使用されます。去年と比較する場合はグラフ、問題解決の優先順位を決める場合はパレート図、根本的な原因を探す場合は特性要因図といったように、目的に合わせて使い分けることが大切です。
「QC7つ道具」という言葉を聞いたことはありますか?QCとは「Quality Control」の略称であり、日本語に直すと「品質管理」といった意味になります。そして、品質管理をサポートする方法として挙げられるのがQC7つ道具です。 品[…]
新QC7つ道具
新QC7つ道具とは、収集した言語データを基に、問題解決や品質改善を目指す分析手法のことです。基本的な部分はQC7つ道具と同じですが、新QC7つ道具は「寝不足だった」「暗かった」といった、数値では表しにくい要因も分析することができます。
要素や要因は、必ずしもすべてが数値となっているわけではありません。作業員の体感や手順方法など、数値では表せない要因もたくさんあります。そのような数値化できないデータを分析・評価する方法として新QC7つ道具が誕生しました。
QC七つ道具と同様に全部で7つのフレームワークから構成されており、目的に合わせて使い分けます。
- 親和図法:収集したデータを親和性の高いグループ同士で分け、課題を明確にする
- 連関図法:各要因をつないでいき、因果関係を見つけ根本的な要因を特定する
- 系統図法:目標達成に必要な手段を枝分けしていき、実現可能な手段を模索する
- マトリックス図法:関連する2種のデータを表でまとめ、交差する部分から対応関係を明確にする
- アローダイアグラム:作業手順を矢印で結び、全体像の把握をする
- PDPC法:想定されるリスクを洗い出し、問題が生じた際の代案を明確にする
- マトリックスデータ解析法:関連する2種の数値データを二次元平面図に表示し、新しい要素や要因を考察する
主に、製造工程の問題を体系的に整理したいときに使用します。影響し合う関係性を知りたいなら連関図法、問題解決方法を考察するなら系統図法、工程のリスクを考察したいならPDPC法といったように、目的に合わせて使い分けることが大切です。
製造業における管理の中で、特に重要視される品質管理(Quality Control:QC)。品質が低下した際には「QC7つ道具」と呼ばれる方法を活用し、問題解決に努めています。 そんな品質管理ですが、近年ではQC7つ道具に次ぐ[…]
PDCAサイクル
PDCAサイクルとは、プロセスを繰り返すことで、持続的な品質改善を目指す分析手法です。「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Action)」を1サイクルとし、前回のサイクルに手を加えることで、新しい工程をより良くします。
もし、サイクルが回らないようなら、どこかで問題が生じている証拠です。品質改善だけではなく、問題の発見にも役立つでしょう。
主に、継続的な品質向上を図りたいときに使用します。品質改善は、一度行なって終わりではありません。「ISO9001」を取得し続けるためにも、常に実行し続ける必要があります。
ビジネスで改善を進めるうえでよく聞く「PDCAサイクル」。この記事では、PDCAサイクルの基本から、実際にどう活用できるかを詳しく説明します。また、この記事を読むことで、業務改善をどのように進めるかの具体的な方法が理解できるようにな[…]
5S
5Sとは、製造環境を維持し続けるために必要となる考えや活動のことです。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5要素からなり、それぞれを実施し続けることで、最適な作業環境を整えられます。
- 整理:物を片付けること。不要な物を捨てることで、作業効率を高める
- 整頓:物や現場を整えること。作業しやすいよう整えることで、作業効率を高める
- 清掃:綺麗にすること。汚れやゴミを処分することで、異物混入や機械トラブルを防ぐ
- 清潔:衛生を維持し続けること。続けることで、持続的な効果が期待できる
- しつけ:教えること。作業員に指導することで、誰もが5Sを実施可能となる
主に、現場環境改善が必要なときや、工場のムダ・ミスを減らしたいときに行なわれます。作業効率の向上やトラブルの減少には、作業環境を整えることも大切です。
また、費用対効果が高いことも5Sの特徴です。設備投資などの費用が必要ないため、すぐに実施できます。内容も単純であり、誰でも取り組みやすいのが魅力といえるでしょう。
製造業でよく耳にする5S活動。現場環境を改善することで作業効率や生産性が向上することから、多くの企業が注目・取り入れています。 もちろん、5Sの考えは製造業だけではありません。医療業界、物流業、サービス業、小売業なども実施して[…]
4M、5M
4Mとは、製品の品質を決める際に必要とする要素のことです。「人」「機械」「方法」「材料」の4要素からなり、要因を分けて考えることで、分析がしやすくなります。
また、4Mに「計測」を付け足し、5Mとして考える場合もあります。品質管理は顧客の信用を得るためにとても重要な要素であり、そのことから、近年では計測を一つの要素として考えています。
- 人:作業員や管理者など、作業に関わる人
- 機械:設備や工具など、製造に関わる物
- 方法:作業手順や製造工程など、実施される方法
- 材料:原材料や部品など、製品に使われる物
- 計測:検査や測定など、品質検証に関わること
主に、品質不良の要因を分類し、特定したいときに使用されます。複数要因があっても、分類して考えれば分析もしやすいです。要素を整理することで、対策も立てやすくなるでしょう。
製造業において、品質管理はとても重要な要素です。顧客は優れた製品を求め、その信用に応えるためにも、企業は安定した品質の製品を提供する必要があります。低品質の製品を提供するようでは顧客からの信用は低下し、結果として経営のピンチに陥るで[…]
IE(Industrial Engineering)
IEとは、要素を科学的に分析し、生産性を向上させる手法のことです。使用できるリソースや現状などを分析することで、適切な生産を可能にします。
IEは、「方法研究」「作業測定」「組み合わせ」の3タイプから分析します。製造のムダを見つけ、最適化することで、生産や利益の向上を目指せます。
方法研究:作業方法を分析し、効率の良いやり方を見つけることで最適化を目指す
作業測定:作業時間を分析し、模範となる標準時間を設定することで最適化を目指す
組み合わせ:方法研究と作業測定を合わせて分析をする
主に、生産効率を向上させつつ、品質を維持したいときに使われます。作業を効率化することで、誰が作業をしても同じ品質で製品が作れます。統一化も進めば、属人化を防ぐことにもつながるでしょう。
TQC、TQM
TQCとは、全社的品質管理(Total Quality Control)を指す言葉です。また、TQMは総合的品質管理(Total Quality Management)といった意味があります。
どちらも、企業全体で品質管理に取り組む考えのことであり、長期的に品質管理を行なう場合は、全従業員の協力や意識改革が必要なことを表しています。
それぞれの違いは、主体となる部門にあります。TQCは現場作業員が中心になって取り組むのに対して、TQMは経営陣が中心です。どちらも品質管理を目的としますが、中心になる人物や部門が異なることで、管理方法も変わってきます。
主に、企業全体で品質管理を推進したいとき実施される取り組みであり、製造部門だけではなく、企業全体の改善につながるでしょう。
まとめ:品質管理の3つの構成要素を意識して適切な手法を選び、現場で活用する
品質管理は、「工程管理」「品質検証」「品質改善」の3要素から成り立ちます。品質を検査し不良品を取り除くだけではなく、不良品が発生しない環境を整えたり、不良品の再発を防ぐための対策も品質管理に含まれています。
品質の維持はもちろん、QCDの向上を目指すためにも、意識して品質管理に取り組む必要があるでしょう。
QC7つ道具やPDCAサイクルなどを活用すれば、効率よく品質管理が行なえます。ほかにも、生産管理システムを導入すれば、管理が楽になります。
目的に合わせて適切な手法を選び、効果的に生産管理を行なってみてください。