製造業の品質管理における7つの手法と3つの要素を解説!

製造業の品質管理における7つの手法と3つの要素を解説!

 

製造業の品質管理における7つの手法と3つの要素を解説!

製造業において、品質管理はとても重要な要素です。品質の維持は企業の信用につながるため、優先的に取り込む必要があるでしょう。

品質管理といえば製品の検査が一般的ですが、ほかにもできることはいろいろあります。品質の維持はもちろん、品質の向上を目指す場合は、別の角度から取り組むことも大切です。

品質管理はどのように行なえばいいのか。品質管理を構成する要素や、品質管理を行なうための手法などを紹介します。

品質管理とは?

品質管理とは、生産管理において製品の品質を保ち、より品質の向上を目指す取り組みのことです。不良品が発生しないよう管理し、自社製品の品質を維持することで、顧客ニーズに応えています。

品質管理と「品質保証」の違い

品質保証とは、自社製品の品質を保証する取り組みのことです。自社製品の品質が満たされていることを証明し、購入した顧客が満足できるよう、アフターサポートも行ないます。

品質管理との違いは、管理する対象です。品質管理は生産工程を管理するのに対して、品質保証は製品の品質を保証します。

品質管理が自社に向けた活動なのに対して、品質保証は顧客へ向けた活動ともいえるでしょう。

また、管理する範囲も異なります。品質管理は「生産から出荷まで」なのに対して、品質保証は「生産から流通した後も」です。品質保証は顧客への責任を負うものであるため、顧客の手に渡った後も保証します。

とはいえ、品質管理は顧客の信用に応えるための活動ですので、品質保証の一部といえるでしょう。それぞれ対象や範囲は異なりますが、品質に関する活動であることは変わりありません。

品質管理に関する規格「ISO9001」

品質管理に関する規格には「ISO9001」と呼ばれるものがあります。「ISO9001」とは、国際標準化機構(ISO)が定める品質マネジメントシステム(QMS)の規格のことです。国際的な規格であり、「ISO9001」を取得することで、品質が管理されていることの証明となります。

また、企業にとっても「ISO9001」を取得し続けることには意味があります。「ISO9001」を表示し続けるには毎年審査する必要があり、合格するには、継続的な品質改善が必要となるからです。常により良い品質を意識することで、生産工程の改善や労働環境の改善につながっていきます。

製造業においてなぜ品質管理が必要なのか?

品質管理が必要な一番の理由は、顧客からの信頼を得るためです。不良品が出荷されるのを防ぐことで、顧客ニーズを満たした製品を提供することができます。

不良品が出荷されてしまうと、顧客に不利益を与えてしまいます。低品質なことで使えないだけではなく、場合によっては事故や火事などの原因にもなるでしょう。そして、その原因が購入した製品だと判明すれば、製品や企業への信用性が低下します。

企業の信用を失うことで、製品の売れ行きが悪くなります。利益がでなければ、企業の運営は成り立たちません。経営を安定させ企業を存続させるためにも、品質管理は重要といえます。

また、品質管理はコストや納期にも影響します。不良品が出ないことで余計に資材を使わずにすみ、指示書通りに製品が作られることで納期に間に合うからです。

製造業では、製造業において欠かすことのできない重要な要素としてQCD(品質、コスト、納期)を挙げています。QCDを維持し企業の利益を高めるためにも、品質管理は必要といえるでしょう。

品質管理の3つの構成要素

品質管理は、主に3つの要素から構成されます。品質管理を行なうためにも、それぞれどのような内容かを知ることが大切です。

工程管理

工程管理とは、製造の進捗を管理する取り組みのことです。作業員、資材、作業手順、設備など、製造に関わるすべての要素を統括し、計画通りに進められるよう整えます。

主な取り組みとして、作業の標準化(マニュアル化)が挙げられます。標準化することで誰でも同じように作業ができるようになり、品質のバラつきを防ぐことができるのです。

また、設備の点検を行なえば、機械トラブルを防ぐことができます。機械のトラブルは不良品の排出が増加するだけではなく、生産効率も低下します。生産性を高めるためにも、機械トラブルは防ぐ必要があるでしょう。

ほかにも、作業員の技術研修や作業工程の見直しなどがあり、作業工程を管理することで、品質を保つことができます。

品質検証

品質検証とは、製品の品質を保証するための取り組みのことです。完成した製品の検査を行ない、想定される品質になっているかを確認します。

いくら工程管理を行なっても、完全に不良品を防ぐことは難しいです。不良品が顧客に届いてしまわないよう、機械や人の目による品質検査が必要となります。

また、品質を検査するだけではなく、検査方法も検証することが大切です。合格ラインに問題ないか、検査方法に不備がないかも判断し、確実に不良品が見分けられるよう準備を整えます。

品質改善

品質改善とは、品質を向上させるための取り組みのことです。不良品の再発を防ぐのはもちろん、さらなる品質の向上も目指します。

主な流れとしては、まず始めに問題点を洗い出しから行ないます。そして、なぜトラブルとなったのかを分析し、分析した結果を基に対応策を立案します。

また、継続的に続けられるようにすることも大切です。いくら効果があったとしても、コストや労力的に難しい場合は有効な対応策とはいえません。コストや労力、教育のしやすさなども考慮し、対策を根付かせることで品質改善となります。

品質管理のための具体的な考え方・手法

品質改善を行なうための方法として、以下のような考えや手法が挙げられています。問題解決や対策を考察する際は、ぜひ活用してみてください。

QC7つ道具

QC七つ道具とは、収集したデータを基に、問題解決や品質改善を目指す分析手法のことです。

全部で7つのフレームワークから構成されており、目的に合わせて使い分けます。

  • グラフ:数値の推移を可視化し、比較することで変化を確認する
  • チェックシート:項目をチェックし記録することで、抜けのないデータ収集を可能にする
  • パレート図:棒グラフと折れ線グラフをまとめた図。数値の大きさから優先順位を判断する
  • ヒストグラム:データを区画ごとに区切り、分布状況を可視化することで、問題部分を特定する
  • 特性要因図(魚の骨図):結果と要因の因果関係を可視化し、根本的な問題を特定する
  • 散布図:関連する2種のデータを縦軸と横軸にまとめ、それぞれの相関性を可視化することで把握する
  • 管理図:時系列別に各工程を折れ線グラフでまとめ、工程の問題点を確認する

主に、データを活用して品質問題の原因を特定したいときに使用されます。去年と比較する場合はグラフ、問題解決の優先順位を決める場合はパレート図、根本的な原因を探す場合は特性要因図といったように、目的に合わせて使い分けることが大切です。

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新QC7つ道具

新QC7つ道具とは、収集した言語データを基に、問題解決や品質改善を目指す分析手法のことです。基本的な部分はQC7つ道具と同じですが、新QC7つ道具は「寝不足だった」「暗かった」といった、数値では表しにくい要因も分析することができます。

要素や要因は、必ずしもすべてが数値となっているわけではありません。作業員の体感や手順方法など、数値では表せない要因もたくさんあります。そのような数値化できないデータを分析・評価する方法として新QC7つ道具が誕生しました。

QC七つ道具と同様に全部で7つのフレームワークから構成されており、目的に合わせて使い分けます。

  • 親和図法:収集したデータを親和性の高いグループ同士で分け、課題を明確にする
  • 連関図法:各要因をつないでいき、因果関係を見つけ根本的な要因を特定する
  • 系統図法:目標達成に必要な手段を枝分けしていき、実現可能な手段を模索する
  • マトリックス図法:関連する2種のデータを表でまとめ、交差する部分から対応関係を明確にする
  • アローダイアグラム:作業手順を矢印で結び、全体像の把握をする
  • PDPC法:想定されるリスクを洗い出し、問題が生じた際の代案を明確にする
  • マトリックスデータ解析法:関連する2種の数値データを二次元平面図に表示し、新しい要素や要因を考察する

主に、製造工程の問題を体系的に整理したいときに使用します。影響し合う関係性を知りたいなら連関図法、問題解決方法を考察するなら系統図法、工程のリスクを考察したいならPDPC法といったように、目的に合わせて使い分けることが大切です。

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PDCAサイクル

PDCAサイクルとは、プロセスを繰り返すことで、持続的な品質改善を目指す分析手法です。「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Action)」を1サイクルとし、前回のサイクルに手を加えることで、新しい工程をより良くします。

もし、サイクルが回らないようなら、どこかで問題が生じている証拠です。品質改善だけではなく、問題の発見にも役立つでしょう。

主に、継続的な品質向上を図りたいときに使用します。品質改善は、一度行なって終わりではありません。「ISO9001」を取得し続けるためにも、常に実行し続ける必要があります。

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5S

5Sとは、製造環境を維持し続けるために必要となる考えや活動のことです。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5要素からなり、それぞれを実施し続けることで、最適な作業環境を整えられます。

  • 整理:物を片付けること。不要な物を捨てることで、作業効率を高める
  • 整頓:物や現場を整えること。作業しやすいよう整えることで、作業効率を高める
  • 清掃:綺麗にすること。汚れやゴミを処分することで、異物混入や機械トラブルを防ぐ
  • 清潔:衛生を維持し続けること。続けることで、持続的な効果が期待できる
  • しつけ:教えること。作業員に指導することで、誰もが5Sを実施可能となる

主に、現場環境改善が必要なときや、工場のムダ・ミスを減らしたいときに行なわれます。作業効率の向上やトラブルの減少には、作業環境を整えることも大切です。

また、費用対効果が高いことも5Sの特徴です。設備投資などの費用が必要ないため、すぐに実施できます。内容も単純であり、誰でも取り組みやすいのが魅力といえるでしょう。

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4M、5M

4Mとは、製品の品質を決める際に必要とする要素のことです。「人」「機械」「方法」「材料」の4要素からなり、要因を分けて考えることで、分析がしやすくなります。

また、4Mに「計測」を付け足し、5Mとして考える場合もあります。品質管理は顧客の信用を得るためにとても重要な要素であり、そのことから、近年では計測を一つの要素として考えています。

  • 人:作業員や管理者など、作業に関わる人
  • 機械:設備や工具など、製造に関わる物
  • 方法:作業手順や製造工程など、実施される方法
  • 材料:原材料や部品など、製品に使われる物
  • 計測:検査や測定など、品質検証に関わること

主に、品質不良の要因を分類し、特定したいときに使用されます。複数要因があっても、分類して考えれば分析もしやすいです。要素を整理することで、対策も立てやすくなるでしょう。

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IE(Industrial Engineering)

IEとは、要素を科学的に分析し、生産性を向上させる手法のことです。使用できるリソースや現状などを分析することで、適切な生産を可能にします。

IEは、「方法研究」「作業測定」「組み合わせ」の3タイプから分析します。製造のムダを見つけ、最適化することで、生産や利益の向上を目指せます。

方法研究:作業方法を分析し、効率の良いやり方を見つけることで最適化を目指す
作業測定:作業時間を分析し、模範となる標準時間を設定することで最適化を目指す
組み合わせ:方法研究と作業測定を合わせて分析をする

主に、生産効率を向上させつつ、品質を維持したいときに使われます。作業を効率化することで、誰が作業をしても同じ品質で製品が作れます。統一化も進めば、属人化を防ぐことにもつながるでしょう。

TQC、TQM

TQCとは、全社的品質管理(Total Quality Control)を指す言葉です。また、TQMは総合的品質管理(Total Quality Management)といった意味があります。

どちらも、企業全体で品質管理に取り組む考えのことであり、長期的に品質管理を行なう場合は、全従業員の協力や意識改革が必要なことを表しています。

それぞれの違いは、主体となる部門にあります。TQCは現場作業員が中心になって取り組むのに対して、TQMは経営陣が中心です。どちらも品質管理を目的としますが、中心になる人物や部門が異なることで、管理方法も変わってきます。

主に、企業全体で品質管理を推進したいとき実施される取り組みであり、製造部門だけではなく、企業全体の改善につながるでしょう。

まとめ:品質管理の3つの構成要素を意識して適切な手法を選び、現場で活用する

品質管理は、「工程管理」「品質検証」「品質改善」の3要素から成り立ちます。品質を検査し不良品を取り除くだけではなく、不良品が発生しない環境を整えたり、不良品の再発を防ぐための対策も品質管理に含まれています。

品質の維持はもちろん、QCDの向上を目指すためにも、意識して品質管理に取り組む必要があるでしょう。

QC7つ道具やPDCAサイクルなどを活用すれば、効率よく品質管理が行なえます。ほかにも、生産管理システムを導入すれば、管理が楽になります。

目的に合わせて適切な手法を選び、効果的に生産管理を行なってみてください。

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