製造業における管理の中で、特に重要視される品質管理(Quality Control:QC)。品質が低下した際には「QC7つ道具」と呼ばれる方法を活用し、問題解決に努めています。
そんな品質管理ですが、近年ではQC7つ道具に次ぐ新しい方法として、「新QC7つ道具」と呼ばれる方法も活用されています。従来のQC7つ道具とは違ったデータを参考にすることにより、QC7つ道具とは違った問題解決ができるようになります。
新QC7つ道具とは、どのような方法で問題解決を目指すのか。従来のQC7つ道具の違いについても紹介します。
品質管理とは?
品質管理とは、製品やサービスの質を一定以上に保つ管理のことです。品質に問題が生じた際、問題となった原因を究明し改善を目指すことで、品質の低下を防ぎます。
品質とは、企業の信用といっても過言ではありません。顧客は企業の品質を信じて購入しており、期待した品質以下の製品では顧客は満足しないからです。
信用を失った企業は見向きもされず、製品が売れないことで経営が傾いてしまうでしょう。
製造業において重要といわれる「QCD」の一つとしても数えられており、最も重視すべき管理項目ともいえます。
製造とは、ただ商品を作れば良いわけではありません。質の悪い商品には顧客がつかず、最終的には企業倒産の原因にもなります。品質管理とはそれほど重要なことであり、消費者が満足するための品質を、企業側は常に提供する必要があるのです。 […]
新QC7つ道具とは?
新QC7つ道具とは、言語データを参考にして問題解決をする方法です。言語データとは「説明が分かりにくい」「操作に時間がかかる」といった、数値で評価しづらいデータの事を指します。
言語データを図や表でまとめることで全体像を把握し、問題となる点と、それを解決するための方法を、新QC7つ道具によって模索するのです。
- 親和図法
- 連関図法
- 系統図法
- マトリックス図法
- アローダイアグラム法
- PDPC法
- マトリックスデータ解析法
言語データを、どのように活用して問題解決を目指すのか?各方法について紹介します。
親和図法
親和図法とは、言語データを親和性の良いもの同士でグループ分けする方法です。いくつかのグループに分けて考えることで全体を把握しやすくし、問題点を洗い出しやすくします。
例えば、「操作が分かりにくい」「作業時間がかかる」「操作パネルが汚れて見にくい」「滑って転ぶ」といったアンケート結果があるとします。
一見するとバラバラの意見に思えますが、「操作が分かりにくい」と「作業時間がかかる」は手順操作の問題に、「操作パネルが汚れて見にくい」と「滑って転ぶ」は汚れの問題に分けることができるでしょう。
それにより、問題が「操作手順の悪さ」と「作業環境の汚さ」に集約され、問題解決をするためには「作業工程の改善」と「清掃」が必要なことが分かります。
連関図法
連関図法とは、課題に対して関連する課題を、矢印でつないでいく方法です。要因をつないでいくことで、課題の全体像が判明し、問題点を洗い出すことができます。
例えば、「操作に時間がかかる」といった課題を挙げたとします。主な要因としては「技術不足」「工程が複雑」「移動が遅い」などが考えられるでしょう。
また、「技術不足」についても「指導者がいない」「マニュアルがない」といった要因が考えられます。
このように、課題に対して「なぜ?」を繰り返していくことで、本当に必要となる問題が見えてきます。
系統図法
系統図法とは、目的に対して必要な手段を、枝分かれして並べていく方法です。連関図法と仕組みは似ており、最終的には問題解決に必要な方法を洗い出すことができます。
例えば、「不良品の削減」を目的に挙げたとします。考えられる方法としては、「ダブルチェック」と「設備の新調」です。
さらに、「ダブルチェック」を実施するためには「技術向上」や「従業員の増員」が必要といったように、一次手段、二次手段とつなげていくことで、必要な内容が見えてきます。
マトリックス図法
マトリックス図法とは、2つの言語データを表でまとめ、関係性を評価する方法です。縦軸と横軸にそれぞれデータを当てはめ、関連性を見直すことで、問題の重要度を明らかにします。
例えば、縦軸には現在の問題点、横軸には問題が生じた要因を挙げたとします。縦軸の項目には「事故が多い」や「不良品が多い」が当てはまり、横軸には「設備不良」や「確認不足」などが当てはまるわけです。
そして、縦軸の問題点を縦軸の要因に当てはめ評価し、対応する欄へ数字や〇×を記載することで、全体を評価します。
アローダイアグラム法
アローダイアグラム法とは、工程を矢印でつなげ、全体の流れを管理する方法です。工程の流れを矢印によってまとめることで、進捗状況が把握しやすくなります。
また、矢印には所要日数も記載します。これにより、各工程で必要となる時間も分かり、作業計画を組みやすくなります。
PDPC法
PDPC法とは、事前に問題点を予測し、それに対して代替案を用意する方法です。想定される問題への解決策を用意することで、問題解決への道のりを決められます。
また、PDPC法には、「強制連結型」と「逐次展開型」の2種類があります。
強制連結型は、代替案によって計画が変わっても、元の流れに戻す方法です。始めに全体の計画を用意し、途中で問題が生じるようなら代替案を実施します。そして、代替案を実施した後は、代替案の結果を元の計画へと修正し、残りの予定をこなしていきます。
逐次展開型は、代替案によって計画が変更されたら、そのまま新しいプランで進める方法です。代替案別にプランを用意しておき、結果がそぐわない場合は、別の代替案によるプランを実施することで問題解決を目指します。
それぞれ方法は異なりますが、「代替案を用意して、計画が中断するのを防ぐ」点に関しては同じといえます。
マトリックスデータ解析法
マトリックスデータ解析法とは、マトリックス図法の結果を数値化し、平面図にまとめる方法です。新QC7つ道具の中で、唯一、数値を扱う方法になります。
平面図でまとめることで、互いの関係性を分かりやすくし、総合的な評価を可能にします。
QCストーリーの5つのステップ
実際に品質管理する際は、QCストーリーに沿って問題解決へと努めます。
- テーマの選定
- 現状の把握と目標設定
- 要因の解析
- 対策の検討と実施
- 標準化と管理の定着
問題解決の進め方について、確認をしてみましょう。
QCストーリーとは?
QCストーリーとは、品質管理における、問題解決を目指すための流れのことです。「テーマの選定」「現状の把握と目標設定」「要因の解析」「対策の検討と実施」「標準化と管理の定着」からなる手順を基にすることで、問題点を理解しながら、問題解決のプランを立てられます。
また、QCストーリーには4つの型が存在します。それぞれが「問題解決型」「課題達成型」「施策実行型」「未然防止型」と呼ばれており、「どのように問題解決を目指すか」は異なります。
新規の課題に対しては「課題達成型」を、対策の検討が付いている場合は「施策実行型」といったように、現状に合わせて使い分けてください。
QCストーリーの4つの型 | 説明 |
---|---|
問題解決型 | 問題となる要因を改善し、問題解決を目指す方法 |
課題達成型 | 目標を設定し、目標に近づくために必要な事をする方法 |
施策実行型 | 原因と対策が明確であり、対策を実施するための方法 |
未然防止型 | 問題を予測し対策を取ることで、問題解決を目指す方法 |
ステップ1:テーマの選定
ステップ1では、問題解決のテーマを決めます。解明した問題点の中から、どの問題解決に取り組むのかを決めてください。
テーマの決め方としては、「親和図法」を活用すると良いです。グループ分けして分析することで、問題点が洗い出されます。
ステップ2:現状の把握と目標設定
ステップ2では、現状の把握と目標を設定します。どのような状況になっているかを列挙し、その状況に対して「どのように改善したいのか」を決めてください。
現状把握の方法としては、「親和図法」を活用すると良いです。グループ分けした内容が、そのまま現状把握につながります。目標に関しても、基本的には「問題点の改善・減少・削減」などになると思います。
ステップ3:要因の解析
ステップ3では、要因を解析します。「なぜ問題が生じたのか」を列挙し、問題となった要因を仮定してください。
要因を列挙する方法としては、「親和図法」「連関図法」を活用すると良いです。課題や目標に対して関係する項目を挙げてください。そして、挙げた要因が本当に問題となっているかを、「マトリックス図法」にて評価してみましょう。
ステップ4:対策の検討と実施
ステップ4では、対策の検討と実施をします。明確にした要因から改善案を講じ、実際に行なってみてください。
対策を検討する方法としては、「系統図法」「PDPC法」「アローダイヤグラム法」を活用すると良いです。目的に対して方策を考えることで、改善案としての工程が見えてきます。
また、「マトリックス図法」も活用し、総合的な改善案も模索してください。製品の品質は複数の要素からなるため、一点だけを改善しても品質は向上しません。効果的に品質を向上させるためにも、総合的な評価が必要になります。
ステップ5:標準化と管理の定着
最後は、改善案の標準化と管理の定着を目指します。品質を維持するためにも、改善策を普段の業務内容に取り入れてください。
方法としては、マニュアルによる標準化や、チェックシートによる管理の定着などが挙げられます。新QC7つ道具は問題解決を目指すための方法ですので、標準化や定着への活用には向きません。
また、標準化が難しい場合は、改めて内容を改善する必要があります。大本を崩さず、管理が定着しやすいよう簡略化しましょう。
新QC7つ道具とQC7つ道具の違い
新QC7つ道具とQC7つ道具とでは、どのように違いがあるのでしょうか?
QC7つ道具について紹介します。
QC7つ道具とは?
QC7つ道具とは、数値によって品質管理をするための方法です。「製品数」「稼働時間」「不良品数」など、各記録をまとめ分析することで問題解決にあたります。
QC7つ道具も新QC7つ道具と同様に、7つの方法(道具)があります。
主な内容は以下の7つです。
QC7つ道具 | 概要 |
---|---|
グラフ | 数値をグラフでまとめ比較する方法。棒グラフや折れ線グラフなど |
パレート図 | 棒グラフと折れ線グラフでまとめ、要因の比率を調べる方法 |
特性要因図 | 問題に対しての影響を矢印でつなぎ、可能性を可視化する方法 |
ヒストグラム | データをいくつかの階級に分け、全体のばらつきを比較する方法 |
散布図 | 2種類のデータを点グラフでまとめ、関係性や法則を調べる方法 |
管理図 | 時系列を折れ線グラフでまとめ、全体のばらつきを見る方法 |
チェックシート | 項目をシートにまとめ、チェックすることで見逃しを防ぐ方法 |
層別 | データをいくつかのグループに分け、それぞれで考える方法 |
また、人や本によっては管理図をグラフにまとめ、「層別」を7つ道具に加える場合もあります。
他の7つ道具とは系統が少し異なりますが、有効な品質管理の一つですので、合わせて覚えておきましょう。
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新QC7つ道具との違い
新QC7つ道具との違いは、数値によって問題解決を目指すことです。言語データのような主観的な内容ではないことから、物事を客観的に評価できます。
また、評価も明確です。生産数が去年は「90%」と今年は「80%」とでは、今年の方が生産数が減っているのが分かります。それにより、問題にもすぐに気が付き、迅速な対策が取れるでしょう。
ただ、数値から評価する都合上、製造業や販売業など、活用できる業種が限られてしまいます。新QC7つ道具のように、サービス業や介護などで活用するのは難しいです。
製造業では主にQC7つ道具が活用されますが、数値が絡まない問題も数多く存在し、すべての問題をQC7つ道具だけで改善するのは難しいです。どちらかだけを使うのではなく、状況や目的に合わせて使い分けましょう。
まとめ:定性的に問題・課題を分析するためのフレームワーク
新QC7つ道具は、言語データを活用する問題解決方法です。従来のQC7つ道具は数値がないと問題解決ができませんでしたが、新QC7つ道具でなら、数値がなくても問題解決が可能になります。
QC7つ道具では問題解決が難しい場合は、新QC7つ道具を活用して、問題解決を目指すと良いでしょう。
新QC7つ道具とQC7つ道具は、道具の内容こそ違いますが、QCストーリーに沿って進める点は同じといえます。企業の信用を守るためにも、両方のQC7つ道具を使い分け、品質管理に努めてください。