製造業が多品種少量生産へシフトする理由とは? 今求められる生産方式

製造業が多品種少量生産へシフトする理由とは?今求められる生産方式

製造業が多品種少量生産へシフトする理由とは? 今求められる生産方式

昔から、製造といえば大量生産が一般的でした。大量生産の方がコストを安くでき、企業の利益となるからです。製造業といえば、「ロボットによる大量生産」をイメージする人も多いことでしょう。

ですが、近年では小品種大量生産とは逆の、多品種少量生産の考えが広まっています。広まる背景には時代の流れが関係しており、今後は多品種少量生産の考えが中心になると考えられています。

なぜ、大量生産から多品種少量生産へと考えが変化しているのか。求められる理由や多品種少量生産による変化について紹介します。

多品種少量生産とは?

多品種少量生産とは?

多品種少量生産とは、顧客のニーズに合わせ、製品を少量ずつ生産する方法のことです。生産といえば大量生産が一般的でした。大量に作る方が生産コストは安くなり、利益をあげられます。

ですが、近年は様々な理由からニーズが多様化し、顧客のニーズに応じて種類の違うものを少しずつ生産する必要がでてきました。そのため、同じものを大量に作る大量生産では、利益をあげることが難しくなっています。ニーズの移り変わりも早いことから、大量生産しても売れ残って在庫が余ってしまうからです。

もちろん、コストを抑えた大量生産が必要な場合も多いですが、それだけでは、多様化された市場で生き残るのは難しいです。

製品を売って利益をあげるためには、多様化されたそれぞれのニーズに応え、なおかつ、ニーズが変わっても売れ残りがないよう、多品種少量生産の生産体制が求められます。

多品種少量生産が求められる背景

多品種少量生産が求められる理由には、どのような事が挙げられるのか。背景について見てみましょう。

インダストリー4.0とマス・カスタマイゼーション

近年の多品種少量生産が求められる背景には、「インダストリー4.0」と「マス・カスタマイゼーション」が関係してきます。

インダストリー4.0とは、ドイツで進められる製造業振興策のことです。IT技術の導入による、工場の自動化を目指す政策となります。

日本でも、IT技術の浸透によって生活を良くすることを目的としたDXを始め、様々な政策が打ち出されています。中国やアメリカなどでも政策は出されており、第四次産業革命を意識した政策は、世界各国で行われているのです。

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そんな第四次産業革命が目指す方向性の一つとして、マス・カスタマイゼーションが挙げられます。

マス・カスタマイゼーションとは、大量生産と受注生産を両立する考えのことです。多品種大量生産を目指す体制であり、理想的な生産形態といえます。

そして、マス・カスタマイゼーションを目指す第一歩として、多品種大量生産が注目されているわけです。

多品種大量生産の仕組みを確立した後、現在の大量生産の仕組みを合わせることで、多品種大量生産の体制が整います。

厳密にいえば多品種少量生産は通過点でしかありませんが、将来のためにも、まずは多品種少量生産が必要とされているのです。

時代とものづくりの変移

第四次産業革命への移行以外にも、時代に合わせて、ニーズが変化していることも挙げられます。

昔の日本は、とりあえず製品を作る、少品種大量生産が基本でした。戦後の経済成長によって大衆の所得水準が向上したことで、製品が大量消費(購入)されるようになったからです。受注生産では大量消費には追いつけず、その結果の少品種大量生産といえるでしょう。

ですが、近年ではグローバル化の影響により、ニーズが多様化しつつあります。顧客が製品を選ぶようになってきており、昔のように、一つの製品だけでは売るのが難しくなっています。

さらに、ニーズの移り変わりも早く、同じ製品がいつまでも売れ筋になることはありません。

このように、時代とともに顧客が求める基準が変化してきており、その変化に合わせるため、多品種少量生産の考えが企業には求められています。

少品種大量生産から多品種少量生産へ

商品を売るためには、製品を作る必要があります。コストを抑え大量に製品を作れば、それだけ売る機会が増えるということです。

ですが、近年では時代とともに製品の選び方が変わってきており、ただ作るだけでは売ることができません。いくらコストを抑えても、売れなければ倉庫の肥しとなり赤字となってしまいます。

少品種大量生産は、今の時代、在庫を抱えるリスクのある生産方式です。顧客のニーズに応えつつ、ニーズを間違っても最小限の被害で済ませられる多品種少量生産が、今の時代には必要とされています。

多品種少量生産へのシフトによる製造現場への影響

多品種少量生産へと現場が変わることで、どのような影響が生じるのでしょうか?

現場作業者の多能工化が加速

多品種少量生産による影響としては、作業員の多能工化が挙げられます。違う製品を作るということは違う技術を使うことであり、生産に合わせた技術が求められるからです。

大量生産の時代では、1人1業務が基本でした。同じモノを作り続けるため、複数の業務を覚える必要がなかったからです。各工程ごとに作業員を配置することで、効率的に生産を行えます。

ですが、多品種生産になると、1人1業務では仕事になりません。人員の増加がない状態で様々な製品を作る必要があり、作業者の多能工化が求められます。

近年は、人材不足の影響もあって、多能工化への考えが強まっています。U字にラインをつなげ複数の工程を1人が担当する「セル生産方式」も、多能工化を目指す試みの一つであり、時代は変わってきています。

多品種少量生産に移行することで、そのような多能工化の需要が加速すると考えられています。

特注品、試作品へのチャレンジ

多品種少量生産によって、新しい製品開発もされるようになります。近年はニーズの移り変わりも激しく、企業としても、顧客のニーズに合わせて製品を開発する必要があるからです。

もちろん、製品開発は簡単な事ではありません。アイデアを考える必要があるのはもちろん、たとえ製品化しても、ニーズが合わず売れ残る場合も珍しくないからです。

ですが、逆にヒット製品となる場合もあります。ニーズに適合した製品を作れれば、企業を大きく成長させられるでしょう。

他にも、様々な製品開発に携わることで、技術者としての技量が上がります。多品種少量生産を取り入れることで、企業や作業員への刺激となり、成長が見込めます。

生産管理業務の複雑化

多品種少量生産による影響は、決して良いことだけではありません。多品種であることで、生産管理業務が複雑化します。

多能工化が求められるのも業務が複雑化するからであり、すべての作業員がすぐに適応できるわけではありません。場合によっては、段取りや配置を変えることによって、現場が混乱するリスクもあります。

中には、技術的な面で、適用できない場合もあります。できる人が少ないことから、属人化する可能性もあるでしょう。

適応や適用するためには、新しい教育が必要です。製品開発ごとに段取りや工程の見直しが必要など、多品種少量生産には様々な手間がかかります。

多品種少量生産のメリット

多品種少量生産にすることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

多様化する顧客ニーズに対応できる

多品種少量生産のメリットとして、顧客のニーズに合わせやすいことが挙げられます。大量生産だと同じ製品しか作れませんが、多品種少量生産を意識した設計にすることで、多様化されたニーズに対しても迅速に対応ができるのです。

顧客としても、妥協して製品を購入するより、求めた製品を購入したく思います。顧客のニーズに合わせた生産をすることで、より利益を得られやすくなるでしょう。

他にも、ニーズが変わった際に製品を切り替えやすいなど、ニーズが多様化した近年だからこそ、多品種生産が望まれます。

在庫過多のリスクを軽減できる

多品種少量生産にすることで、在庫過多になるリスクを軽減できます。少量生産なら、たとえニーズが変わって需要がなくなっても、在庫に悩まされる心配はありません。

在庫過多は、ただ在庫が余っているだけではなく、様々な形で業務の迷惑となります。倉庫の圧迫、管理にコストがかかる、運搬作業に人手を取られるなど、本来なら必要のないムダが発生するのです。

トヨタの生産方式における「7つのムダ」では、他のムダも誘発することから、「造りすぎのムダ」は最も避けるべきムダとして考えられています。

一見すると、大量生産をすればそれだけ利益になると思いがちですが、実際には、売れなければ負債を抱えるだけなわけです。

ニーズが多様化する近年において同じ製品を売り続けるのは難しく、負債を抱えないためにも、少量生産が必要となります。

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多品種少量生産の抱える問題点

多品種少量生産には、良い点だけでなく課題となる点も存在します。多品種少量生産へと切り替える際には、問題点を理解し、対策が取れるよう準備しておくことも大切です。

コスト増加の可能性

一つ目の課題は、コスト増加の問題です。当然ですが、オーダーメイドの製品は、量産品と比べ生産コストがかかります。各ニーズに合わせて設備や原材料などを変える必要があり、量産品のように使いまわすことが難しいです。

大量生産が選ばれていた理由も、設備や原材料を使いまわすことで、コストを抑えることができたからといえます。

もちろん、共通する部分もありますが、それでも、変更部分にコストがかかることには変わりありません。

また、内容が異なれば輸送方法や管理方法なども異なります。たとえ基は同じ製品であっても、仕様を変更することで別の製品となり、各製品ごとに必要な扱いは異なってきます。

場合によってはコストがかさみ、変更前よりも利益が低下する可能性もあるでしょう。

コスト削減の対策も必要ですが、それと同時に、売れる製品を作るリサーチ力も必要となります。

生産効率の低下

二つ目の課題は、生産効率が低下する問題です。治具を交換する際には生産ラインを止める必要があり、その間は、生産ができなくなります。

また、段取りや工程、配置換えなどが必要になる場合もあります。変更の手間がかかるのはもちろん、変更した後もしばらくは変更した環境に慣れず、生産効率を低下させる原因にもなるでしょう。

生産効率が低下すれば、必然的に生産性も低下します。少量生産だからこそ生産性が低下しても成り立ちますが、利益を上げるためには、生産効率を低下させないための対策が必要です。

生産計画の調整

三つ目の課題は、生産計画の調整が必要なことです。「生産効率の低下」でも触れたように、製品に合わせて、段取りや工程の調整が必要となります。

他にも、配置換えや原価量の計算なども調整ごとに必要となり、とても手間がかかります。

また、調整によってトラブルが生じる可能性も十分考えられるでしょう。

問題なく調整を行うためには、生産管理システムなどのAIによる管理が必要となります。

課題解決によって生産効率向上させる取り組み

課題を解決をするには、どのようなことをすれば良いのか。生産効率を向上させるための取り組みについて考えてみましょう。

段取りの効率化

一つ目の取り組みは、段取りを効率化することです。設備や治具の交換に時間がかかるのなら、交換しやすい環境を用意し、素早く交換できるようにします。

手順をマニュアル化し練習するのはもちろん、交換用の治具を近くに置いておく、まとめて交換ができるカートリッジ式の治具にする、動線の邪魔にならないよう整頓するなど、作業しやすい環境を整えることで、生産効率の向上を目指します。

最適な在庫量の確保

二つ目の取り組みは、在庫管理をすることです。不要な製品を作らないことで、結果的に生産効率を向上させます。

また、「在庫過多のリスクを軽減できる」でも触れたように、過剰在庫は様々なデメリットが生じます。

不要なコストを抑える意味でも、在庫の管理はとても大切です。

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生産管理システムの導入

三つ目の取り組みは、生産管理システムの導入です。生産管理システムとは、在庫や工程など、生産に関することすべてを管理するシステムのことであり、システムによって管理することで効率的に生産が行えます。

人力では大変な「段取りの効率化」や「最適な在庫量の確保」も、生産管理システムなら簡単に管理できます。

他にも、製造工程の管理に特化したMESや、研究部門や営業部門などの企業全体を管理するERPなどもあり、管理システムを導入することで、様々な効率化が目指せます。

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まとめ:多種多様な顧客ニーズにいち早く対応する生産方式

多品種少量生産は、今の時代に合わせた生産方式です。多品種にすることでニーズの多様性に対応し、少量生産をすることで売れ残るリスクを軽減します。

様々な製品を手がけることで、新商品の開発や技術者の技能向上も期待できるでしょう。

ただ、多品種に対応するためには、様々な技術が必要です。コストもかかり、工程も複雑化します。多品種少量生産を形にするには、作業員の教育や、生産の効率化が必要になってきます。

そのためにも、工場のIT化が望まれます。生産管理システムを導入することで、工程のムダを改善し、生産効率の向上に役立ちます。

教育に関しても、VR技術を活用することで、実体験のように学ぶことが可能です。人手不足の場合でも、熟練工の技術をデータ化しロボット(AI)に学習させることで、熟練工の動きを再現できます。

近年は、第四次産業革命を目指した工場のIT化が推奨されています。時代に合わせ多品種少量生産を実現するためにも、ぜひIT技術の導入を検討してみてください。

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