近年、働き方改革による労働時間の見直しや少子高齢化の影響による労働人口の減少によって、 企業の生産性を向上させることが企業の大きな課題となっています。
製造業では現場にITやシステムを導入することで生産性向上を図る企業が増加しています。 この記事では、中小製造業のシステム導入の現状と導入の課題についてご説明します。
他企業の導入現状と課題について知っていただき、自社の状況把握やシステム導入の見直しにご活用ください。
中小製造業のシステム導入の現状
中小製造業のシステム導入について、中小企業庁が公開している中小企業白書にて業務領域別のIT導入比率が公表されています。
出典( 中小企業庁 2018年版 中小企業白書 )
上図から、中小製造業は他の業種と比較して「受発注」「在庫管理」の業務におけるIT導入比率が高く、約75%の中小製造業がITやシステムを導入していることがわかります。
背景として、働き方改革による労働時間の見直しや少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、ITやシステムを導入することで生産性の向上を図った事が予想されます。
しかし、中小製造業の約1/4の企業では受発注業務や在庫管理についてもITが未導入であるのが現状です。
システム導入化が進まない理由
システムの導入が進まない理由として、「高額なシステムに対する費用対効果が見えにくい」ことが挙げられます。
生産管理システムなどの企業向けITサービスは、高機能なシステムですと1億円を超える場合もあり、費用面で中小の製造業にとって簡単に導入できるものではありません。
製造業における生産管理システム導入の目的とメリットは下記記事をご参照ください。
製造業を中心にIoT※の導入が活発になっている中、生産管理システムの導入を検討されている方も多いと思います。 一方で、「結局、生産管理システムって何のために導入するの?」「生産管理システムを導入すると何が変わるの?」といった疑[…]
また、高額なシステムを導入しても「想定通りの効果が得られるのか?」「高機能なシステムを使いこなせるか?」など、高額な費用に対する効果が明確では無いという不安からIT導入が進んでいないことが予想されます。
IT導入をすることのメリット
では、中小製造業がITを導入することで見られる効果・メリットについて2つ紹介します。
①労働生産性の向上が見込める
中小企業白書の調書内で、業務見直しと合わせてITを導入した企業は、業務見直し未実施企業と比較して約1.7倍多く労働生産性が向上したと回答しています。
出典( 中小企業庁 2018年版 中小企業白書 )
他の対策として挙げられている「新規投資・増産投資」「アウトソーシングの活用」などと同様の生産性向上の効果が見られることから、業務見直しの際にはITを導入することは有効であると言えます。
製造業において、「生産性」はとても重要な要素です。生産性はそのまま企業の利益にもつながるため、生産性の向上は、どの企業にとっても永遠の課題ともいえます。 生産性を向上させるためには、まず生産性を評価することが大切です。そして、[…]
②売上高・売上高経常利益率の増加が見込める
ITを導入することで労働生産性の向上が見込めると説明しました。その結果、売上高や経常利益率の増加が見込まれます。
下図のとおり、IT投資ありの中小企業の売上高は、IT投資なしの企業の売上高の約2.6倍、売上高経常利益率は約1.3倍多いことがわかります。
出典( 中小企業庁 2016年版 中小企業白書 )
中小製造業のIT導入事例
次に、中小製造業においてITを導入した成功事例をご紹介します。
生産計画の精度を高めるために、設備の稼働率をIoTの力を用いて見える化
限られた人手で生産性を向上を目指している製造業様が、設備の稼働状況を計測・収集するIoTを用いた生産管理システムを導入しました。
その結果、生産計画の精度を高めることに成功し、設備の稼働率を約60%から約80%の上昇に成功した事例があります。
作業の進捗状況をシステムを使って共有することで、納期遅れを1/3に減少
工程管理ができていないために、納期遅れが常習化していた中小の製造業様が、工程管理をするためにシステムを導入しました。
工場内に大型ディスプレイを設置し、常に作業の進捗状況を画面に映すことで社員に共有しました。その結果、社内の状況を全員が把握でき、納期遅れが1/3に減少しました。
まとめ
- 約75%の中小製造業がITやシステムを導入している
- システムの導入が進まない理由は「費用対効果が見えにくい」
- IT投資を行なった中小企業の売上高および利益率は向上した
中小製造業におけるITやシステムの導入は生産性向上の効果があり、それにより売上高や利益率の改善が見込まれます。自社の状況把握やシステム導入の見直しにご活用ください。