QCDSとは?生産管理の重要指標をより良くするためにできること

QCDSとは?生産管理の重要指標をより良くするためにできること

QCDSとは?生産管理の重要指標をより良くするためにできること

製品の評価指標として用いられるQCD。「品質」「コスト」「納期」からなる指標のことであり、それぞれを改善することで、製品としての質を上げることができます。

製造業ではもちろん、IT、農業、建設業など、様々な業界でQCDは評価され、質を上げるために活用されているのです。

そんなQCDですが、近年ではQCDにSを加えた、QCDSにも注目がされています。基本はQCDと同じですが、Sが加わることで、より製品の質の向上につながります。

QCDSにおけるSとは、何を指す要素なのか。QCDの重要性や向上させるためのポイントなどを紹介します。

QCDSとは?製造業で使われる4つの評価指標

QCDSとは?

QCDSとは、製品を評価する際に使用される、4つの評価指標のことです。「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」「Service(サービス)」から、それぞれ頭文字を取って造語としています。

指標を見える化することで、誰でも製品の状態が理解できます。製品の改善もしやすくなり、顧客満足度の向上に活用できるわけです。

良い製品を作るためにも、QCDSによる指標は欠かすことができません。

QCDSとは、それぞれどのような事を評価するのでしょうか?

Quality(品質):適切な品質を保てているか?

品質は、製品に対し質を示す指標のことです。品質の良さはそのまま製品の良さとなり、顧客ニーズに応えるためにも、製品の質を保つ必要があります。

品質が低下すると、顧客からは落胆され信用されなくなります。製品への信用がなくなることで受注もされなくなり、利益低下の原因となるでしょう。

他社より自社を選んでもらうためにも、他社より優れた製品を作る必要があるのです。

また、低品質は不良在庫となり倉庫を圧迫します。管理費用はもちろん処分費用もかかり、利益になるどころか、逆にコストの負担となるしょう。余計なコストを減らすためにも、不良品が発生しない仕組みや対策が望まれます。

Cost(コスト):適正な価格設定ができているか?

コストは、製品に対する価格指標のことです。製品価格が、市場に対して適正かを評価します。

良い製品を作るなら、原材料からこだわると良いです。最新鋭の設備を活用すれば、安定した高品質な製品が作れます。

ですが、製造にコストをかけると、販売価格も上げる必要があります。その結果、他社よりも値段が高くなり、品質は良くても売れない事態へと発展してしまうでしょう。

顧客から受注されるためには、品質はもちろん、他社との価格競争に競り勝つ必要があります。

とはいえ、価格をただ安くすれば良いわけではありません。価格が安いほど、利益も減っていきます。コストを抑えるために無理な勤務配置や作業の簡略化なども行うようになり、品質や安全性の低下を招いてしまいます。

価格を抑えるのは大切ですが、企業にとっても十分なメリットになるような、バランスの取れた価格設定が望まれます。

Delivery(納期):適切な生産計画を立てられているか?

納期は、納品までの時間を示す指標のことです。納期が早いほど、顧客からの評価は高くなります。納期をしっかり守ることで顧客から信用され、今後の取引にも影響してくるでしょう。

そのためにも、無理のない生産計画を立てることが大切です。顧客ニーズに合わせて納期を短くしても、それが実行できなければ意味がありません。場合によっては、「無理」と答え、納期を調整する必要もあります。

また、納期を守るため、製造環境を整える事も大切です。設備の停止や不良品の発生などは、納期を遅らせる原因となります。

納期を守るためにも、無理のない生産計画と、万全な製造環境が望まれるでしょう。

Service(サービス):サポート体制が整っているか?

サービスは、顧客への対応やサポートに関する指標のことです。丁寧な対応やアフターサービスなど、行き届いたサービスは顧客満足度を高めます。

極論をいってしまうと、どの企業でも品質や金額に大きな差はありません。どの企業もQCDを意識しているため、似たり寄ったりとなるからです。

そのため、自社を選んでもらうためには、別の部分でアプローチする必要があります。自社特有のサービスが製品の付加価値となり、他社よりも秀でた部分となるのです。

他にも、製品に対するサポートはもちろん、製品説明の分かりやすさや従業員以外の人柄など、心理的なアプローチも望まれます。

Safety(安全性):安全性は保てているか?

安全性は、製造における安全性を示す指標のことです。サービスの代わりに(もしくはサービスと合わせて)、安全性を加える場合もあります。

低コスト、短期納品を実現するためには、多少の無理はつきものです。人数を減らせば人件費が浮きますし、まとめて作業をすれば時間の節約にもなります。

ですが、そのような製造は安全性を損ねます。人数を減らせば一人への負担が増加し、まとめて作業をすれば事故の原因となるでしょう。過酷な環境であることから、離職者も増えてしまいます。

もちろん、そのような現場環境では品質の低下もしやすいです。不良品が発生することから、結果としてコスト増加や納期に間に合わなくもなります。

製造業は、作る人がいてこそ成り立つ業種です。顧客を意識しQCDを高めるのは大切ですが、従業員を使いつぶさないよう、従業員を意識した取り組みも必要とされます。

QCDの重要性

QCDが重要視される理由は、ひとえに顧客からの信用を得るためです。顧客は「高品質、低価格、短納期」を望んでおり、そのニーズに応えるため、QCDの要素が必要とされます。

企業の信用は、企業の存続に深く関係する要素です。信用がなければ依頼はされず、収入がないことから企業が倒産してしまいます。そのような事態を防ぐためにも、世間から信用され、継続して仕事の依頼をもらう必要があるのです。

QCDの中でも、特に重要なのは「品質」についてです。顧客は必要だから製品を求めており、問題なく製品を使うためにも一定の品質が求められます。多少コストや納期で足が出ても、必要な製品が揃うのなら目をつぶることは可能です。逆に、コストや納期が規定内でも、製品が使えなければ許容できません。

「コスト」と「納期」は大体同じですが、納期よりもコストを優先する顧客が多いことから、コストの方が重要視されています。

とはいえ、「品質が良ければすべて良し」といったわけではありません。品質が良くても、予算をオーバーしたり必要な時に間に合わなければ意味がないからです。高品質でも手に入らないようなら、多少品質を落としても、予算内や納期に間に合うような製品を顧客は望みます。

結局のところ、大切なのはQCDのバランスです。どれが突出していても、他が足を引っ張って顧客満足度は低下します。顧客満足度を高めるためには、すべてをバランスよく向上させることが大切なのです。

他にも、企業によってニーズは異なります。「コストがかかってもいいから明日までに必要」「数か月後でも良いのでとにかく安くしてほしい」など、顧客ニーズに応えることで、顧客との信頼関係を築いていきましょう。

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QCDSを向上させるためにできること

QCDSを向上させるためには、どのようなことをすれば良いのでしょうか?改善方法について考えてみましょう。

Quality:品質を高める

品質で大切なことは、品質の向上を目指すことです。そのためにも、4Mを意識した取り組みが必要となります。

4Mとは、「Man(人)」「Machine(設備)」「Method(方法)」「Material(原材料)」からなる、製品の品質に関係する4つの要素のことです。原材料から品質にこだわるのはもちろん、製造をする人や設備、作り方によっても品質は変わってきます。

技術の向上、設備の新調、ベテランの技術をマニュアル化、管理方法の改善、検査方法の見直しなど、品質向上を目指すためには、4Mを意識した取り組みをしていきましょう。

ただし、「QCDの重要性」の項目でも触れたように、品質改善に力を入れすぎると原価率が上昇し、価格設定が市場から逸脱してしまいます。

QCDを改善するためにも、顧客の望む価格設定を正しく把握し、それに見合う範囲で、品質の向上を目指してください。

Cost:コストを抑える

コストで大切なことは、原価率を抑えることです。原価率が下がれば企業の利益となりますし、製品価格自体も抑えられ、顧客のメリットにもなります。

原価率を抑えるためには、製造における様々なムダを省くことが大切です。電気代や原材料の削減はもちろん、自動化による人件費の削減、ペーパーレス化による用紙の削減、過剰在庫を減らすことによる管理費用の削減など、効率的な製造は、そのままコスト削減につながります。

他にも、不良品の発生を防げば、原材料や処分費用なども節約できます。品質の向上もコスト削減につながってくるのです。

デジタル化やマニュアル化を中心とした、効率的な施策を試していきましょう。

Delivery:納期を守る計画の策定

納期で大切なことは、無理のない生産計画を設定することです。納期が短い方が顧客からの印象は良いですが、トラブル一つで破綻するリスクがあります。いくら契約の段階で印象が良くても、結果が悪ければ逆効果といえるでしょう。

納期をしっかり守るためにも、各工程の完了日数を割り出し、適切な生産計画を立てる必要があります。

他にも、作業効率を向上させる配置や工程の見直し、トラブルが生じた際の対策など、生産性を高める取り組みも必要です。

近年は、顧客ニーズの多様化によって多品種少生産が主流となってきており、生産計画を立てるのが難しくなっています。効率の良い生産計画を立てるためにも、生産管理システムの導入を検討すると良いでしょう。

Service:適切なサービスを提供する

サービスで大切なことは、人材のリソース管理です。サービスを担当する人材を育成することで、サービスの質を向上させます。

サービスとはあくまでも付加価値であり、顧客の要求を満たすものではありません。それゆえ、サービスよりも品質管理などにリソースを割きやすく、サービスがおざなりになりやすいです。

人材の採用や自動化などによって人材不足を解消し、製造部門だけではなく、サポートセンターや営業などにも力を入れる必要があります。

他にも、分かりやすいwedサイトの設立、訪問客が快適に過ごせる整理整頓など、製品以外へのアプローチも効果的です。

ただ、サービスはあくまでも付加価値に過ぎません。サービスに力を入れすぎて、QCDが低下するようでは意味がないでしょう。QCDを損ねない範囲で、サービスにも取り組んでください。

QCDSから派生する多様化したQCDの種類

QCDSには、他にもいくつかの発生した種類があります。より良い製品を作るためにも、合わせて覚えておいてください。

QCDSE:働く環境を加えた考え方

QCDSEは、QCDSに「Environment(環境)」を加えた評価指標のことです。良い製品を作るためには、製造がしやすい環境を整える必要があります。

湿度や温度が高いと、作業員のパフォーマンスに影響します。不快感からモチベーションが削がれ、作業効率が悪くなるからです。在庫にカビや錆なども発生し、品質を下げる原因にもなります。

他にも、環境が汚いことから、事故や異物混入などのトラブルも発生するでしょう。

そのような事態を防ぐためにも、働きやすく、管理がしやすい環境を作る必要があります。

環境を整えれば作業員のモチベーションが上がり、生産効率も向上します。不良品の発生も減らせるなど、環境管理はとても重要です。

QCDSM:モチベーションを加えた考え方

QCDSMは、QCDSに「Moral(やる気)」を加えた評価指標のことです。「QCDSE」でも触れたように、作業員のモチベーションは、生産効率や生産性に影響します。

働きやすい環境を作るのはもちろん、有給の承認や残業の削減なども、モチベーションの向上につながります。福祉構成を意識した、働き方改革に取り組んでください。

「やる気」に取り組む企業は、従業員からの評価が高く、離職者が少ないです。人材不足を解消する意味でも、やる気の向上に取り組むと良いでしょう。

PQCDS:品種と安全性を加えた考え方

PQCDSは、QCDSに「Producticity(生産性)」を加えた評価指標のことです。生産性とは「品種」や「多様性」のことを指し、「顧客ニーズに合わせた製品を提供する」ことを意味します。

近年はグローバル化などの影響により、顧客ニーズが多様化しています。製品を売るためには、顧客ニーズに合わせた製品開発が必要不可欠です。

いくら「高品質、低価格、短納期」を実現しても、製品を欲しがる人がいなければ意味がありません。そのことからQCDSよりも先に、Pがつけられています。

機会損失を防ぐためにも、流行や世情をいち早く収集し、迅速な生産計画を立てられるシステム構築が求められます。

まとめ:QCDSは生産管理の重要指標

QCDSとは、QCDに「Service(サービス)」を加えた指標のことです。他社との販売競争に競り勝つためには、QCDを意識するだけでは足りません。自社が選ばれるような、付加価値が必要になります。

もちろん、従来のQCDを蔑ろにしていいわけではありません。どの社もQCDの改善は前提としており、違いを出すためにサービスが必要なのです。

信用の獲得、ひいては継続的な仕事の発注をしてもらうためにも、QCDSを意識した取り組みを行ってください。

また、QCDS以外にも様々な派生指標が存在します。どの指標の内容も、製造では大切なことです。QCDSと合わせて、取り組んで行きましょう。

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