製造業では、工程管理という言葉をよく耳にします。工程管理とは、その名の通り製造工程を管理することであり、多くの企業・工場が工程管理を取り入れています。
そんな工程管理ですが、中には「なぜ必要なのか」が分からない人も、きっといることでしょう。「製造工程を把握するために工程管理が必要」といわれても、管理する意味が分からないと、ただ情報を集めるだけとなってしまいます。
工程管理を行う目的とは何なのか。生産管理との違いや、工程管理をする重要性などを紹介します。
工程管理とは?
工程管理とは、製造工程全体を管理することです。各工程における製造状況の管理はもちろん、それに伴う在庫管理、人材管理、設備の管理など、製造過程におけるすべての内容を管理します。
製造業は主に製品を作ることが仕事と考えると、製造を管理する工程管理は、製造業の大部分を管理しているともいえるでしょう。
もちろん、実際には他にもたくさんの仕事がありますが、製造が占める割合は大きいです。そのことから、製造業にとって工程管理は、仕事の大部分に関係する必要不可欠な要素ともいえます。
作業工程を改善するためには、作業工程の見える化が必要です。見える化によってムダな部分が把握できれば改善もしやすくなります。
生産状況からボトルネックとなる部分を把握したり、人手不足の場所を把握したりなど、工程管理の活用によって、製造における様々な問題点が見つけられます。
製造業における工程管理の5つの目的
工程管理は、ただ生産状況をまとめるだけではありません。それぞれ目的があって情報が活用されます。
工程管理はなぜ製造現場で必要とされるのか、活用される主な目的を5つ説明します。
納期遵守・生産リードタイムの短縮
1つ目は、生産リードタイムの短縮目的です。リードタイムとは、製品の発注から納品までにかかる時間のことであり、工程全体を見直すことで、改善・短縮が目指せます。
工程全体の見える化ができていれば、ムダな工程やボトルネックとなる工程も見えてきます。移動の手順が悪いようなら設備の配置を変更したり、作業に遅延が見られるようなら増員したりなど、必要に合わせた対応が可能です。
生産リードタイムが短縮されれば、生産性の向上につながるほか、電気代や労務費の削減などにもつながるでしょう。
標準化によるミスの削減・安定した品質の確保
2つ目は、作業ミスの削減目的です。工程を見直し、不要・難しい工程をなくすことで、人的ミスを減らします。
また、作業工程をマニュアル化することで、品質の安定化もはかれます。熟練者と新人とでは技術の違いが生じますが、工程を標準化すれば技術による違いは生じません。
品質の安定によって不良品の発生も軽減され、生産性も安定させられます。
他にも、洗礼された技術をマニュアル化することで作業時間の短縮にもなり、生産リードタイムの短縮にもつながるでしょう。
仕掛在庫を減らす
3つ目は、仕掛在庫を減らす目的です。工程管理では、生産に使用する仕掛品もまとめて管理します。
在庫数が分かれば、ムダに仕掛品を生産する心配はありません。在庫によって倉庫が圧迫するのを防げるのはもちろん、余計な仕掛品を作ることによる時間と資材のムダを省くことができます。
また、逆に不足を防ぐことも可能です。仕掛品がないと生産がストップしてしまうため、在庫の把握はとても重要です。
仕掛品が多ければ生産をストップし、足りない場合は生産数を増やすなど、状況に合わせた対応が可能となります。
生産性の向上
4つ目は、生産性を向上させる目的です。生産リードタイムが短縮されれば、さらに生産数を増やすことができます。
また、安定した品質の確保も生産性の向上につながります。マニュアルによって新人の技量を底上げし、熟練者と同じ生産性を身に着けさせるのです。
他にも、不良品が減ることで生産数は増加します。様々な影響によって、生産効率の向上が見込まれます。
製造原価の低減
5つ目は、製造原価を減らす目的です。工程管理によってムダを省くことで、余計な出費を抑えられます。
製造原価は、主に「材料費」「労務費」「製造経費」の3要素によって構成されますが、工程管理によって、過剰な仕掛品の生産を減らし(材料費削減)、適切に人材配置が行えます(労務費削減)。
さらに、ムダな工程がなくなれば、設備の稼働時間も減らせます(製造経費の削減)。様々なムダがなくなることで、生産性を向上させるだけではなく、原価の削減も期待できるのです。
工程管理と生産管理の違い
工程管理と生産管理の違いは、管理する範囲が異なります。
工程管理は、製造に関する内容を管理します。製造に使う原材料や仕掛品の管理を始め、人員の配置や生産状況など、製造に着手し完成するまでが対象です。
一方生産管理は、生産工程すべてを管理します。計画段階である生産計画を始め、材料の調達、製造、在庫管理、製品の出荷、原価管理など、すべてを含めて生産管理の対象です。
生産管理システムでは、「納期」「在庫」「工程」「原価」の4項目を主に管理しており、その中の一つが工程管理というわけです。
生産管理には他にも、生産計画、受注管理、発注管理、在庫管理、外注管理、品質管理などがあり、工程管理と同様に、工場の運営に欠かせない管理システムといえるでしょう。
製造において、管理はとても重要です。在庫や顧客などの情報管理だけではなく、作業工程の管理、品質の管理、リスク管理など、様々な部分で管理を必要とします。また、管理以外にも原価計算や資材の発注などの細かい作業もあり、決して「ただ作って売[…]
工程管理の重要性
工程管理が重要な理由は、製造過程を見える化するためです。見える化とは、内容を把握できる状態にすることであり、見える化することで認識の齟齬や勘違いを防ぐことにつながります。
生産には、様々な工程が挟まれます。車を製造するにしても、ボディ、タイヤ、ドア、フロントガラス、エンジンなど、それぞれ別のチームが担当します。
ですが、それぞれの状況が分からないと連携が取れません。連携が取れないと、ボディだけがたくさん製造され、タイヤの数が足りないといった事例も出てきます。
もちろん、同じ製造部門だけではなく、他部門との連携も必須です。生産状況から原材料の調達や仕事の受注などの参考になります。スムーズな生産を行うためにも、製造の見える化が必要といえるでしょう。
他にも、目的で紹介したように見えるかによる作業工程の改善や生産のムダを削減、工程をより単純にすることによる保全管理、マニュアル化することで誰でも同じ作業ができるようにする属人化の防止など、工程管理による見える化はとても重要です。
まとめ:製造業にとって重要な管理業務
工程管理は、製造業においてとても重要な要素です。製造工程全体を管理することで、作業効率の向上や品質保全、過剰在庫や原価計算によって発生するムダを削減します。結果として生産性の向上や、さらには利益の向上にもつながり、企業をより発展させるための切っ掛けとなるでしょう。
工場全体を把握するためには、工場の見える化が必要不可欠です。工程管理だけではなく、受注管理や発注管理といった、生産管理の活用が求められます。
今まで活用の仕方が分からなかった人は、この機会にぜひ生産管理を意識してみてください。そして、生産管理が整っていないようなら、管理システムの導入や生産形態を改良し、工場の見える化を目指しましょう。