製造現場における労働生産性とは?生産性を向上させる2つのポイント

製造現場における労働生産性とは?生産性を向上させる2つのポイント

製造現場における労働生産性とは?生産性を向上させる2つのポイント

製造業において、生産性はとても重要な要素です。生産性はそのまま企業の利益にもつながるため、生産性の向上は、どの企業にとっても永遠の課題ともいえます。

生産性を向上させるためには、まず生産性を評価することが大切です。そして、評価するためには、労働生産性を参考に判断すると良いでしょう。

労働生産性とはどのようなものなのか?生産性を向上させる目的や向上させるポイントについても紹介します。

労働生産性とは?

労働生産性とは?

労働生産性とは、労働者1人あたりが生み出す成果のことです。単純に、数値が大きいほど1人あたりの成果が良いことを表し、数値から経営判断の指針などに用いられています。

また、労働生産性には「付加価値労働生産性」と「物的労働生産性」の2種類があり、それぞれ表すものは異なります。評価結果が異なりますので、それぞれで計算し、総合的に評価することが大切です。

付加価値労働生産性

付加価値労働生産性とは、成果に対する付加価値の割合です。製品1つに対しての付加価値から、労働人数を割って数値を求めます。

1人の労働者からどの程度の利益が発生するかが分かり、より利益を上げるための指標になります。

物的労働生産性

物的労働生産性とは、成果に対する生産量の割合です。総合的な生産量から、労働力を割って数値を求めます。

1人の労働者からどの程度の製品が作れるかが分かり、生産性を見直す際の指標になります。

各労働生産性の測定方法

それぞれどのように数値を求めるのか、測定方法を紹介します。

付加価値生産性の測定方法

付加価値生産性の測定は、以下の方式で求められます。

付加価値生産性 = 付加価値額 / 労働量

例えば、1000円の商品を作るとします。その際、製品1つ作るのに使われた原材料が500円の場合は、その商品の付加価値は500円になります。

もし、製品を2人で生産していた場合は、「500(付加価値) ÷ 2(労働量)」となり、付加価値労働生産性は250円となります。そして、1人あたりで考えた場合は、付加価値労働生産性が125円となるわけです。

もちろん、生産を1人でしていれば、付加価値労働生産性は500円となります。2人で生産した場合と比べても、1人で生産した方が評価が高いといえるでしょう。

また、労働量は人数だけではなく、時間を掛けて考える場合もあります。作業員2人が5時間掛けて行った場合は、「2(作業人数)×5(作業時間)」で労働量は10となり、付加価値労働生産性は「500(付加価値)÷10(労働量)」で50円となります。そして、1人1時間あたりの付加価値労働生産性は、5円になるわけです。

  • 労働量1:作業人数
  • 労働量2:作業人数 × 時間

比較して評価するためにも、労働量をどのようにするか決めておきましょう。

物的労働生産性の測定方法

物的労働生産性の測定は、以下の方式で求められます。

物的労働生産性 = 生産量 / 労働量

例えば、製品を100個作ったとします。5人で作業した場合は、「100(生産量) ÷ 5(労働量)」となり、物的労働生産性は20個です。1人あたりで考えると、1人4個の物的労働生産性があることが分かります。

同様に、人数に時間を掛けて計算も可能です。2時間掛けて作業した場合は労働力「5(作業人数)×2(作業時間)」が10であり、物的労働生産性は「100(生産性)÷10(労働力)」で10個となります。そして、1人1時間あたりで直した場合の物的労働生産性は、2個といえるでしょう。

生産性と生産効率の関係

労働生産性を向上させるためにも、まずは生産性と生産効率の関係を知ることが大切です。どちらも生産についての内容ですが、同じことを指しているわけではありません。

生産性とは、その名の通り生産能力のことです。コストに対する費用対効果ともいえ、生産性の良さは、低コストで沢山の製品が作られることを意味します。

一方、生産効率とは、生産に対する労力のことを指します。生産効率が良いということは、従業員の負担が少なく、そして素早く作業が行えてるといえるでしょう。

まとめると、生産性は目的、生産効率は手段ともいえます。生産性の向上を目指すためには、生産効率の向上が必要です。

ただ、生産性が高いことが必ずしも良いわけではありません。工場の全リソースを投入すれば生産性は向上しますが、それだと他の作業ができず、生産におけるムダやムリが生じます。

さらに、作り過ぎによって管理スペースも圧迫し、管理するための人材やコストも必要になるでしょう。

最終的な目的は生産性の向上ではありますが、その過程として、生産効率についても、検討・改善する必要があります。

生産性を向上させる目的

なぜ、労働生産性の向上が必要となるのか。その理由を2つ説明します。

人手不足への対応

1つ目の理由は、人材不足に対応をするためです。近年、日本の人口は少子化の影響によって減少傾向にあり、同様に労働人口の割合も減ってきています。製造業でもそれは同じで、新卒や中途採用が集まらないことから、深刻な問題となっているのです。

そのため、1人あたりの生産性を向上させ、人材不足を補う必要があります。直接的な言い方をするなら、「1人で2人分の働きを期待する」というわけです。

生産性の向上は、ただ「頑張れ」と指示をするだけでは解決できません。ムリな指示は、従業員からの信頼を損ない、離職を考えさせてしまいます。

従業員の生産性を向上させるためにも、新しい設備やシステムの導入など、作業環境を変える必要があります。

働き方改革の推進

2つ目の理由は働き方改革を推進するためです。働き方改革とは、2016年に発表された政策のことであり、有給の消化義務や時間外労働の上限規制などを設けることで、従業員にとって働きやすい環境を作る目的があります。

当然、従業員の労働時間が少なくなれば、生産性も下がります。法律で定められているとはいえ、企業としてはあまり望ましいことではありません。

ですが、従業員1人あたりの生産性が向上すれば、生産性を落とさずに、働き方改革が行なえます。単純に、1人が2人分の働きができれば、1人が有給を申請しても生産性は変わらないということです。

今後、働き方改革と企業の利益を両立するためにも、生産性への対策は必要となります。

生産性を向上させる2つのポイント

生産性の向上目的は分かりましたが、実際に向上させるためには、どのような対策が必要なのでしょうか?

向上させるポイントとして、2つほど紹介します。

付加価値を高める

1つ目の方法は、従業員1人あたりの付加価値を高めることです。付加価値を上げれば付加価値生産性が向上し、会社の利益となります。

具体的な例としては、従業員のスキルアップが挙げられます。1人で複数のことができれば、その分人を減らせ、人件費の削減につながるからです。技術があることから作業効率も向上し、労働生産性も上昇するでしょう。

また、業務の平準化も効果的です。業務をマニュアル化し誰でもできるようにすれば、担当の人を用意する必要はありません。今まで正社員がしていた業務を非正規社員に任せることも可能となり、人件費の節約になるわけです。

付加価値の向上によって利益が出れば、新しい設備も導入でき、人材不足の解消にもなります。労働量も減らせることで、さらに付加価値生産性が向上されます。

業務を効率化する

2つ目の方法は、業務を効率化することです。効率化すれば作業がスムーズに行われ、生産性の向上につながります。

具体的な例としては、IT技術の導入が挙げられます。例えば、生産管理システムについてです。システムによって生産状況が分かれば、現状に合わせたシフト変更を可能にします。ボトルネックとなる部分も発見しやすく、人材をムダなく活用できるでしょう。

また、業務用ロボットを導入すれば、生産性の向上だけではなく、従業員の負担も減らせます。少人数でも生産が可能となり、人材不足の解消や働き方改革の推進にもなるのです。

他にIT技術を導入しなくても、作業現場の整理・整頓・清掃(3S)による作業環境の改善スキルや適性などによる配置場所の変更作業工程の見直しによるムダな工程の削除など、業務の効率化をする方法は、いろいろと挙げられます。

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ISO22400における労働生産性

ISO22400とは、製造実行システム(MES)を国際基準としてまとめた標準化指標のことです。34項目のKPIを「生産性」、「品質」、「環境」、「能力」、「在庫」、「保全」の6つのカテゴリに分類して評価します。

労働生産性もISO22400の「生産性」のカテゴリに分類されているKPIの1つとなっています。

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まとめ:自社に合った方法で労働生産性を上げよう

労働生産性は、主に2つの方法によって求めることができます。それぞれ求める事柄は異なりますが、どちらも必要な事柄です。それぞれで計算し、総合的に生産性を評価してみてください。

また、生産性を向上させる方法も、1つではありません。大まかに「付加価値を高める」方法「業務を効率化する」方法として紹介しましたが、実行するための方法はいろいろあります。

他にも、紹介をしていませんが「アウトソーシングの活用」も1つの方法です。自社内だけにこだわらず、コストと生産性が釣り合うなら、導入してみるのも良いでしょう。

自社に合う方法で労働生産性の向上を目指し、利益はもちろん、人材不足の解消や働き方改革への推進を実現させてください。

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