あなたの生産現場は、安全に気を付けていますか?製造には様々な機械が使われ、様々な事故が生じます。
たとえ機械を使わない手作業であっても、物が落ちたり転んだりなど、怪我する可能性はゼロではありません。場合によっては、切断や死亡といった大事故も発生します。
そんな危険もある製造現場ですが、3Sを意識することで事故のリスクを減らすことが可能です。
3Sとは何の頭文字なのか。3Sの意味や目的について紹介します。
「基本の3S」とは?
3Sとは、「整理」「整頓」「清掃」からなる、安全性を意識した活動内容のことです。それぞれ、ローマ字表記した場合の頭文字から、3Sと呼ばれています。
- 整理:Seiri
- 整頓:Seiton
- 清掃:Seisou
内容を見てわかるように、「整理」「整頓」「清掃」はどれも製造に関する専門的な内容ではありません。
そのため、3Sの教えは製造業だけではなく、工事現場や病院など、安全性が必要な様々な現場で使われています。
どの教えも、小学校の始めに習うような基礎的な内容です。ですが、それらは安全性の確保にとても重要であり、「基本の3S」と言われる所以と言えるでしょう。
基本の3Sの意味と効果
「整理」「整頓」「清掃」が大切なのは分かりますが、それがどのように安全性の向上につながるのか、ピンとこない人もいるかと思います。
3Sを実施することで、どのような効果があるのでしょうか?
整理
整理とは、物を片付けることです。正しい物の配置に片付けることで、作業の邪魔になりません。通路に物がなければ通りやすくなり、ぶつかったりつまずいたりする心配もなくなるでしょう。導線が確保されることで、作業もしやすいです。
また、整理は物を片付けるだけではなく、捨てることも意味します。使わない物は置物と同じであり、スペースを圧迫します。新しい物が置けないだけではなく、管理費用や維持費用など、製造のムダも生じてしまうでしょう。
たとえ使う予定があったとしても、使わなければ邪魔なままです。スペースのムダが発生しないためにも、在庫管理はとても重要と言えます。
必要な物は片付け、不要な物は処分することが、整理による基本的な意味となります。
整頓
整頓とは、物の配置を決めることです。必要な物を使いやすい場所に配置することで、作業がスムーズに行えます。作業が効率化されますので、危険な行為を減らせます。作業員の負担も少なくなり、仕事に精が出せるでしょう。
また、分かりやすく配置することで、一目で状態が把握しやすいです。在庫管理がしやすくなり、購入による費用増大や、それに伴うスペースの圧迫を防ぐことができます。ただ物の配置を整えるだけですが、それによって様々なムダを省くことができるわけです。
使う物を使いやすい場所へ、一目で分かりやすく整頓することが、整頓による基本的な意味となります。
ただ、必ずしも上手く整頓できるわけではありません。Aさんが使いやすくした結果、Bさんが使いにくくなる場合もあるからです。Bさんのリスクや負担が増えるだけではなく、Aさんを贔屓することによって、Bさんに不満が溜まってしまうでしょう。不満は次第にストレスとなり、精神的な負担にもなります。
複数の人が使う物を整頓する際は、それぞれの人の意見を聞いて、ある程度妥協する必要もあります。場合によっては同じものを用意して、それぞれが使いやすい場所に整頓することも考える必要があるでしょう。
清掃
清掃とは、仕事場を綺麗にすることです。汚れたままの職場は衛生面に問題があります。埃や薬品まみれの室内は体に悪いですし、水たまりによって転んでしまうこともあります。何より、見た目が汚いことから、精神的にも良くありません。
また、汚れが原因で機械が故障する可能性もあります。故障した場合は修理が必要ですし、その間の作業はストップしてしまいます。故障の仕方によっては怪我をすることもあり、定期的な清掃やメンテナンスはとても大切です。
他にも、埃やゴミが混入したりなど、品質管理にも影響がでます。商品やサービスによっては利用者に悪影響を及ぼすものもあり、企業の信用問題にもつながります。
「仕事場は掃除する」といった基本的なことではありますが、リスク回避、作業の効率化、品質の維持など、清掃は、様々な要素に関係する、重要な要素と言えるでしょう。
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3S活動の目的
3Sがどのような影響を与えるか。3S活動を必要とする目的を紹介します。
- 安全な職場をつくること
- 快適な職場をつくること
- 効果的な職場をつくること
安全な職場をつくること
一番の目的としては、安全な職場をつくることが挙げられます。
事前に床を掃除して周囲の物を片付けておけば、不良の事故で怪我をする心配もありません。仮にトラブルが生じたとしても、整理整頓しておけば、スムーズに対処ができるでしょう。
機械が多く、ちょっとしたミスで大事故につながる現場だからこそ、安全は特に重要視される項目です。
快適な職場をつくること
3Sの取り組みは、安全性の向上だけではありません。整理整頓し掃除することで、仕事がしやすい快適な職場を作ることにもつながります。
誰だって、汚い部屋では仕事をしたくはありません。狭い、物が多くて何があるのか分からない、異臭がするなど、モチベーションが下がることばかりです。場合によっては、その汚さが原因で、体調不良や離職といった問題にも発展するでしょう。
ですが、整理整頓された綺麗な部屋なら、逆にやる気が出てきます。精神的ストレスも少ないことで、体調不良にもなりにくいです。
「快適な職場をつくる」ということは、作業員の負担を減らすことです。離職せず、長く仕事を続けてもらうためにも、作業員のことを思った3S体制が推奨されます。
効率的な職場をつくること
3Sの効果は安全性の向上や負担の軽減だけではなく、仕事の効率も向上させます。邪魔なものが無ければスムーズに移動ができますし、整頓がされていれば、必要な物がすぐに用意できます。
作業のムダを省くことで、より効率的に仕事ができるわけです。
また、3Sにはコストの削減効果もあります。不要な物を処分すれば、その分の管理費用を減らせます。整頓をすれば在庫の数も把握でき、余計な在庫を抱える心配もありません。
さらに、故障による修理費の心配や、故障中に作業ができない心配もなくなります。
仕事がしやすくなれば、生産効率も向上します。コスト削減と合わせることで、会社の負担を軽減し、会社の成長にも良い結果をもたらします。
3S活動と5S活動の違い
5S活動とは、3Sに「清潔」と「躾」を付け足した5つの項目のことです。
- 整理:Seiri
- 整頓:Seiton
- 清掃:Seisou
- 清潔:Seiketsu
- 躾:Shitsuke
清潔とは、綺麗な状態を維持することを意味します。「整理」「整頓」「清掃」で綺麗にした後は、清潔によって、状態を保つことが大切ということです。
躾とは、習慣づけることを意味します。一度掃除しただけで終わらせず、普段から習慣づけて、続けていくことが大切と言えるでしょう。
元々、3Sは5Sの一部でしたが、特に重要な要素として「整理」「整頓」「清掃」からなる3Sが広まりました。「清潔」と「躾」も大切ではありますが、どちらも「整理」「整頓」「清掃」が基本であり、3Sを維持する目的が「清潔」と「躾」だからです。
とはいえ、3Sにも暗黙の了解として「清潔」と「躾」が組み込まれています。定期的に3Sを実行するならそれは「躾」であり、常に綺麗な状態になればそれは「清潔」と言えるでしょう。ある意味、わざわざ組み込む必要がないから、3Sに省略されたと考えることもできます。
仕事場は、毎日使う場所であり、毎日汚れる場所です。「整理」「整頓」「清掃」だけで満足はせず、「清潔」「躾」を心がけることで、仕事環境を守っていきましょう。
製造業でよく耳にする5S活動。現場環境を改善することで作業効率や生産性が向上することから、多くの企業が注目・取り入れています。 もちろん、5Sの考えは製造業だけではありません。医療業界、物流業、サービス業、小売業なども実施して[…]
まとめ
「整理」「整頓」「清掃」は、どれも小学校で習うようなことばかりであり、誰でも知っていることだと思います。中には、「普段から意識している」といった人もいることでしょう。
ですが、その本質はただ綺麗にするだけではなく、安全性の向上や作業効率の向上、さらには、コスト削減や精神的負担の軽減など、様々な意味や目的があります。
改めて、3Sまたは5Sが指示されるということは、忘れている、もしくは勘違いしている人が多いということです。「当たり前のことだから」と軽く考えず、今一度、自分の行動や現場の様子を見直して、安全を意識した環境づくりを心がけてください。
また、先にも話したように、3Sや5Sは生産現場だけの考えではありません。事務や経理といったデスクワークはもちろん、他業種にも当てはまることです。製造業でない人も、今後は3Sまたは5Sを意識して、仕事のしやすい職場を目指しましょう。