近年話題となっている業界のデジタル化。国もデジタル化を政策として推し進めることから、デジタル化を急ぐ企業も少なくはありません。
製造業界でもデジタル化への移行は進められており、同時に、様々な問題解決のために必要とされています。グローバル化が進む近年において、デジタル化への影響は大きいといえるでしょう。
デジタル化されることで、どのような変化を業界にもたらすのか。デジタル化するメリットや、デジタル化に伴い注意すべきポイントなどを紹介します。
製造業のデジタル化とは？
デジタル化とは、アナログ作業をデジタル作業に置き換える事を指します。紙の書類をデジタルデータへと変換しまとめるように、デジタル技術によって作業内容を改変するのです。
他にも、製造ラインの自動化、AIによる分析、生産管理システムによる工程の見える化なども、デジタル化による影響といえるでしょう。
近年は、デジタル技術の発展により、工場のデジタル化が推進されつつあります。工場の自動化を目指すスマートファクトリーや、デジタル技術によって製品やサービスの変革を目指すDX（デジタルトランスフォーメーショ）といった考えも国の政策として取り入れられており、今後の製造業において、デジタル化は必要とされています。
製造業のデジタル化の現状
デジタル化について製造業界の傾向はどのようになっているのか。現状について紹介します。
多くの企業がデジタル化に前向きな傾向
結論から話しますと、多くの企業がデジタル化に前向きな姿勢です。グローバル化が進む近年、顧客ニーズも変化し、昔のような生産体制では利益を上げるのは難しくなっています。先行きが見えず経営が難しい時代（VUCAの時代）ともいわれており、迅速なビジネスプランを計画するためには、デジタル技術が必須なのです。
2020年版ものづくり白書の「図233-1 モノづくりの工程・活動におけるデジタル技術の活用状況」には、「すでに活用している」と回答した企業は49.3%、「活用を検討中」と回答した企業は24%と全体の75%近くの企業がデジタル技術の活用に前向きであるというデータが出ています。
他にも、人材不足の影響や労働者の高齢化の影響により、アナログ作業のままでは作業者への負担が大きくなります。作業をより楽にするためにも、デジタル技術は必要不可欠といえるでしょう。
ですが、前向きな姿勢とは裏腹に、デジタル化が上手くいっていないのが現実です。2020年に経済産業省が発表した「2020年版ものづくり白書」によると、検討中も含めて約半分の企業がデジタル化に至っていないというのも事実としてあります。その理由には「ノウハウの不足」「デジタル人材の不足」「予算の不足」といった条件が挙げられ、したくてもできない状態となっています。
経済産業省も製造業のデジタル化を推進
人材不足による労働力の低下から、国も現状を真剣に受け止め、経済産業省から製造業のデジタル化を推進しています。
2017年には、「データや機械など、あらゆるモノがつながることで新しい価値観の創出と社会問題の解決」を目標とした「Connected Industries（コネクテッド インダストリーズ）」を経済産業省が提唱しました。そして、それに至る目標として、スマートファクトリーやDXといった政策も打ち出されています。
ドイツにおける「インダストリー4.0」や、中国における「中国製造2025」といったように、世界各国でデジタル化への取り組みが進められています。日本でもその方針は同じであり、製造業はもちろん、あらゆる業界でのデジタル化が目指されているのです。
製造業がデジタル化するメリット
デジタル化によって、どのように製造業は変化するのか。メリットを4つ紹介します。
人的作業の負担軽減
一つ目のメリットは、作業員の作業負担が軽減されることです。今まで人力（アナログ）で作業していた内容が、代わりに機械（デジタル）への作業へと変化します。
4時間かけていた仕事も、デジタル技術を活用すれば1〜2時間で作業が終わります。場合によっては作業すべてをロボットへと委任でき、人の作業が減ることで楽ができるでしょう。
また、リスクの高い作業も肩代わり可能です。重量物の運搬や高所での付け替えといった作業も、ロボットが代わりに作業してくれます。リスクを極限まで減らすことで、怪我の心配がない、安全な職場環境へと変えられるのです。
他にも、作業人数を削減し、交代要員も確保できます。残業時間の削減や属人化の予防にもつながり、働き方改革も実現できるでしょう。
生産体制の安定
二つ目のメリットは、生産体制が安定化されることです。在庫、シフト、工程、納期などがすべてシステムによって管理され、在庫切れやボトルネックなどで生産が遅れる心配がありません。仮にトラブルによって生産が遅れるような場合でも、すぐに生産体制を修正し、最適な生産体制を提示できます。
ムダを省いた生産体制にもなることで、生産体制の安定と共に、生産性も向上させるでしょう。
開発・製造にかかるリードタイムの削減
三つ目のメリットは、開発や製造にかかる時間を短縮できることです。人が分析や製造をするよりも、ロボットが分析や製造をする方が、早く確実に行えます。
ロボットが作業をすれば、人間のように能力の違いによって生産速度が変わる心配はありません。ベテランの技術を共有し、最高効率で生産を進められるでしょう。
近年は、顧客ニーズの多様化によって、多品種少量生産の体制が浸透しています。顧客ニーズに変化が生じた際も、loTやAIの分析によって素早く対応できるためです。
変化への対応には膨大なシミュレーションを必要とする機会も多く、デジタル技術によるサポートは必要不可欠といえます。
品質の維持・不良率の低下
四つ目のメリットは、品質の維持や不良品の排出を防げることです。生産体制が安定化されることで、同じ製品を同じように作れます。技術力の差によって品質が異なる心配がなく、常に同じ品質で生産が続けられるのです。
また、センサーによる管理を行うことで、変化が生じた際にすぐ対応できます。わずかな変化も敏感に察知し、不良品の発生へつなげません。仮に不良品が発生したとしても、すぐに停止や警報を鳴らすことで、被害を最小限に抑えられるでしょう。
製造業がデジタル化する際に気をつけるべきポイント
いろいろと便利になる工場のデジタル化ですが、デジタル化に伴い、注意すべきポイントもあります。
デジタル化の導入コストが必要である
一つ目のポイントは、デジタル化には導入のコストが必要なことです。システムや機器の導入はもちろん、工事費用なども必要となります。
導入内容にもよりますが、導入するのに数千万円する場合も珍しくはありません。工場全体をデジタル化することを考えるなら、導入費用だけで数億円を超える可能性も十分ありえるでしょう。
さらに、導入後にはランニングコストも必要です。メンテナンス費用はもちろん、アップデート費用やサーバーの管理費用などもかかり、決して安くはありません。
導入によって企業の負担となる場合もあるため、導入費用の見積もりはもちろん、導入によって費用の回収が見込めるかを、よく検討する必要があります。
デジタル技術を活用できる人材が必要である
二つ目のポイントは、技術の活用にはデジタル人材が必要なことです。いくら高性能なデジタル技術を導入しても、使える人材がいなければ、宝の持ち腐れとなります。
もちろん、基本動作だけなら覚えるのも難しくはありませんが、それだとデジタル技術を十分に活用しきれません。折角のデジタル化による効果も、半減してしまいます。
また、デジタル人材がいないと、ちょっとしたことで生産が停止しかねません。何かトラブルが生じた際、自分たちではどうしようもできず、専門家の到着を待つ必要があるからです。ちょっとした仕様変更をしたい時でも、業者に依頼する必要もでてきます。
デジタル化を推進するためには扱える人材が必要であり、デジタル人材を確保するための対策や教育も必要となります。
デジタル社会を目指す近年において、様々な業界・場所でデジタル化を見ることができます。一般家庭でもデジタル化の波は浸透しており、デジタル技術はなくてはならない存在といえるでしょう。 製造業界でもデジタル化の波は浸透しており、ライ[…]
セキュリティ対策が重要である
三つ目のポイントは、セキュリティ対策も必要となることです。loTによって外部サーバーともつながるようになるため、不正アクセスから自社サーバーを守る必要があります。
近年は、デジタル化の影響によってマルウェア（不正プログラム）の被害が増加傾向にあります。データを書き換え使えなくするだけではなく、中には、情報流出を目的とした種類もあり、データが流出してしまうと自社の信用を落としかねません。
そのような事態を防ぐためにも、自社サーバーを守る強固なセキュリティの設置、ひいては、セキュリティを管理できるデジタル人材の確保が必要になってきます。
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製造業のデジタル化の例
デジタル化によって製造業はどのように変わるのか。デジタル化の例も交えて紹介します。
ペーパーレス化
デジタル化によって、ペーパーレス化が浸透します。情報はすべてデジタルデータへと変換され、紙の書類は必要なくなるのです。
デジタル管理でなら、紙の書類のように場所を取る心配はありません。情報の検索もスムーズに行えます。新しい情報の入力や変更もしやすく、アナログ作業の時よりも短時間で行えるでしょう。
近年は、環境保全も意識されており、資源の消費を抑える意味でも、デジタル化は推奨されています。
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IoT機器の導入
IoT機器の導入によって、工場の見える化が実施できます。リアルタイムによるデータ通信が可能となり、離れた場所からでも、スムーズに情報の確認ができるようになるのです。
在庫状況や生産状況を、いちいち現場に出向いて確認する必要はありません。手元のタブレットから、すぐ確認できます。他県や海外企業ともやり取りが可能となり、各部門や企業との連携がスムーズにできるでしょう。近年話題となっているリモートワークも、loT技術があってこそです。
他にも、ロボットの遠隔操作や遠隔からのカメラ監視なども可能にします。IoT機器によって働き方が変わり、作業効率や生産性の向上が期待できます。
近年、製造業ではloT化が浸透しつつあります。導入によって作業効率が改善されることから、多くの企業が注目し、導入を検討しているのです。 ですが、導入には落とし穴があり、導入による問題点も存在します。知らずに導入すると、企業の不[…]
ロボットによる自動化や省力化
作業用ロボットの導入により、人材不足の解消が期待できます。人の代わりにロボットが働くことで、人手の足りなさをカバーするのです。
近年は、人手不足による労働力低下が深刻化しています。作業員が足りないことから規模を縮小させるしかなく、それにより生産性が低下する事例も少なくはありません。
ですが、ロボットが作業をすれば、少人数でも作業を回せるようになります。特に、簡単かつ単純な作業は、一定のルーティーンで作業を繰り返させるRPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）が適しています。難しく複雑な作業を人間が担当することで、作業効率も向上するでしょう。
同じ作業でも、ロボットを導入することで作業人数を削減でき、労働生産性を向上させられるのです。
人工知能であるAIも組み合わせれば、さらにできることが広がります。そのような、人の代わりに働くロボットのことをデジタルレイバーと呼び、人材不足である近年において、注目されつつあります。
近年、少子高齢化などの影響によって、人材不足による労働力低下が深刻化しています。労働者の高齢化に伴う将来性の不安もあることから、製造業界だけではなく、社会全体の課題としても扱われているのです。 デジタルレイバーは、そんな人材不[…]
スマートファクトリー化
デジタル化が進むことで、最終的にはスマートファクトリー化が実現されます。すべての作業をロボットが担当し、現場に人間は必要なくなるのです。
もちろん、管理の都合上、完全なロボット任せは難しいです。それでも、100人規模の工場を十数人で回せるようにもなります。リモートワークによる労働も可能となり、今までの労働環境から大きく変化するでしょう。
人材不足や技術継承問題、さらには、働き方改革などで悩む必要はありません。デジタル技術によって、安定した品質と生産が実施できます。
また、スマートファクトリーによって、ビジネスモデルそのものが変革します。多品種少量生産もその一つであり、顧客ニーズに合わせた生産体制を可能にするのです。
そして、そのような変革のことをDXと呼び、第四次産業革命を目指す取り組みとして、国から推進されています。
「スマートファクトリー」について聞いたことはありますか？第四次産業革命を目指した取り組みであり、将来的にはほとんどの企業がスマートファクトリー化すると考えられています。 国内はもちろん、世界各国でもスマートファクトリーに対する[…]
まとめ：デジタル化・DXは国も推し進める製造業に必要な変革
製造業がデジタル化することで、生産体制の安定化や生産性の向上が期待できます。製造や管理を人の代わりにロボットが行うことで、最適化された生産を可能にするからです。
また、デジタル化によって、作業員の負担も軽減されます。安全性も向上されることで、作業員にとっても働きやすい環境になるでしょう。
製造業の応募が少ない理由として、3K（キツイ・汚い・臭い）であることが考えられています。作業環境を楽で綺麗な環境にできれば、自然と募集人数も集まってきます。
ただ、デジタル化には費用やデジタル知識が必要となります。どちらも一長一短で用意できるものではなく、資産に余裕のない企業ほど、デジタル化への移行は難しいです。
とはいえ、工場のデジタル化は、今後必要不可欠な要素といえます。DXやConnected Industriesを目指すため、少しづつでも、デジタル化への移行を実施していきましょう。
