デジタル社会を目指す近年において、様々な業界・場所でデジタル化を見ることができます。一般家庭でもデジタル化の波は浸透しており、デジタル技術はなくてはならない存在といえるでしょう。
製造業界でもデジタル化の波は浸透しており、ラインの自動化や情報のネットワーク管理など、様々な形で製造環境を良くしています。DXやコネクテッド インダストリーズの推進によって今後もデジタル技術は導入され、それを扱うためのデジタル人材が必要になってきます。
デジタル人材とはどのような人のことを指すのか、IT人材との違いや、デジタル人材を確保する方法など、デジタル人材について紹介します。
デジタル化に必要とされるデジタル人材とは?
デジタル人材とは、デジタル技術を活用して、企業や社会に新たな価値(可能性)を提供する存在のことです。デジタル化が進む近年において、デジタル人材の存在は必須となってきます。
そして、デジタル人材は、主に2つのタイプに分けられます。デジタル人材の扱いを的確にするためにも、それぞれの種類について知っておきましょう。
VUCA時代の思考法を持った人材
一つ目のタイプは、「VUCA時代の思考法を持った人材」のことです。主にマーケティングなどを専門とする人であり、デジタル化を目指すために必要なアプローチをしていきます。
VUCA時代とは、1990年代ごろの不安定な時期のことです。VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」を合わせた言葉であり、大まかにまとめると「情勢の変動が激しく、先行きが不明なことから不安定な世情である」ことを意味します。
1990年代ごろはアメリカとロシアの冷戦が終結し、新しい時代へと変化する時期でもありました。ですが、同時に情勢の変動も激しく、経済がどのように変化するかも分からないことから、多くの人や企業がビジネスに不安を抱えていたのです。
近年でも、戦争による物価高騰や新型コロナウイルスの影響など、様々な影響から不安定な状況は続いています。そのような不安定な経済を乗り越えるためにも、全体の流れをシステムとして捉え、様々な視点からアプローチができるシステム思考を持ったデジタル人材の雇用が必要になってきます。
近年、情勢が激しく先が予測付かないことから、VUCA時代とも呼ばれています。VUCAとは、先が読めないことを意味する言葉であり、将来性が不明な時代といった意味があります。 利益を出すためには、物事の先を読み投資をする必要があり[…]
専門的なデジタル知識・能力を有する人材
二つ目のタイプは、「専門的なデジタル知識・能力を有する人材」のことです。デジタル化を進めるためには、デジタル技術を扱う人が必要です。正しい知識や技術がないと、十分にデジタル技術を活用できず、逆にトラブルの原因にもなるでしょう。
第四次産業革命を目指す方針として、様々な政策が推奨・実施されています。企業はもちろん、家庭にもデジタル技術は浸透しており、今後はデジタル技術を中心とした社会になると考えられます。
ライバル企業はもちろん、社会に取り残されないためにも、デジタル技術を扱えるデジタル人材の雇用が重要になってきます。
IT人材、DX人材やデジタルレイバーとの違い
デジタル人材以外にも、IT人材やDX人材、さらにはデジタルレイバーと呼ばれるモノもあります。どれも「IT・デジタル」に関係することから同じに思えますが、何が違うのでしょうか?
IT人材ってどんな人?
IT人材とは、IT技術の活用や導入を実施・検討できる人材のことです。デジタル人材のように細かく内訳もできますが、大まかに「IT技術を扱える人材」のことと思って良いでしょう。
デジタル人材との違いは、「提供」と「運用」の関係です。デジタル人材は「デジタル技術を活用し、新しい価値を提供できる人材」のことであり、IT人材は「IT技術を活用して企画や運用などができる人材」のことを指します。
そもそも、デジタルとITの違いは、「情報」と「目的」の関係です。書類をデータ化することがデジタル化であり、データ化することで書類整理をしやすくすることがIT化といえます。
デジタル人材とIT人材も同じように、デジタル人材が提供した価値を、IT人材が上手く活用する関係というわけです。
ただ、「VUCA時代の思考法を持った人材」のように、活用する人もデジタル人材に含める場合も多いです。そのため、デジタル人材とIT人材に明確な違いはなく、同一視されることはよくあります。
DX人材ってどんな人?
DX人材とは、DX化の推進・実行に必要な人材のことです。DX(Digital Transformation)とは、「IT技術が浸透することで人の生活がより良くなる」仮説のことであり、第四次産業革命を目指す方針の一つとして掲げられています。
DXにはloT技術を始め、様々なデジタル技術が活用されます。正しく扱えることも重要であり、企画や導入をする人はもちろん、操作する作業者も含めて、DX人材といえるでしょう。
デジタルレイバーってどんな人?
デジタルレイバーとは、「人の代わりに機械(ロボット)が働く」概念のことです。「商品を袋詰めするロボット」や「施設案内をするロボット」などを見たことのある人もいると思いますが、それらロボットやシステムがデジタルレイバーに当てはまります。
近年は、少子高齢化などの影響により、人材不足が問題となっています。3K(キツイ・汚い・臭い)のイメージなども相まって、募集をしても応募がこない状態といえるでしょう。
ですが、そのような状況でも、デジタルレイバーを導入すれば足りない労働力を補ってくれます。技術継承も可能となり、将来的な技術力の低下を危惧する心配もありません。
DXを目指すにあたって必要な労働力であり、人材不足に悩む多くの企業から、必要とされる存在です。
近年、少子高齢化などの影響によって、人材不足による労働力低下が深刻化しています。労働者の高齢化に伴う将来性の不安もあることから、製造業界だけではなく、社会全体の課題としても扱われているのです。 デジタルレイバーは、そんな人材不[…]
デジタル人材が必要な理由
デジタル化に伴い必要になるのは分かりますが、なぜデジタル人材が必要になってくるのでしょうか?
必要とされる理由について説明します。
デジタル化が急務とされる人手不足問題の解消
必要とされる理由として、「人手不足の解消」が挙げられます。「デジタルレイバーってどんな人?」でも触れたように、近年は人材不足が深刻化しています。
2021年に総務省が調査した結果によると、社会全体の労働人口は前年と比べ、約8万人も減少したことが発表されました。そのことから、製造業はもちろん、日本全体の労働力が低下していることが分かります。
さらに、新型コロナウイルスによる、働き方改革の影響もあります。密を防ぐための出社人数の制限や、経営不振によるリストラなども重なり、労働力の減少は著しいといえるでしょう。
その結果、労働力不足によって、事業を縮小した企業も少なくはありません。そして、そのような労働力不足を解消するためにもデジタル技術(デジタルレイバー)の導入が必要であり、ひいては、導入と運用ができるデジタル人材が求められています。
製造業DXやコネクテッド インダストリーズの推進
DXやコネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)が、推進されていることも、デジタル人材が必要とされる理由の一つです。デジタル化をするためには、扱うためのデジタル人材を必要とします。
コネクテッド インダストリーズとは、2017年に経済産業省が提唱した国家的な経済戦略のことです。「人・モノ・技術・組織などがつながることにより、新たな価値創出を目指す」といった概念のことであり、ようは「アナログやデジタルなどで区切らず、合わせて考え企画することで新しいことができる」といった意味になります。
ニーズが多様化する近年において、偏った価値だけでは対応がしきれません。より良い製品やサービスを提供するためにも、コネクテッド インダストリーズの考えが重要になってきます。
ただ、必要とされる一方で、技術や知識が追いついていないのが現実です。総務省が2021年に発表した調査結果によると、約6割の企業がIT化やDXへの取り組みを「実施していない、今後も予定なし」と答えており、デジタル人材が育っていないことが伺えます。
近年の製造業は工場の自動化が目指されており、それに伴いデジタル機器の導入も多いです。デジタル人材が不足した状態での導入は、デジタル機器を十分に扱えないだけではなく、セキュリティ面に対しても問題が残るでしょう。
人材不足を解消するためにはデジタル機器の導入が必要不可欠であり、それを扱うためのデジタル人材の確保が必要なのです。
スマートフォンやパソコンなど、電子技術が当たり前となる近年。ドイツでは、「インダストリー4.0」についての政策が発表されました。 インダストリー4.0とは、「第4次産業革命」のことであり、将来に向けた様々なデジタル政策の取り組[…]
デジタル人材を確保する手段の例
デジタル人材はどのように確保すれば良いのか。確保の手段をいくつか紹介します。
OFF-JTや外部研修による人材育成
一つ目の方法は、社内育成による確保です。学習に時間を割いて教育をするOFF-JT(Off-the-Job Training)を行うことで、デジタル技術を学んだデジタル人材を育てます。
たとえ教育のノウハウがない企業であっても、外部研究で学べば習得は可能です。近年はVRを活用した実践的なeラーニングも注目されており、学ぶ方法は教本だけではありません。
しっかりとした教育の仕組みを作ることで、従業員全員が、デジタル人材へと成れるでしょう。
ただ、教育には費用がかかります。OFF-JTでは通常業務を教育に費やすため、利益率も低下します。教育は将来的に必要とはいえ、資金に余裕のない企業にとっては、仕組みを作るのも難しいです。
そんな資金巡りに悩む企業は、「人材開発支援助成金」を活用すると良いです。厚生労働省が支援する助成金のことであり、「労働生産性向上に資する訓練」「専門的な知識及び技能を習得させるための訓練」などに対して、一定の支援金が支給されます。
もちろん、詳しい受給条件はありますが、申請されれば資金的な問題は、ある程度解消されるでしょう。費用の心配がなくなることで教育に専念でき、支援がない状態よりも、デジタル人材を育成しやすくなります。
「予算がなく、利益もギリギリだから教育している暇がない」と思っている企業は、ぜひ人材開発支援助成金を活用してみてください。
- 参考サイト
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」
デジタル人材の採用
二つ目の方法は、デジタル人材を新しく採用することです。自社で育てなくても、既に完成されたデジタル人材を確保すれば問題ありません。教育の必要がなく、即戦力として活躍してくれます。
ただ、そのような人材は、雇用条件の良い大手企業に流れやすいです。いくら募集をしていても、中小企業では中々集まりにくいのが現実といえます。
応募を待っているだけでは、いつまで経っても企業のデジタル化は進まないでしょう。募集をするのと並行して、社内教育も進める必要があります。
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IT企業などの専門家を頼る
三つ目の方法は、外部発注を頼むことです。「餅は餅屋」といった言葉があるように、IT企業などの専門家に依頼します。社内開発にこだわる場合でも、派遣会社を活用すれば、デジタル人材を揃えることが可能です。
新規採用するよりも確保がしやすく、即戦力として活躍してくれるでしょう。
ただ、外注や派遣は費用がかかります。伝達ミスや情報漏洩のリスクなどのデメリットもあり、将来を見据えるなら、自社専属のデジタル人材が必要となってきます。
自社での教育も検討し、仕組みが確立するまでは、専門家に頼ると良いかもしれません。
まとめ:製造業DX、コネクテッド インダストリーズを推進する上で重要な人材
デジタル人材は、今後の企業や社会を支える重要な人材です。デジタル技術が浸透する中、正しく扱えなければ、変化する環境に置いて行かれてしまいます。ライバル企業との差も開き、最終的には倒産する未来も十分に考えられるでしょう。
そのような事態を避けるためにも、デジタル人材の確保が必要になってきます。新人の募集や外部発注はもちろん、自社のノウハウを活かすため、社内教育も必要となります。今後はデジタル技術が中心となっていくことを考えると、デジタル人材が1人2人だけではカバーしきれません。
すぐには無理でも、将来を見据え、デジタル人材の確保や育成を検討してみてください。