QC7つ道具の特性要因図 作り方と使用用途とは?

QC7つ道具の特性要因図の作り方と使用用途とは?原因を明確にするためのフレームワーク

QC7つ道具の特性要因の作り方と使用用途とは?原因を明確にするためのフレームワーク

特性要因図というフレームワークについて知っていますか?「QC7つ道具」における手法の一つであり、特性要因図を活用することで、課題に対する原因究明が分かりやすくなります。

原因究明は、品質改善にとても重要な要素です。品質は企業の信用といっても過言でなく、顧客から信用(利益)を得るためにも、品質改善はとても重要になります。そのためにも、問題が生じた際には、迅速な原因究明が求められるでしょう。

もちろん、特性要因図を使わなくても原因究明は可能です。ですが、文字だけでは分かりにくく、原因究明もしにくいです。内容が分かりにくいと、チーム内での情報共有も上手くいきません。

チーム内で正しい情報共有をするためにも、一目で分かるよう、図を活用した特性要因図が必要となります。

特性要因図とは、どのようなフレームワークなのか。作り方や使用用途などを紹介します。

QC7つ道具の特性要因図とは?

QC7つ道具の特性要因図とは、どのようなものなのか。特性要因図の仕組みについて確認してみましょう。

特性要因図(フィッシュボーン図)とは?

特性要因図(フィッシュボーン図)とは?

特性要因図とは、問題点を洗い出すためのフレームワークのことです。結果に対して要因を加えていくことで、要因の関連性や元となる原因が分かりやすくなります。

大まかな仕組みとしては、土台となる背骨に対して、思いつく要因を付け足していくことで形としていきます。さらに、付け足した要因に対して新たに要因を付け足すことで、より原因を細分化し、対応すべき問題点が見えるようにするわけです。

図にすると分かりますが、背骨に対して要点を付け足す様子は、葉脈や魚の骨のように見えます。そのことから、フィッシュボーン図(魚の骨の図)とも呼ばれています。

また、特性要因図では数値を使わないため、製造業以外でも活用可能です。近年では、営業やサービス業などでも活用されており、多様性に優れた、フレームワークといえるでしょう。

QC7つ道具とは?

QC7つ道具とは、原因究明や問題解決に活用される、有名なフレームワークの事です。特性要因図もQC7つ道具の一つであり、他に、6つのフレームワークが存在します。

QC7つ道具 概要
パレート図 折れ線グラフと棒グラフを使用した図であり、要因の割合を調べられる
グラフ 数字をグラフによって視覚化することで、比較しやすくする
チェックシート 各項目をチェックすることで、不足箇所を視覚化する
ヒストグラム データを区分ごとに棒グラフ化し、ばらつきからエラー個所を特定する
散布図 縦軸と横軸から交差点を取り、全体のばらつきからエラー個所を特定する
管理図 時系列から折れ線グラフを作成し、ふり幅の大きさからエラー個所を特定する

また、上記6つのフレームワークの他に、「層別」を含める場合もあります。

QC7つ道具 概要
層別 各要素を複数のグループに分けて原因究明をする

とはいえ、層別は「フレームワーク」というよりも、原因究明をするための「やり方」であり、基本的には含めず、特性要因図を含む7つの方法が「QC7つ道具」として扱われます。

特性要因図を利用するメリット

特性要因図を活用することで、問題点を整理し、視覚化することで他の人と共有がしやすくなります。

原因究明や問題解決は、基本的に一人で行うものではありません。一人では考えに偏りが生じ、原因究明に行き詰まりやすいからです。様々な視点から原因究明をするためにも、複数人(チームメンバー)で行うのが一般的といえます。

ですが、人それぞれ考えは異なり、ただ問題点を列挙するだけでは全体の把握が難しいです。要因の関連性や重要性が分かりにくく、たとえ文字で補足をしたとしても、まとめ方によっては余計に複雑になってしまうでしょう。

一方で、特性要因図によって視覚化することで、全体が把握しやすくなります。チーム全員が同じ図を参考にするため、認識の違いが生じません。各要因の関連性も分かりやすく、原因究明がしやすくなるのです。

また、しっかりまとまっていれば、原因究明の資料としても残せます。後日似たような問題が生じた際に、資料として残した特性要因図を参考にすることで、迅速な対応が可能となるでしょう。

他にも、書き出すことで新しい要因に気がついたり、改めて工程を見直すことで作業の効率化につながったりなど、様々なメリットが挙げられます。

要因を見つけるための特性要因図の4M

4Mとは、「Man」「Machine」「Method」「Material」からなる4つの項目です。製品の品質管理を行う際に欠かせない要素といわれており、特性要因図を作成する際も、4Mは重要になってきます。

原因究明をする際は、まずは4Mに当てはめて考えてみると、スムーズに作業が進みやすいです。

特性要因図の4M 概要
Man(人) 技術、作業人数など、作業員に難する要素
Machine(設備) 機械、整備など、設備に関する要素
Method(方法) 工程、マニュアルなど、作業工程に関する要素
Material(材料) 調達、在庫状況など、材料・消耗品に関する要素

特性要因図の作成に必要な4つの要素

特性要因図は、主に「背骨」「大骨」「小骨」「孫骨」からなる、4つの要素によって構成されています。

  • 背骨
  • 大骨
  • 小骨
  • 孫骨

それぞれの要素は、どのような内容なのでしょうか?

背骨:解決したいテーマ

背骨は、土台となる要素です。主に「不良品が多い」「納期に間に合わない」といった、解決したいテーマ(課題)が当てはめられます。

また、特性要因図は、1テーマにつき一つの作成です。二つ以上解決したいテーマがある場合は、それぞれ用意してください。

大骨:すぐに思いつく要因

大骨は、課題に対して、すぐに思いつく要因です。「不良品が多い」に対して「検査が甘いため」「機械が不調なため」といったように、考えられる主な原因が当てはまります。

基本的には、インスピレーションで挙げてしまって問題はありません。細かい分析は小骨・孫骨と続いていきますので、深く考えず、要因だと思うことを列挙すると良いです。

小骨:大骨の問題を生み出している個々の要素

小骨は、大骨の元となる要因です。「検査が甘いため」に対して、「技術不足」「マニュアルが作成されていない」といったように、具体的な要因が当てはまります。

つまりは、大骨に対する「なぜ?」であり、課題から大骨、小骨と「なぜなぜ分析」をすることで、より詳しく原因究明ができるわけです。

注意点としては、「対策」は挙げないことです。あくまで、特性要因図は原因究明のフレームワークですので、対策は必要ありません。「技術研修をする」「マニュアルを作成する」といったような小骨は、記載しないでください。

孫骨:小骨の原因をミクロの視点で考察したもの

孫骨は、小骨の元となる要因です。「技術不足」に対して「教育する時間がない」「教育者によって内容がバラバラ」といったように、さらに具体的な要素が当てはまります。

基本的な内容は、小骨の時と同じです。大骨に行った考察を、小骨に対しても行ってください。さらに詳しく問題点を掘り下げることで、より細かい要因が見つけられます。

一応、孫骨よりもさらに原因究明もできますが、あまり細かすぎると作成した図が見にくくなるため、基本的には孫骨より先は行いません。フレームワークでは、見やすい図にすることも重要です。

孫骨(3回)で終了するのは、5回繰り返す「なぜなぜ分析」との相違点といえるでしょう。

特性要因図の作り方

では実際に特性要因図を作成してみましょう。主な作り方は以下の手順となります。

解決したいテーマである背骨を決める

まず始めに、課題とするテーマ(背骨)を決めます。その際、問題点をイメージしやすいよう、具体的に決めると良いです。問題点を明確にすることで、その後の掘り下げがしやすくなります。

図の書き方としては、課題を紙の右端(左端)に記載し、太めの矢印を引いてください。矢印には大骨を追加しますので、ある程度長く引いておきましょう。

イメージとしては、「魚の頭と背骨だけがある」状態を思ってもらえれば良いです。

課題に対して太めの矢印を引いたら、背骨が完成します。

大骨となる要因を見つける

背骨が完成したら、大骨を付け足していきます。テーマから連想する各要因を、背骨の矢印に結んでください。その際、大骨の要因から背骨にかけて矢印を引くことで、要因の関連性が分かりやすくなります。

要因を見つけるポイントは、4Mに当てはめて考えることです。製造におけるほとんどの項目は4Mに当てはめられるため、4Mで分けて考えることで、連想がしやすくなります。すぐに要因が思いつかない場合は、それぞれの項目で関係する内容を挙げていきましょう。

とはいえ、無理に4Mにこだわる必要はありません。あくまでも4Mを参考にすることで列挙しやすくなるだけであり、思い当たる点があれば、無理に活用する必要はないです。

自身のインスピレーションを大切にして、いくつか大骨を付け足してください。

また、図に記載する際は、各要因ごとの間を十分に開けるようにします。大骨の他にも、小骨と孫骨を付け足すため、スペースが狭いと、最終的に図面がごちゃついてしまいます。

後で見返しもしやすいよう、大きめに記載してください。

大骨を掘り下げて小骨を見つける

大骨が完成したら、さらに小骨を付け足していきます。付け足し方は大骨と同じであり、各大骨の要因に対して、矢印を引くことで各要因を関連付けていきます。

要因を付け足すポイントは、「作成に必要な4つの要素」でも触れたように、「なぜなぜ分析」を活用することです。要因に対して「なぜ?」と質問することで、要因の関連が連想しやすくなります。チーム全体で話し合えば、様々な観点からの理由が見つかるでしょう。

また、「対策」を挙げないようにも注意してください。話し合いをしていると、対策と要因が混同しやすくなります。大骨の要因によってはすぐに対策が連想できてしまう場合もありますが、より細かく分析するためにも、要因だけを挙げるようにしてください。

問題を掘り下げ孫骨を見つける

小骨が完成したら、さらに孫骨を付け足します。考え方や書き方は、大骨や小骨と同じです。小骨の要因に対する要因を、小骨の矢印に紐づけてください。

また、どうしても孫骨が見つからない場合は、無理にこじつける必要はありません。小骨で終了しても大丈夫です。

孫骨まで記載したら、特性要因図は完成します。

一番の影響の高い原因を特定する

最後に、今後の対応を決めやすいよう、要因の優先度を決めます。始めに決めたテーマに対して、最も影響力が大きいと思う要因を選んでください。特定した要因には色付きのラインを引いておくと、他の人が見る際に見つけやすくなります。

問題解決を考察する際は、特定した要因をテーマにして、改善策を提案していきましょう。

その他の問題発見に使えるフレームワーク

問題解決には特性要因図以外にもさまざまなフレームワークが存在しますが、他のフレームワークについて見ていきましょう。

ECRS(改善の4原則)

ECRS(Eliminate, Combine, Rearrange, Simplify)は、問題を解決するための4つの原則です。このフレームワークは、既存のプロセスやシステムを見直し、改善の余地がある領域を特定するために使用されます。具体的には、無駄な要素や重複を排除し、合理化や効率化を図ることで問題の解決を促進します。

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KPT

KPTは、問題解決のための3つのステップを示すフレームワークです。Keepは現状の良い点を把握し、Problemでは課題や問題点を洗い出します。そしてTryでは、具体的な改善策や試行錯誤を行います。KPTは、問題を明確化し、アクションプランを策定する際に役立つ手法です。

As is/To be

As is/To beは、現状(As is)と理想的な状態(To be)を比較することで問題点や改善点を明確にするフレームワークです。As isでは現在の状況を客観的に分析し、問題点を把握します。そしてTo beでは、理想的な状態を描き、具体的な改善策を検討します。As is/To beは、目標設定やプロジェクト計画において有用なツールです。

なぜなぜ分析

上述でも少し触れていますが、なぜなぜ分析は問題の根本原因を追求するための手法です。問題が発生した時に「なぜ?」と繰り返し問いかけ、その答えを追求していくことで、問題の本質的な原因を明らかにします。この分析手法は、直感的に思いつく解決策ではなく、根本的な改善策を見つけるために有効です。

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まとめ:結果と要因を結びつけて問題の原因を究明する

特性要因図は、「なぜなぜ分析」を視覚化したフレームワークです。テーマを元に「なぜ」を繰り返し、問題の根底となる原因を追求します。

特性要因図を活用すれば、関連性を整理しながら問題究明ができます。関連性も一目で分かるため、原因究明が苦手な人におすすめです。

また、図でまとまっているため、他の人にも説明がしやすいです。チーム全体で話し合って作るのはもちろん、各自がそれぞれで作成し、持ち合って話し合うのも良いでしょう。

原因究明をする際には、ぜひ特性要因図を活用してみてください。

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