新QC7つ道具「アローダイアグラム法」の解説と活用方法

新QC7つ道具「アローダイアグラム法」の解説と活用方法

新QC7つ道具「アローダイアグラム法」の解説と活用方法

プロジェクトを進める際、重要になるのはスケジュール管理です。スケジュール管理ができていないと、「何を、いつまでに作ればいいのか」がわからなくなってしまいます。プロジェクトを納期に間に合わせるためにも、全体像や作業日程の把握が必要になってきます。

アローダイアグラム法は、そんなスケジュール管理をするのに適したフレームワークです。作業の流れや各工程の日数を図でまとめることで、プロジェクトの全体像をわかりやすくしてくれます。

ほかにも、全体像を分析することで作業効率の改善にもなるなど、品質の改善にも活用可能です。

アローダイアグラム法とはどのようなフレームワークなのか。活用例や手順など、アローダイアグラム法について解説します。

新QC7つ道具の一つ「アローダイアグラム法」

アローダイアグラム法とは、どのようなフレームワークなのか。活用例と合わせて確認してみてください。

アローダイアグラム法とは?

アローダイアグラム法とは?

アローダイアグラム法とは、作業の流れをアローダイアグラムでまとめ、スケジュール・タスク管理をするためのフレームワークです。作業の流れを矢印でつなげていくことで、全体像がわかりやすくなります。

仕事を進める際、特に大切なのはスケジュール管理をすることです。スケジュール管理ができていないと、流れが把握できずに現場は混乱してしまいます。特に複数人が関わる作業だと、その影響は大きくなるでしょう。

そのような事態を防ぐためにも、あらかじめ作業のスケジュールを立てておくことはとても大切です。スケジュールが決まっていれば、迷うことなく作業を進められます。

また、スケジュール通りに進行させるのは難しいことであり、多くの場合、修正が必要になってきます。そのような場合でもスケジュール管理がしっかりしていれば、すぐに修正を加えることも可能です。

計画の全体像を把握し、状況に合わせた管理を可能とするためにも、アローダイアグラム法による管理が求められています。

アローダイアグラム法の製造業での活用例

製造業において、アローダイアグラム法はプロジェクトの日程管理に⽤いられます。プロジェクト開始から終了までの流れを図にまとめることで、誰が見てもプロジェクトの全体像がわかるようにします。

また、作業を見直す際にも活用可能です。「どの工程がボトルネックとなっているか」「平行作業ができる場所はないか」といった分析に活用することで、作業効率の改善につながってくるでしょう。

ほかにも、チームのミーティングや顧客への進捗説明などにも用いることもでき、日程管理だけではなく、幅広い使い方ができます。

新QC7つ道具(N7)とは?

新QC7つ道具とは、言語データを図にまとめ、品質改善を目指すフレームワークのことです。

アローダイアグラム法も新QC7つ道具の一つであり、スケジュール管理などをする際に活用されています。

アローダイアグラム法以外の新QC7つ道具

新QC7つ道具には、アローダイアグラム法以外にも以下のフレームワークがあります。

  • 連関図法:要因を矢印で結ぶことで関連性を明確にする手法
  • 親和図法:親和性のある言語データをまとめ、グループを作ることで問題解決を目指す手法
  • 系統図法:テーマを構成する要因をツリー状に配置し、二次手段・三次手段と遡ることで必要な行動を明確にする手法
  • マトリックス図法:2つの要素を行と列に記入し(表)、関連性を交点にまとめることで問題解決を目指す手法
  • PDPC法:工程ごとの手順と解決案を図式化し、矢印で結ぶことで目標達成を目指す手法
  • マトリックスデータ解析法:2つの要素を縦軸と横軸でまとめ(グラフ)、交点に印を付けていくことで特徴を分析する手法

アローダイアグラム(PERT図)

アローダイアグラムは、作業の流れや日程を矢印で順に追って表した図式のことです。⽶海軍内で開発されたPERT図と仕組みは同じことから、PERT図とも呼ばれています。

「作業A」から「作業B」に矢印を引くことで、「作業Aが終わったら作業Bを行う」といったように、各作業のつながりが一目でわかるようになっています。プロジェクトの始まりから終わりまでをつなげることで、一連の流れが視覚化されるわけです。

スケジュール管理にはほかにもガントチャートが存在しますが、ガントチャートとは記載内容で異なります。ガントチャートでは実施順序や優先作業などは基本的に記載しないため、作業手順がわかりにくい欠点があります。

逆に、アローダイアグラムはフローチャートでまとめるため、ガントチャートよりも詳しい管理は行いません。アローダイアグラムも進捗管理はできますが、各工程内での進捗状況はわかりにくいといえます。

アローダイアグラムは作業の流れを追いやすい図であり、プロジェクトの全体像を把握するのに向いています。

アローダイアグラム法の関連用語

アローダイアグラム法には、いくつかの専門用語が関係してきます。アローダイアグラムを作成する前に、関連用語について確認しておきましょう。

アクティビティとノード

アクティビティとノードは、どちらもネットワーク図を作成する際に使われる表記方法の一つです。アクティビティは「作業(工程)」、ノードは作業の「始点」や「終点」を意味します。

大まかな形としては、「アクティビティ」から次の「アクティビティ」まで「アロー(矢印)」が伸びており、「アクティビティ」と「アロー」の接点のことを「ノード」と呼びます。

最早結合点日程

最早結合点日程とは、最短で作業開始ができる時間のことです。遅延なくプロジェクトが進んだ場合、最早結合点日程で記載されたタイミングでプロジェクトが完了します。

プロジェクトを完遂するうえで、最も望ましい日程といえるでしょう。

最遅結合点日程

最遅結合点日程とは、次の作業に遅延を与えない、ギリギリの開始時間のことです。最遅結合点日程を過ぎると後の工程にも影響するため、最遅結合点日程を過ぎたら、すぐにでも次の作業を始める必要があります。

納期に間に合わせるためのギリギリの時間でもあり、問題なく納品をするためには、最遅結合点日程を守る必要があるでしょう。

余裕日数

余裕日数とは、最遅結合点日程と最早結合点日程の差し引きから求められる、猶予日程のことです。最早結合点日程が10日、最遅結合点日程が14日だとすると、4日間が余裕日数となります。

余裕日数の期間内であれば、作業に遅れが生じても全体の作業日程に影響はありません。

最早結合点日程と最遅結合点日程だけでも日程管理は可能ですが、余裕日数を把握することで、より細かな管理が可能となります。

クリティカルパス

クリティカルパスとは、作業時間が最も最長となる経路のことです。作業Aを通る経路が10日、作業Bを通る経路が15日かかるとしたら、作業Bを通る経路がクリティカルパスとなります。

作業時間が最も最長となる経路であることから、クリティカルパスで遅延が生じると作業全体が遅れてしまいます。

そのため、作業を進める際はクリティカルパスを通る作業を意識し、遅延させないための充分な配慮が必要になってきます。

アローダイアグラム法の具体的な手順

アローダイアグラム法は、以下の手順に沿って進めていきます。

目的を決める

まず始めに、アローダイアグラムを作成する目的(テーマ)を決めます。どの手順やプロジェクトを図にまとめるのかを決めてください。

注意点としては、作業や順序、作成に必要な日数などの見積もりが終わっている作業を選ぶことです。見積もりが不十分だとアローダイアグラムに空白ができてしまい、正しく図にまとめられません。

実行計画を先に話し合い、計画案ができたらアローダイアグラムでまとめてください。

必要な作業工程洗い出しと整理

目的を決めたら、必要な工程(アクティビティ)を洗い出します。完了するまでにどのような作業があるかを列挙し、整理してください。

整理するポイントとしては、作業内容をある程度分けて列挙することです。「部品Aを作成する」といったようにまとめるのではなく、「部品Aの切り出し」「部品Aの研磨」「部品Aの色付け」といったように分けると、より詳しく把握できます。

また、洗い出しに抜けがあっても、後で追加することも可能です。抜けや落ちを気にせず、まずは全体を通して作業を挙げてみてください。

結合点を配置して矢印でつなぐ

工程の整理ができたら、作業工程の結合点(ノード)を矢印(アロー)でつないでいきます。左端に始めの作業を配置し、右に進むように並べてください。

もし、経路が複数あり「次の工程とは直接関係はないものの、別の平行作業が終わらないと次の作業に進めない」場合は、点線でダミー矢印を引きます。「次の工程につながるけど、作業自体はない」ため、流れだけを示すダミー矢印を使うのです。

通常の矢印を使うと「何らかの作業がある」ことを意味してしまいますので、使い分けに注意してください。

また、各工程をカードに書くと並べやすくなります。始めのうちは並べ方もよくわからないと思いますので、移動させやすいよう工程ごとにカード化しておくといいです。

結合点に番号をつける

各工程を矢印で結んだら、各結合点に番号を付けていきます。左端の工程に①番を付け、右に進むにつれ数字を増やしてください。

番号は、作業の流れをわかりやすくするためのものです。そのため、番号の付け方に決まりはありません。

「実際の作業に合わせて番号を付ける」ことが多いですが、「一番上の経路に番号を付けたあと、平行作業に番号を付けていく」人もいます。自分やチームメイトが分かりやすいように付けてください。

各作業の所要日程を記入する

結合点に番号をつけたら、矢印の部分に所要日数を記入します。日数の決め方は目測です。過去の記録や経験から、目測で決めてください。

最早結合点日程を記入する

各作業に所要日数を記入したら、各作業工程の最早結合点日程を求めます。求め方としては、一つ前の最早結合点日程に所要日数を足した日数が、それぞれの最早結合点日程です。求め終わったら、わかりやすいよう結合点の上に記入してください。

また、作業が複数ある場合は、最も時間がかかる経路の所要時間を最早結合点日程とします。

「部品Aの切り出し:5分」「部品Bの研磨:8分」「部品Cの色付け:3分」から同じ工程へ矢印が伸びている場合、「部品Bの研磨:8分」が最も遅く、次の工程の最早結合点日程は8分となります。

最遅結合点日程を記入する

最早結合点日程と同じように、最遅結合点日程も求めていきます。求め方としては、一つ先の最早結合点日程に所要日数を引いた日数が、それぞれの最遅結合点日程です。求め終わったら、比較しやすいよう最早結合点日程の下に記入してください。

また、終点から遡る形で求めていきます。終点の最早結合点日程と最遅結合点日程が同じになるため、終点から逆算します。

全余裕を計算する

最遅結合点日程を記載したら、余裕日数を計算していきます。各作業ごとに最遅結合点日程から最早結合点日程を引いて、余裕日数を割り出してください。

余裕日数を把握しておくことで、トラブルが生じた際に修正がしやすくなります。

クリティカルパスを表示する

最後に、クリティカルパスを確認します。見つけ方は、最早結合点日程と最遅結合点日程が同じ作業を見つけていくだけです。

始点から終点までのクリティカルパスがつながったら、矢印に色を付けるなどわかりやすくしておきましょう。

アローダイアグラム法を作る際のポイント

アローダイアグラム法を作る際は、以下のポイントに注意してください。

結合点を作業と間違えないようにする

アローダイアグラムを作成する際は、結合点(ノード)と作業(アクティビティ)を間違えないようにしてください。どちらも同じように思えますが、結合点は前後の作業とのつながる部分を意味するものであり、作業そのものを指すわけではありません。

結合点に番号を付けることから、「結合点=番号」と勘違いする人も多いです。細かいことではありますが、間違えないよう注意してください。

不要なダミー作業を入れない

アローダイアグラムを作成する際は、ダミー矢印の引きすぎに注意してください。作業の流れを把握するために必要ではありますが、むやみやたらに引きすぎると、実際に行うべき作業がわかりにくくなってしまいます。

全体像が完成したら今一度見直し、不要なダミー矢印がないかをよく確認をしてください。

実際の作業者をメンバーに加えて作成する

アローダイアグラムを作成する際は、実際の作業者も交えて話し合ってください。作業の流れを正しく把握するためには、実際に作業している人の意見を参考にする必要があります。

また、一人だけだと作業の洗い出しに抜けが生じるかもしれません。特に、自己流が強いと、人によって作業内容も変わってきてしまいます。

正しく把握するためにも、可能なら2人以上の参加が望ましいです。

関係者全員で議論しながら作成する

アローダイアグラムを作成する際は、関係者全員で話し合って決めてください。偏見や見逃しなどによるミスを減らすためにも、複数人で作業することが望まれます。

また、複数人で話し合うことで、違った見方もできるようになります。客観的に検討することで、新しいアイデアも生まれてくるでしょう。

実際の作業者も加えつつ、数人がかりで作業を進めてください。

作業手順書・業務フロー図を元に作成する

アローダイアグラムを作成する際は、作業手順書・業務フロー図を元に作成してください。確認しながら作成をすることで、より正確性の高いアローダイアグラムが完成します。

とはいえ、作業手順書や業務フロー図だけでは、わからない部分もあるでしょう。そのため、実際の作業者からの意見も大切になってきます。

作業手順書と作業者の意見のどちらかを参考にするのではなく、両方を参考にしながら作成をしてください。

まとめ:効率よく最短でプロジェクトを進めるツール

アローダイアグラム法は、作業の全体像を把握するためのフレームワークです。各工程を矢印でつなげていくことで、全体の流れが一目でわかるようになります。

スケジュール管理や全体像の把握は、プロジェクトの規模が大きくなるほど、重要性は増していきます。人数が多くなると認識の齟齬も生じるようになり、現状把握も正しく行われません。

関係者全員が正しく全体像や現状を把握できるようにするためにも、アローダイアグラム法で流れをまとめてから、プロジェクトを開始するようにしてください。

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