ビジネス用語として有名な「報連相(ホウ・レン・ソウ)」。新人教育では必ずといっていいほど題材に挙げられ、聞いたことのある人は多いと思います。
ですが、実際の現場では、報連相が守られていないことがよくあります。それにより、トラブルになるケースも少なくはありません。
報連相は、言葉で分かっているだけでは意味がありません。内容を理解し意識することが大切です。
報連相はなぜ必要なのか。目的や重要性などを改めて見直してみましょう。
ビジネスの基本「ホウレンソウ」とは?
報連相(ホウ・レン・ソウ)とは、「報告」「連絡」「相談」を合わせたビジネス用語です。それぞれの頭文字を取って、「報・連・相」と略されています。
報連相は、ビジネスをするうえでどれも大切な用語であり、企業内で徹底することによって、業務を円滑にすすめることができます。
報告・連絡・相談とは、それぞれどのような行動を指すのでしょうか?
報告(ホウ)
報告とは、仕事の進捗状況などを上司へ伝えることです。進捗はもちろん、結果や成果など、業務内容を伝えるために行われます。
指示した者へ指示された者が報告することから、基本的には上下関係がある者同士で使われることが多いです。
連絡(レン)
連絡とは、業務内容を共有することです。業務の変更を伝えるのはもちろん、今後の予定などを、関係者へと発信します。
報告では部下から上司へが一般的でしたが、連絡では同僚同士でも行います。業務を円滑にするためには、情報共有がとても重要です。些細な内容であっても、業務に関係することはすべて共有しましょう。
相談(ソウ)
相談とは、話し合う事です。不明点やトラブルが生じた際、どのように対処したら良いのかなど、分からない事を相談し、アドバイスをもらいます。
相談は、主に知っている人に答えを求める方法です。そのため、多くの場合は上司に相談することが多いといえます。
報連相の目的
報連相には、どのような目的があるのでしょうか?
報告の目的
報告の目的は、進捗や結果を共有するためです。部下だけしか知らないと、何かあった際、上司が対応することができません。情報共有することで現状を把握し、次の行動へつなげられるようになります。
また、進捗を確認する意味でも報告は必要です。すべて部下任せにしていては、現在どのようになっているかが分かりません。情報共有によって進捗を把握することで、作業の流れが分かるようになるでしょう。
いわゆる「業務の見える化」であり、効率良く作業を進めるためには、部下からの報告が必要であり、部下は報告する必要性が生まれます。
連絡の目的
連絡の目的も、情報の共有です。正確な情報を迅速に伝えることが求められます。
情報が間違っていると、作業をしても成果に結びつきません。やり直す結果にもなり、時間と労力のムダにもなります。場合によっては、情報の食い違いによってトラブルが生じ、大事故につながる可能性もゼロではありません。
そのような事態を防ぐためにも、業務に変更をきたす際は、迅速かつ正しく連絡する必要があります。
報告が未来に必要な情報共有だとすると、連絡は今に必要な情報共有ともいえるでしょう。
相談の目的
相談の目的は、問題の解決と個人の成長です。解決方法を知るために相談し、問題解決することで成長できます。
自分で考えるのも大切ですが、それに固執しても正しい答えは生まれません。時間のムダになるだけではなく、間違った答えも出してしまい、結果として、悪い結果や成長をしてしまいます。
そのような事態を防ぐためにも、相談によって間違いを正し、正しい形で成長を促す必要があるでしょう。
また、チームワークを高める意味でも相談の意味があります。報告と連絡はどちらかといえば業務に近く、繰り返し行っても、上司と部下の距離は縮まりません。
ですが、相談によって関係に踏み込めば、相手の考えが分かり距離を縮めることができます。その結果、気心が知れた相手となり、連携を取りやすくなるのです。
仕事以外のことも相談することで、社内環境の改善や働き方改革への糸口にもなってくるでしょう。
報連相の重要性
報連相はなぜ必要とされるのか。その理由について考えてみましょう。
業務効率の向上
一つ目の理由は、業務効率が向上するからです。情報共有によって業務が見える化し、効率良く指示や対応が行えます。進捗が分かるため、今後の業務計画も立てやすいです。
また、迅速な連絡によって、業務内容も素早く変更できます。やり直しの心配がないのはもちろん、変更が素早く行えれば、それだけ業務に集中できます。
近年における製造業は、顧客ニーズの多様化によって多品種少量生産の傾向にあります。ニーズが変化しやすい事から生産計画も変動しやすく、迅速な情報共有を必要としています。
他にも、報告や相談内容から、得意不得意を見分けることもできます。内容が芳しくない場合は苦手、内容に問題が少ないようなら得意と分かり、個人に合わせて仕事内容を振り分けることもできるでしょう。
問題を素早く解決
二つ目の理由は、問題解決が素早くできることです。報告によっていち早く状況を理解し、迅速に問題解決に乗り出せます。
新人によくあることとして、問題の隠蔽が挙げられます。ちょっとしたことなら「別に大丈夫」と自己判断し、結果として上司に伝わらない事は珍しくはありません。
ですが、その問題が後になって響いてくる事があります。時間が経った問題は解決するのに時間がかかり、業務に支障をきたしてしまうでしょう。
報告をしっかり行ってもらえれば、問題が発覚した時点で対処ができます。不安がある場合でも、相談してもらえれば、新人の助けとなれます。
報連相は、企業の不利益を解決するだけではなく、新人のケアをする意味でも必要です。
円滑なコミュニケーションの実現
三つ目の理由は、円滑にコミュニケーションが行えることです。「相談の目的」でも触れたように、話す機会を設けることで社員同士の距離を縮め、連携を取りやすくさせます。
作業効率の向上につながるだけではなく、居心地の良い社風にもなり、従業員は会社に馴染みやすくなるでしょう。
近年は、どの業種も人手不足が深刻化しており、新人の離職は、何としても避けたいところです。新人の不満や不安を解消させてあげるためにも、コミュニケーションの取れた人間関係の構築が必要となります。
報連相の「おひたし」とは?
報連相に対する心構えとして、「おひたし」というものもあります。
「おひたし」とは、「怒らない」「否定しない」「助ける」「指示する」からなる言葉であり、報連相を行う部下に対して、上司が取るべき理想的な態度のことです。部下との関係を築くためには、部下の事を想う必要があります。
上司と部下の関係は、「責任を取る者」と「実行する者」の関係です。部下の行動に対して怒ったり否定するようでは、委縮して何もできなくなってしまうでしょう。ピンチの時には助けず何事も放置気味だと、部下は上司に期待しなくなってしまいます。
失敗は誰にでもあることです。特に、新人にとって失敗は日常茶飯事といえます。結果がそぐわないからといって怒ったり否定したりせず、正しく指示し助けとなることが、信頼関係を築くのにとても大切です。
ただし、必ずしも「おひたし」が正しいわけではありません。どのようなことも怒らず否定しないようだと、部下は「何しても大丈夫」と勘違いしてしまいます。常に助けや指示を期待されると、部下の成長を遅らせてしまうでしょう。
基本的には「おひたし」を心がけていれば問題ありませんが、度が過ぎている、一向に成長しないようなら、怒ったり見放したりすることも必要といえます。
ビジネスにおいての類するその他の語呂合わせ
「おひたし」以外にも、語呂合わせにしたビジネス用語は存在します。
どれも大切な事ですので、合わせて覚えておいてください。
「こまつな」とは?
「こまつな」とは、「困ったら」「使える人に」「投げる」といった意味のビジネス用語です。要約すると、「困った時は分かる人に助けてもらう」ことを指します。
分からない事を、無理に頑張っても良いことはありません。失敗のリスクはもちろん、結果が出ないことから時間のムダにもなります。そのようなムダな努力をしないためにも、専門家の力を借りることはとても重要です。
もちろん、助けてもらうだけではありません。逆に相手が困っているようなら、自分が力となってあげます。専門的な力がなくとも、マンパワーが増えることで助かる場面は多いです。
たとえ自分が力にならずとも、助けとなる人材を紹介したり派遣したりすることでも、困っている人の助けとなるでしょう。
持ちつ持たれつな関係を作ることで、効率的に作業が進められます。
「きくな」とは?
「きくな」とは、「気にせず休み」「苦しい時は言い」「なるべく無理をしない」といった意味のビジネス用語です。要約すると、「苦しい時は気にせず無理をしない」ことを指します。
日本人は、「耐え忍ぶ」ことを美徳とする人種です。「辛いことでも耐え忍び頑張ることが成長につながる」と昔から考えられており、今も社会に根付いています。
そのため、嫌なことや辛いことがあっても、中々言い出すことはできません。その結果、精神的なストレスを感じ、うつ病などの精神疾患を発症してしまいます。
ストレスが原因で、離職する人も少なくはありません。中には自殺を決意する人もいるほどで、ストレスの蓄積は社会問題としても挙げられています。
そのような事態を防ぐためにも、「きくな」を意識した教育や取り組みが必要であり、さらには「おひたし」や「こまつな」などによる、気軽に相談できる環境を整えることが大切といえます。
「カクレンボウ」とは?
「カクレンボウ」とは、「確認」「連絡」「報告」を合わせた意味のビジネス用語です。「連絡」「報告」は報連相と同じであり、内容も報連相と似ています。
確認と報告の違いは、自主性の違いです。報告の場合は「ただ報告をする」だけですが、確認の場合は「内容の判断を尋ねる」事になります。
報告だと「とりあえず報告すれば良いや」と受動的になりがちですが、確認にすることで考えるようになり、部下の成長を促せるます。上司としても教育や指示につなげられるようになり、より良い結果を生み出せるでしょう。
そのことから、「カクレンボウ」は報連相の上位互換に近い考え方ができます。いつまでも、上司の指示に従っているだけでは部下は成長しません。報連相で終わらせず、仕事に慣れてきたら、「カクレンボウ」に変えていきましょう。
「ザッソウ」とは?
「ザッソウ」とは、「雑談」「相談」を合わせた意味のビジネス用語です。堅苦しい「連絡」「報告」の代わりに、気軽な付き合いとなる「雑談」を採用しています。
「きくな」でも触れたように、互いに立場が違うと、中々相談がしにくいものです。上司は「気軽に相談して」と伝えても、委縮して相談できない人は少なくありません。
そのため、上司に対して委縮しないよう、普段から雑談を挟むようにします。何気ない会話によって互いの距離を縮め、気軽に相談できる関係にするわけです。
互いに信頼関係が築ければ、「きくな」や「カクレンボウ」も実施しやすくなります。上司となる立場の人は、「ザッソウ」を意識してみてください。
まとめ:報連相(ホウレンソウ)は情報共有に必要不可欠な要素
報連相は、情報共有に必要不可欠な要素です。進捗や結果を知ることで、今後の対応や問題の解決がしやすくなります。迅速な対応により、作業効率の向上や生産性を高める結果にもつながるでしょう。
また、コミュニケーションを円滑にするためにも、報連相は大切です。連携による作業効率の向上はもちろん、精神的なケアにもつながります。
報連相は、ただの業務連絡を目的としたものではありません。情報共有の重要性を理解し、積極的に取り組むようにしてください。
他にも、「おひたし」や「カクレンボウ」など、語呂合わせでまとめたビジネス用語はいろいろあります。すべてを意識するのは難しいですが、ぜひ他の用語にも取り組んでみてください。