日本で生まれた「5S活動」は、いまや海外でも行なわれている5S活動は、効率的な作業環境の確立や生産性の向上に重要な役割を果たしています。
この記事では、5S活動が海外でどのように展開されているかに焦点を当て、海外企業での取り組みや成功事例を探ります。また、5Sの英語表記や安全性に関する重要性についても解説し、読者の理解を深めます。
海外での5S活動がどのように展開され、なぜ重要なのかを理解することで、読者は自らの職場や環境での改善活動に役立つ知識を得ることができるでしょう。
5Sとは
5Sはそれぞれ「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「躾(Shitsuke)」とそれぞれの日本語読みをアルファベット表記にした形で表現されます。
5Sの重要性とカイゼンにおける5S
5S活動はカイゼン活動を推進していく上での重要な要素といえます。カイゼン活動における5S活動の重要性についてを説明していきます。
カイゼンとは
カイゼンとは、主に工場など製造業の現場で行なわれている作業効率や安全性の確保を見直す活動のことで、漢字表記での「改善」意味合いを分けて使われます。
改善とカイゼンの違いとして、「改善」が「悪い状態を良い状態に変えること」を意味するのに対して、「カイゼン」は「良い状態に変えたその1回に満足せずに、自ら問題を発見して改善し続けることで、より良い状態へ変化し続けること」を意味しています。
カイゼンが世界的な知名度を持つきっかけとなったのがトヨタ式カイゼンと言われています。
カイゼンの理念は、小さな改善が積み重なることで大きな変化が生まれるという考え方に基づいており、持続的な改善を通じて、品質の向上や生産性の向上を実現し、組織全体の競争力を高めることがカイゼンの目的です。重要なのは一度だけの取り組みではなく、日常的な習慣として改善を行うことです。カイゼンは組織文化の一部として定着させることで、持続的な成果をもたらします。
カイゼンにおける5Sの重要性
そんなカイゼンの中でも、5Sは重要な概念として位置付けられており、カイゼンにおける5Sの目的は、生産現場やオフィスの改善を通じて無駄を減らし、品質向上と生産性の向上を実現するなどの仕事の効率化を追求するカイゼン活動において、それらを円滑に促進していくため役割を持っているといえます。
整理整頓によって作業の効率化、清掃清潔によって安全性の確保、しつけによって習慣化を促進し、組織全体のカイゼン活動を支えます。5Sは単なる作業場の整備だけでなく、組織文化の一部として浸透させることで、持続的な改善を実現していくことでカイゼンに繋がっていきます。
5Sとカイゼンの英語表記
5Sはそれぞれ「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「躾(Shitsuke)」とそれぞれの日本語読みをアルファベット表記にした形で表現されます。しかし英語表記としては、これらのアルファベット表記ではなく、それぞれを意味する英文や英単語が頭文字「S」の表記で表現されています。
- Sort(整理)
- Set in Order / Set(整頓)
- Shine(清掃)
- Standardize(清潔)
- Sustain / Sustaining the Discipline(躾)
5Sの英語表記についてそれぞれ紹介していきます。
Sort(整理)
Sort(整理)は、5S活動における最初のステップで、「ムダ」を取り除くために分類するステップです。
「ムダ」というのは「必要のないもの」「処分するもの」などと言い換えると分かりやすいかもしれません。「ムダを取り除く=必要のないものを処分する」ために、まずは何が「必要のないもの」なのかを分類していく必要があります。そのため、Sort(整理)は最初のステップとなるのです。
作業する現場において「必要なもの」を分類するのは比較的簡単かもしれませんが、いざ「使わないもの」、「必要のないもの」を分類しようとすると難しかったりして、整理が滞ってしまい、いらないもので現場が埋め尽くされてしまうこともあります。
簡単なルールとして「最後に使用したのはいつか?」「この現場で使う必要があるか?」「他の現場で必要か?」という問いかけを用意しておくと、整理が捗るようになります。
「Sort(整理)」では、ムダを取り除いていく準備として重要な最初のステップといえます。
Set in Order(整頓)
5S活動における2番目のステップであるSet in Order(整頓)は、整理したものを使いやすい状態にするステップです。
Sort(整理)のステップを終えて整理されたものは「よく使うもの」「すぐには使わないもの」「不要なもの」などのように分類された状態になっています。特に「不要なもの」や「処分するもの」が整理されているほど、Set in Order(整頓)がスムーズかつ簡単に実行できるようになります。
Set in Order(整頓)の目的は、整理したモノを探したり、取りに行く過程で行ったり来たりするムダな時間を省くこととそのムダな行動で発生する待ち時間によって生じる遅れを防ぐことの2つがあります。
「よく使うもの」はすぐ取り出せる場所に、「すぐには使わないもの」は分かりやすい場所に、といった具合にすべてのものがそれぞれふさわしい場所や定位置に配置したり、片付けられるように準備することが重要になります。
Shine(清掃)
5S活動における3番目のステップShine(清掃)は、掃除と点検をするステップです。このShine(清掃)までを含んだ3つのステップは「3S活動」としても知られています。
このタイミングでShine(清掃)を実施するのは、予防保全や定期的なメンテナンスの実施においても最適なタイミングだからと言われています。
作業現場全体や機器・道具などを綺麗に保つように心がけることで、普段と異なる点があれば、この時点で気づくことができ、問題が深刻化してしまう前に対処することも可能となります。対処ができれば、最終的に問題が深刻化してしまってから対応するよりも、時間や費用などの節約につながるというわけです。
また、この作業は全員が参加して実施することが良いとされていて、自身が働く現場への愛着が増加し、機器などのあるべき姿に慣れ親しむことで違和感にも早期に気づきやすくなるという利点があります。
ここまでのステップも同様ですが、カイゼンを意識して一度綺麗にしただけで終わらず、綺麗にし続けることが重要です。
Standardize(清潔)
4つ目のステップであるStandardize(清潔)は、3S活動によって得られる効果を維持していくステップです。
上述していますが、3S活動も5S活動も一度で終わっては意味がありません。一度実施したことを維持した上で、問題を発見して改善し続けていくことが大事です。
そして、Standardize(清潔)が4番目のステップであることも重要で、何を繰り返していくか分からなければ、維持していくことはできないため、まず3S活動としてものごとを整理・整頓・点検をすることが重要となります。
整理をしていなければ、不要なものや処分するものまで整頓・点検してしまってムダな作業が多くなってしまい、整頓されていなければ、何がどこにあるのか探し出すことにムダな時間や労力をかけてしまい、点検がされなければ、問題が起こってからの事後対応ばかりすることになってしまいます。
さらにムダに多くなってしまった基準やルールは繰り返すだけでそのサイクルが終わってしまい、気づいたらそれしかできないという状況に陥ってしまう可能性もあります。
そのためStandardize(清潔)のステップでは、ここまでの3S活動をより分かりやすい形で維持していくことも重要な要素になってきます。
Sustain(躾)
最後のステップであるSustain(躾)は、ここまでのステップを持続させるための仕組みづくりをするステップです。
4つ目のStandardize(清潔)のステップで形が定まった基準やルールを継続して実施していくためには、決められたことを決められたとおりに実行できるように習慣づけることが必要となります。
ここでは一人ひとりが習慣づけて全員が実施していくことが重要になってきます。現場の作業員だけでなく、経営陣や管理職の人たちも一緒に参画することが重要で、上の人たちが取り組んでいることが周知・徹底されると、チームも取り組むようになります。逆に上の人たちのやる気が無かったり、サボったりすると下の人たちもそれに追随してしまい、仕組みが出来上がりません。
Sustain(躾)のステップで5S活動を持続させるために、習慣づけることができるように徹底した仕組みづくりとその運用ルールを守って実施していくが大事になります。
第6のSである「作法(Sahou)」と「安全(Safety)」
5S活動として紹介したSから始まる5つのステップですが、「2S」「3S」「4S」「5S」と順にその要素を増やして発展してきた経緯があります。最近では「6S」や「7S」などといった他の要素を5Sに加えたフレームワークも広まっています。「6S」と呼ばれるものの中から「作法(Sahou)」と「安全(Safety)」について紹介します。
日本電産の「作法(Sahou)」
日本電産(現:ニデック株式会社)の永守重信社長は「経営不振に陥った会社は「3Q6S」で再建可能」という哲学の中で「6S」を使っています。
「3Q6S」とはニデック株式会社社員の行動規範として推進されている考え方で、3つのQ(Quality)の「良い社員(Quality)、良い会社(Quality Company)、良い製品(Quality Products)」と5Sである「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」に「作法」に作法を加えた6Sを合わせたものだそうです。
「3Q6S」については、経営ノウハウとしてニデック株式会社およびNIDECグループでの社外秘として扱われています。
「安全(Safety)」
次に「安全(Safety)」についてです。
主にサービス業において快適に過ごすためのサービス提供をするために安心とともに安全を保障する活動が望まれています。ちなみに「安心(Smile)」とする6Sもあるそうです。
製造業においては、工場や現場などではどうしても小さい危険から大きな危険まで潜んでいます。ヒヤリハットの法則(ハインリッヒの法則)と呼ばれる小さい事故から重大な事故の発生比率を示したリスクマネジメントの考え方も重要視されています。
「安全(Safety)」については、5S活動やトヨタの生産方式やカイゼンなどを研究して海外で体系化されたリーン生産方式を適切に導入することで、結果的に安全が確保されるという考え方があります。ほかにもリーン生産方式の導入とは別の考え方として、「安全(Safety)」について意識する取り組みもあります。
5S活動においても、例えば「清掃(Seisou)」をサボったりして、床や机の上が散らかっていたりすると、気づかないうちに足を引っかけて転んでしまったり、机の上の釘に気づかず手をケガしてしまったり、というような大きな事故にもつながる要因を作り出してしまいます。
作業員の安全を確保するためにも5S活動の徹底した実施や「安全(Safety)」について考えることも大事だと言えます。
まとめ:5Sは海外でも取り組まれている
5S活動は海外でも取り組まれています。カイゼンが「KAIZEN」と呼ばれたり、5Sについても「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「躾(Shitsuke)」という日本語読みのアルファベット表記ではなく、海外進出に伴って英語での言い回しが出てきています。
- Sort(整理)
- Set in Order / Set(整頓)
- Shine(清掃)
- Standardize(清潔)
- Sustain / Sustaining the Discipline(躾)
どれも頭文字を「S」で統一した上で意味を通されているのはうまくできていると驚くものです。
トヨタ生産方式やカイゼンなどと合わせて研究して体系化されたリーン生産方式と呼ばれる海外で生まれた生産方式にも5Sの考え方は盛り込まれているほど、重要なものになっています。