PDSAサイクルとは?PDCAサイクルから進化した業務改善手法

PDSAサイクルとは?PDCAサイクルから進化した業務改善手法

PDSAサイクルとは?PDCAサイクルから進化した業務改善手法

業務改善を目的としたPDCAサイクル。昔から続く有名なフレームワークであり、実施する企業も少なくはありません。

そんなPDCAサイクルですが、近年では「C」を「S」に代えた、PDSAサイクルが注目されています。全体的な流れは同じですが、「Check(評価)」では企業の成長や顧客満足の向上にはつながらず、「Study(研究)」が求められているからです。

時代に合っていないことから「PDCAサイクルはもう古い」といった考えも広まっており、時代に合わせるためにも新しいフレームワークを取り入れる必要があるでしょう。

PDSAサイクルとはどのようなサイクルなのか。PDCAサイクルとの違いなどを紹介します。

PDSAとは?

PDSAサイクルとは?

PDSAとは、継続的な生産を可能にするための業務改善手法のことを指します。それぞれ「Plan (計画)」「Do(実施)」「Study(研究)」「Act(改善)」の頭文字を取っており、ステップを踏んで取り組むことで、効率的な改善を目指すわけです。

また、PDSAは継続的な生産を目的としており、サイクルも繰り返して行われます。サイクルを繰り返すごとに新しい問題点が改善され、より良い製造業務を目指し続けます。

近年はニーズが多様化しており、求める製品は常に同じではありません。状況に合わせて製品や生産体制を変える必要があり、そのためにも、継続的な品質管理を可能とするPDSAサイクルが求められているのです。

PDSAサイクルを構成する4要素

PDSAサイクルは、以下の手順によって行なわれます。

  1. Plan(計画)
  2. Do(実施)
  3. Study(研究)
  4. Act(改善)

Plan(計画)

ステップ1は、目標を見据えた計画の立案です。「どのように改善するか」「どのようにしたいか」を明確にし、それに向けた改善計画を組み立てます。

計画を立てる際は、具体的な数値などを用いることでイメージしやすくなります。5W2H(誰が・いつ・どこで・なにを・なぜ・どのように・どうしたか)などを意識すると、最終目標までのつながりが分かりやすく、計画も組み立てやすいです。

また、当然ですが現実的であることが大前提となります。人員やコストなども配慮しながら、無理のない範囲で計画を組み立てましょう。

Do(実施)

ステップ2は、計画の実施です。計画案に沿って、改善作業を進めてください。

また、ただ計画を実行するだけではなく、作業内容の記録も取ります。次のステップで計画の分析を行なうため、作業記録が必要になるからです。

結果についての記録はもちろん、活動日数や設備の稼働時間など、途中の記録も重要になってきます。研究の精度を上げるためにも、細かい内容も含め、すべて記録してください。

ほかにも、実施するうえで難しかった点や危険だった点など、従業員から見た評価もあると、違った視点からの考察に活かすことができます。

Study(研究)

ステップ3は、実施内容についての研究です。実施記録をもとに、結果を分析します。「悪かった点はどこか」「どのように変化したか」などを評価し、考察や話し合った結果をまとめてください。

特に、計画が失敗に終わった際には、原因究明がとても重要になってきます。原因が不明なままでは、サイクルを繰り返しても同じミスをしてしまうでしょう。品質改善を目的とした製造業の「QC7つ道具」などを活用し、原因究明に努めてください。

注意点としては、計画が成功した場合でも、そこで終わらせないことです。たとえ成功したとしても、何が成功の決め手か分からないと、次に活かすことができません。成功した場合でも、失敗した場合と同様に理由を考える必要があります。

様々な観点から分析や考察をして、不明な点をなくすようにしましょう。

Act(改善)

ステップ4は、計画の改善です。分析や研究をした内容をもとに、新しい作業計画案を立案します。そして再びステップ2の「Do」から始め、サイクルを繰り返していきます。

もちろん、評価した結果、改善案が根本から間違っていた可能性も十分あり得るでしょう。その場合は、ステップ1の「Plan」から見直してみてください。

また、計画が成功した場合でも改善できることはたくさんあります。コストの削減や作業時間の短縮など、改善できれば業務内容をより良くできるでしょう。良かった点をさらに強化したりなど、成功した場合でも改善策を考えてみてください。

時代が変わればニーズが変わるように、改善に終わりはありません。顧客満足度の向上を目指すためにも、PDSAサイクルを続けていくことが大切です。

PDCAサイクルとPDSAサイクルとの違い

PDSAサイクルの前身として、PDCAサイクルといったものが存在します。PDCAサイクルからPDSAサイクルに移行するにあたって、どのように変化したのでしょうか?

PDCAサイクルとは?

PDCAサイクルとは、アメリカの統計学者であるエドワーズ・デミング博士が端を発し、後に東京大学の石川馨教授によって提訴された、フレームワークのことです。頭文字はそれぞれ「Plan(計画)」「Do(実施)」「Check(評価)」「Act(改善)」を意味し、サイクルを回すことで業務の遂行と品質向上を目指します。

PDSAの前身となるフレームワークであり、サイクルの手順もほとんど同じです。「計画を立て、実行し、実行内容を評価することで、改善」します。

PDCAサイクルの考えは、製造業以外でも活用可能な考えです。そのため、提唱した当時は、製造業を問わず多くの企業が活用したといえるでしょう。近年でも、PDCAサイクルを活用する企業は少なくありません。

知られていないが歴史が古いPDSAサイクル

PDCAサイクルの活用が広がるなか、1994年に発表されたデミング博士の著書によって、新しくPDSAサイクルが提唱されます。

「Check(評価)」の代わりに「Study(研究)」が採用された理由は、評価では対処療法的な取り組みになりがちだからです。実行した内容の評価だけでは、根本的な問題の解決や新しい発想の開拓は難しいといえるでしょう。

そのため、ただ評価するだけではなく、評価したうえで分析や考察することが求められます。根本的な原因が分かればより効果的な改善策が立案でき、ひいては顧客満足度の向上につながります。

近年は、グローバル化やデジタル化の影響により、市場に参入する企業も増えてきています。顧客が企業を選ぶ時代でもあり、顧客に寄り添わない企業は生き残るのが難しいです。

PDCAサイクルでも品質改善はできますが、より効果的に実施するためにはPDSAサイクルによる考え方が望まれます。

PDSAサイクルは「S」が重要

上記の内容からも判断できるように、PDSAサイクルの中でも、特に重要なのが「Study(研究)」についてです。研究の内容結果により、次のステップである改善の精度が大きく変わってきます。

そのため、多少時間を割いてでも、研究を重視することが大切です。一人で研究を進めると、考えが偏りやすくなります。チームで話し合うなどをして、様々な考えや可能性を追及してください。

PDCAサイクルが古いと言われる理由

提唱当時から活用されてきたPDCAサイクルですが、近年ではPDCAサイクルの考えは古いといった見方もされています。近年はニーズの変動が激しいため、PDCAサイクルでは改善が間に合わないからです。

PDCAサイクルのメリットは、継続して改善がしやすいことです。経験から学びやすく、繰り返すことで着実に改善が行なえます。ですがその一方で、改善するためには最後までサイクルをこなす必要があり、改善するまでが遅いデメリットもあります。

近年はニーズの変動が激しい時代でもあり、改善までのプロセスが遅いと変化に対応しきれません。ライバル企業に先を行かれてしまい、販売競争に負けてしまいます。

これは、PDSAサイクルでも同じことがいえます。PDCAサイクルより顧客のニーズに合わせられますが、サイクルが遅いことに変わりありません。そのような理由から、近年では「PDCAサイクルは時代遅れ」ともいわれているのです。

そのため、近年はスピードを重視したOODAループやPDRサイクルなどが注目されています。実行や改善までの時間が短いことから、激動するニーズへの対応も可能です。決してPDCA(PDSA)サイクルが不要なわけではありませんが、変動が激しい近年においては、スピード感のあるフレームワークが必要とされています。

PDSAサイクルを進める際の注意点

PDSAサイクルを進める際は、形骸化しないよう注意してください。正確にいえばPDCAサイクルの問題ではありますが、サイクルを回すことを目的としてしまうと、PDSAサイクルを行なう意味がなくなってしまいます。

なんとなくで行わないためにも、PDSAサイクルの意味を理解し、各ステップのつながりを意識しながら取り組んでください。

また、内容は具体的に決めてください。曖昧な決め方では評価ができず、具体的な改善策が立てにくくなります。数値を用いるなどをして、客観的に分析しやすくしましょう。

PDSAサイクル、PDCAサイクルに変わる業務改善手法

PDSAサイクルやPDCAサイクルのほかにも、様々なフレームワークが存在します。それぞれ目的と特徴が違うため、状況に合わせて使い分けてみてください。

  • OODAループ
  • PDRサイクル
  • STPDサイクル
  • DCAPサイクル

OODAループ

OODAループとは、軍事戦略家であるジョン・ボイド氏によって提唱された意思決定方法です。それぞれの頭文字は「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(行動)」を意味します。

OODAループの特徴は、状況に合わせて臨機応変に対応できることです。状況に合わせて流れを変えていけるため、近年の激動するニーズに合わせやすくなっています。分析から実行までもスピーディに行なえ、早さを求める現場で活躍できます。

一方で、長期的な業務改善には向きません。PDSAサイクルのように研究・改善のステップがないため、ループを繰り返しても成果がでにくいです。

そのため、PDSAサイクルとは長期と短期で使い分けることが可能です。長期的な業務改善にはPDSAサイクル、早さを求める意思決定にはOODAループと、状況に合わせて使い分けましょう。

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PDRサイクル

PDRサイクルは、ハーバード・ビジネス・スクールに所属するリンダ・ヒル教授が提唱したフレームワークです。それぞれの頭文字は「Prep(準備)」「Do(実行)」「Review(評価)」を意味します。

PDRサイクルの特徴は、サイクルを高速で回せることです。PDSAサイクルと比べてステップが一つ少なく、その分早くサイクルが回ります。

また、計画の代わりに準備といったように、PDRサイクルでは深く計画を立てません。最後のステップが評価が終わっていることからみても、分析や考察はほとんど行なわないといえるでしょう。

そのため、PDRサイクルは単発的なプロジェクトに向いています。「とりあえずやってみよう」といった場合に活用しやすく、最速で試しやすいです。

STPDサイクル

STPDサイクルは、ソニー株式会社常務取締役を勤めた小林茂氏が提唱するフレームワークです。それぞれの頭文字は「See(観察)」「Think(考察)」「Plan(計画)」「Do(行動実行)」を意味します。

PDSAサイクルと内容は似ていますが、STPDサイクルでは始めに観察から入ります。客観的に現状把握を行なうことで課題を見つけ、どのようにしたいかを考えてから計画を練っていくのです。それにより、問題点をピンポイントで課題にでき、精度の高い改善計画が立てられます。

DCAPサイクル

DCAPサイクルは、PDCAサイクルの順番を変えたフレームワークです。それぞれの意味はPDCAサイクルと同じであり、「Do(実施)」「Check(評価)」「Act(改善)」「Plan(計画)」を意味します。

実施から始めることで、行動までの時間が早くなるのが特徴です。PDCAサイクルのデメリットだった遅さを改善できるのはもちろん、状況の変化にも対応しやすくなります。考え方としては行動を重視したOODAループやPDRサイクルと似ており、近年の状況に合わせたフレームワークともいえるでしょう。

まとめ:PDSAサイクルはPDCAサイクルの進化系

PDSAサイクルは、PDCAサイクルの次を担うフレームワークです。評価から研究に代わることで、より効果的な業務改善ができるようになります。

PDCAサイクルの代わりに注目されているのも、顧客満足度の向上を目指すためです。品質の向上はもちろん、需要に合わせて改善することで、顧客からの信用を得ることができるでしょう。

生産管理システムを始め、ITシステムを活用すれば、より効率よくサイクルが進められます。サイクルの遅さが気になる企業は、ITシステムの導入を検討してみてください。

ほかにも、OODAループやSTPDサイクルなど、意思決定を目的としたフレームワークも存在します。迅速にプロジェクトが進められるのが特徴であり、近年の製品開発に適したフレームワークです。PDSAサイクルとは目的が異なりますので、状況に合わせて使い分けてみてください。

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