KPT法とは?アジャイルやスクラムの振り返りの手法

KPT法とは?アジャイルやスクラムの振り返りの手法

KPT法とは?アジャイルやスクラムの振り返りの手法

KPT法とは、現状を見直し改善を目的としたフレームワークのことです。元々はエンジニアの間で活用されていた手法ですが、近年では他の業種にも活用可能なことから、さまざまな業界からも注目されてきています。

「現状を振り返って改善点を洗い出す」ことは、品質や生産効率の向上を目指すうえで欠かせない要素です。より良い生産体制にするためにも、KPT法について知っておく必要があるでしょう。

KPT法とはどのようなフレームワークなのか。振り返りの仕組みや導入によるメリットなど、KPT法の活用方法について紹介します。

KPT法とは?

KPT法とは?

KPT法とは、「Keep」「Problem」「Try」の3要素からなる、振り返り式のフレームワークのことです。プロジェクトや工程を完遂したあと改めて行なった内容を振り返り、今後の成長につながるよう、改善点や課題などを模索します。読み方は「ケプトほう」や「けーぴーてぃーほう」と読みます。

KPT法は、もともとアジャイルやスクラムと呼ばれるシステム開発に活用されていました。どちらも「短いサイクルを繰り返す」ことで正確性や最終的な時間短縮を目指すためのフレームワークであり、それらの実施を、KPT法を活用して振り返り評価していたのです。

企業の成長を促すためには、出来事を見直すことはとても大切です。成功した結果に満足してしまうと、そこで成長が終わってしまいます。生産数や生産効率の向上を目指すためには、完遂した結果に満足はせず、より良くなるよう改善を目指す必要があるでしょう。

特に、近年はIT技術の発展が目覚ましく、新しい技術や手法が取り入れられています。習慣化してきた工程も、改めて見直すことで改善されることはよくあります。ニーズの多様化によって多品種少量生産が望まれる近年において、見直すことはとても重要なのです。

KPT法の3つの要素とは?

KPT法とはどのようなフレームワークなのか。それぞれの要素について確認してみましょう。

  • Keep:上手くいった要素や評価が上がった要素などの次回以降も続けていくこと
  • Problem:上手くいかなかった要素や事故になった要素などを洗い出し、次回に向けた課題とすること
  • Try:KeepとProblemの内容をもとに、実施していく内容をまとめること

Keep

Keepは、できたことを維持する項目です。上手くいった要素や評価が上がった要素など、次回も続けて行なうべき要素を抽出します。

KPT法は「内容を振り返って改良する」ことを目的としますが、なにもすべてを変えるわけではありません。良かった点は改良する必要がなく、次回も活かすことで今回以上の結果にできます。

評価できる点は評価することも、KPT法では必要です。

全体の評価だけではなく、「どのような技術が身についたか」「他部門との連携は潤沢だったか」など、個人や製造以外の部分も合わせて洗い出してましょう。

Problem

Problemは、問題点を洗い出す項目です。上手くいかなかった要素や事故になった要素などを洗い出し、次回に向けた課題とします。

Problemを抽出する際は、問題点を具体的にすることが大切です。「生産開始が遅かった」と表記するよりも、「部品の取り付けが遅かった」と表記した方が、課題につなげやすくなります。

また、客観的に見ることも大切です。自分の視点からでは分からない問題点もありますので、チーム内で意見交換しながら進めると良いでしょう。

Try

Tryは、今後挑戦する内容の項目です。KeepとProblemの内容をもとに、次回行なう内容をまとめます。

良かった点は(Keep)は「どのように組み込むのか」を考え、悪かった点(Problem)は「どうすれば解決するのか」を考えていきましょう。

また、内容は具体的なものにしてください。「気を付ける」「意識する」では、気持ち次第で守られなくなります。「点検のチェック表を取り入れる」「設備の配置を変えて動線を短くする」といったように、行動に移せる施策を立てると結果が出やすいです。

KPT法の基本的な理解

なぜ、KPT法が近年注目されているのか。KPT法が考察された理由や目的なども、知っておきましょう。

KPT法の定義とその背景

KPT法は、元々Alistair Cockburn(アリスター・コーバーン)氏が考案したといわれています。

Alistair Cockburn氏は「Reflection Workshop」の中で以下の3要素が重要だと提唱し、その3要素がKPT法の原型となります。

  • What we should keep.(続けるべきこと)
  • Where we are having ongoing problems. (抱えている問題)
  • What we want to try in the next time period. (次にトライしたいこと)

そして後に、Alistair Cockburnの教え子の一人である、永和システムマネジメントの代表取締役社長を務める平鍋健児氏によって、現在のKPT法へと確立されます。

KPT法分析の目的と重要性

KPT法が必要とされる理由は、客観的に現状を把握するためです。問題解決をするためには正確な情報が必要です。誤った情報のまま改善策を講じても的外れの結果となり、改善効果は芳しくありません。

そのため、KPT法によって状況を正しく理解し、必要な要素を分析する必要があります。

特に、近年はニーズの多様化やグローバル化の影響により、品質が重要視されてきています。誤った状態のまま製造を続けても、品質が良くなることはありません。生産効率も悪くなることから、他社に市場競争で負けてしまいます。

品質を向上し生産性も上げるためにも、細かくサイクルを振り返り、その都度改善を見直すことが、企業の存続や成長につながっていくのです。

KPT法の活用法とその効果

KPT法を活用することで、以下のような効果が期待できます。

個人での使用例からチームでの活用例まで

KPT法の主な活用例として、新人研修が挙げられます。研修内容をKPT法に当てはめて整理することで、できた部分とできない部分を明確にできるからです。できなかった部分を次回に向けたTryとすることで、効率良く学ぶことができるでしょう。

教える方としても、「何ができないのか」が分かるため、指導がしやすくなります。

また、チームとしての活用法としては、日報や定期報告への導入が挙げられます。良かった点と悪かった点をまとめることで、進捗状況を把握し今後の予定を立てやすくなります。問題把握もしやすくなり、迅速な対応が可能になるでしょう。

テンプレートにして習慣化させれば、普段からKPT法を意識するようになり、従業員全体の意識改革にもつながっていきます。

ほかにも、業務負荷の見直しやコスト削減案の提示など、さまざまな要件にKPT法は活用可能です。

KPT法導入時の効果とそれを最大化する方法

KPT法の導入により、問題解決までのプロセスが楽になります。問題点がシンプルにまとめられるため、課題や改善策も立案しやすいのです。人に伝える際も分かりやすくなり、話す側と聞く側の両方で負担が少なくなります。

結果を可視化し整理できるのが、KPT法導入による大きな強みといえるでしょう。

ただ、KPT法を実施しても、必ず改善するわけではありません。原因が他にある場合や継続できない場合もあるため、1度で完全に改善されるケースは珍しいといえます。

そのため、KPT法の効果を最大化させるためには、繰り返し行なうことが大切です。2回3回と繰り返し行なうことで、より内容が精査され結果が表れてきます。

また、以前行なった内容でも、改めてKPT法で見直すことで新しい改良点も見えてきます。時代とともに技術や生産方法は変わっていきますので、定期的にKPT法を行なう必要があるでしょう。

一度で解決しないからといって、やり方が間違っているわけではありません。何度も繰り返しその都度見直すことが、効果を高めるコツといえます。

KPT法の具体的な進め方と使い方

KPT法は、主に以下の手順によって進められます。実際に行なう際の参考にしてください。

  1. KPT法のフォーマット準備
  2. Keep・Problemを書き出して貼りだす
  3. Keep・Problemに対するディスカッション
  4. 具体的なTryを決める

KPT法のフォーマット準備

まずは、KPT法のフォーマットを準備します。情報を視覚化しやすいよう、ホワイトボードや紙(付箋)を用意してください。

各要素の線分けは、「縦線を入れて2等分した後、左側の中心に横線を入れた3等分」にすると良いです。TryはKeePとProblemの両方を参考にするため、左上がKeep、左下がProblem、右側がTryを記入することで、KPT法の仕組みがイメージしやすくなります。

Keep

 

Try
Problem

また、それぞれに記載する際は、色も変えると分かりやすいです。Keepは黄色、Problemは赤といったように分けることで、さらに見やすくなります。

ほかにも、「Trello」や「KPTon」といったKPT法の実施に役立つ無料ツールも存在しますので、活用してみるのも良いでしょう。

Keep・Problemを書き出して貼りだす

フォーマットを準備できたら、次はKeepとProblemの要素を書き出します。順番的にはKeepから行なうのが一般的ですが、Problemから始めても問題ありません。慣れないうちは、やりやすい方からまとめてください。

詳しい評価は次の項目で行います。感じたことや思ったことを、細かいことは気にせずどんどん挙げていきましょう。

Keep・Problemに対するディスカッション

一通り洗い出したら、内容について精査します。

たとえば、「準備が遅れて開始が遅れた」といったProblemがあったとした場合、その原因には「準備の動線が悪い」「準備する人が足りない」「設備が故障していた」などが考えられます。挙げられた内容を細かく分析することで、必要な課題が見えてくるわけです。

Keepについても、同様に精査し良かった理由について考察します。チームで行なう際はさまざまな意見を取り入れ、具体的な要因を考察してください。

具体的なTryを決める

KeepとProblemの要因が分かったら、次は今後の方針を決めます。課題に対する解決策であり、「どのようにすれば改善や実施できるのか」を考察します。

たとえば、「準備する人が足りず開始が遅れた」場合は、シフトを調整し人数を増やすようにします。ほかにも、「動線が悪くて準備が遅れた」場合には、準備道具の配置を変えるといったように、方法を挙げていきましょう。

また、立案する内容は具体的で現実的な内容に限ります。実現不可能な内容や継続が難しい内容では、意味のある改善につながりません。改善された状態が続くことをイメージして話し合ってください。

そして、Tryの内容を決めたら実際に試し、改善した結果を評価します。もし、結果がそぐわないようならその結果をもとに改めて考察し、結果が出るようなら別の箇所をKPT法に当てはめ改善していきましょう。

KPT法のメリットとデメリット

最後に、KPT法のメリットとデメリットについても紹介します。

KPT法のメリット

KPT法のメリットとしては、問題解決がしやすいことが挙げられます。ProblemからTryへと移行することで、原因が分かりやすく対策が講じやすくなるからです。

問題の早期発見にもつながり、生産率の低下を防ぐことにもなります。

また、ディスカッションすることでチーム内で情報共有もしやすいです。情報を可視化することで状況がイメージしやすくなり、個人で意識しやすくなるでしょう。

ほかにも、Keepによって行動が評価され、チーム全体のモチベーション向上にもつながります。多くの問題解決フレームワークでは問題点だけしか評価はせず、頑張った点はあまり評価されません。良かった点を評価することは、他のフレームワークとは異なるKPT法の特徴といえるでしょう。

KPT法を活用することで問題点を明確にし、チーム内で情報共有することで、迅速な問題解決が実施できます。

KPT法のデメリット

KPT法のデメリットとしては、Keepが蔑ろにされやすいことが挙げられます。Keepは他のフレームワークではあまり評価しない要素であり、慣れるまではKeepの扱いが難しく感じるでしょう。

Problemだけを挙げてTryへと移行するケースも珍しくはなく、それだと、KPT法を活用する意味があまりありません。

また、KPT法では原因を挙げる都合上、個人を評価することが多いです。Keepへの評価なら良いですが、多くの場合Problemでの評価となり、個人のモチベーションを下げる結果となります。

KPT法はチームでディスカッションする場合が多く、個人を攻撃することでチーム内の雰囲気も悪くするでしょう。

生産はチームで行なうものであり、協力は必要不可欠です。たとえ個人が悪くても、個人を標的にして攻めるべきではありません。

KPT法を活用しきれない、もしくは活用によって問題が生じるようなら、別のフレームワークを選ぶことをおすすめします。

まとめ:アジャイルやスクラムの振り返りの手法

KPT法は、現状を整理し問題解決を早められるフレームワークです。ProblemからTryへと移行することで、スムーズに課題や解決方法を見つけられます。

また、Keepがあることも特徴の一つです。良かった点も評価することで、改善策の影響が分かりやすくなります。人によっては評価されることでモチベーションの向上にもつながり、チーム力も高まるでしょう。

問題解決のフレームワークは他にもありますが、多くはプロジェクト終了した後の評価を目的としており、サイクルごとの評価にはあまり向いていません。細かく修正を行ない問題の早期発見を目指す際は、ぜひKPT法を活用してみてください。

生産管理システムの選び方「37のチェックポイント」無料でプレゼント!
「生産管理システムの選び方 37のチェックポイント」を無料でダウンロード!
多品種少量生産、試作、特注、一品物など種類が増えるほど管理が煩雑になり、生産管理システムを導入する会社が増えています。
自社に最適な生産管理システムを選ぶためのポイントをまとめた「生産管理システムの選び方 37のチェックポイント」を無料でご提供いたします。このチェックリストは、システム導入の際にRFP(提案依頼書)を作成するためのガイドとしても活用できます。自社のニーズに最適なシステムを見極めるための基準を明確にし、提案を受ける際の比較検討に役立ちます。生産管理の効率化と成功への第一歩を踏み出しましょう!

生産管理システムの選び方「37のチェックポイント」無料でチェックリストをダウンロードする