製造業が注目したいITトレンド~エコシステム~

エコシステムとは?製造業もデジタル社会での発展に必要とされるビジネスの仕組み

製造業が注目したいITトレンド~エコシステム~

情報社会が進む近年。パソコンやスマートフォンを始め、様々なIT技術が発表されています。IT技術の影響は様々な業種・企業に革新的な変化を与え、デジタル社会へと変化しつつあります。

そんな機械的なデジタル社会ですが、実は自然界に通ずる部分があります。生態系の仕組みとよく似ていることから「エコシステム」と呼ばれ、ビジネスにおいてなくてはならない仕組みと言えるでしょう。

エコシステムとは具体的にどのような仕組みなのか。エコシステムを築くことのメリットを紹介します。

エコシステムとは?

エコシステムとは?

IT分野におけるエコシステムとは、業界や企業などが共依存する仕組みのことです。様々な業種や企業、さらには、顧客や国なども巻き込み協力し合うことで、それぞれがサポートし合い、より良い影響を与えることで共栄します

元々、エコシステムとは科学用語の一つであり、和訳すると「生態系」といった意味になります。「植物が実を付けることで動物のエサとなり、その動物が排泄物をすることで、植物の肥料や種の植え付けになる」といったような自然界の相互関係のことを表し、互いに協力し合うことで、さらなる共栄や生存を可能にするのです。

この生態系の仕組みは、人間社会にも当てはまります。一社では売れ行きが悪い商品でも、別の企業がサービスを付加することで売れ行きは良くなります。車の販売などがまさにそれであり、車だけを売るよりも、保険、ETC、カーナビ、ドライブカメラ、オーディオ機器、フロアマットなどをセットにする方が、お得感があるでしょう。

それぞれの企業としても、単体で売るより車と一緒に販売してもらう方が売れ行きは良いはずです。それぞれが協力することで価値観が高まり、売れ行きに直結していきます。

他にも、スマートフォンのアプリ、パソコンの周辺機器、YouTubeの広告システム、amazonや複合商業施設なども、共依存によるエコシステムの一例と言えるでしょう。

エコシステムが注目される理由

エコシステムが注目される理由として、一企業だけではマーケティング戦略が難しくなったことが挙げられます。デジタル技術が発達したことでできることも増えてきており、付加価値が低い商品に対して、顧客が満足しなくなっているからです。

例えば、電話アプリしか入っていないスマートフォンを販売するとします。近年は電話やメール以外にもスマートフォンを活用する人も多く、電話アプリだけのスマートフォンはとても不便です。

一方で、動画アプリ、カメラ機能、電子決済システムなど様々な機能が入っていれば、それだけお得感があります。数ある中から選ぶにしても、多機能で便利なスマートフォンをきっと選ぶことでしょう。

このように、内臓アプリという付加価値があることで、人の購買意欲は変化します。提携している企業が多いほどサービスを付加しやすく、他のスマートフォンよりも売れるようになるわけです。

IT技術が進歩する近年において、特に電子機器に対する付加価値が強く求められています。そのことから、IT関係を中心とした製造業が、エコシステムに注目しているのです。

同じ業界で生きていくためには、他の商品よりも魅力的でなければ選んでもらえません。顧客のニーズに答えるためにも、より様々な企業との協力関係が望まれています。

エコシステムのメリット

エコシステムを実施すると、どのようなメリットがあるのか。三つの観点から説明します。

  • 企業の認知度向上
  • 新たな市場創出や顧客を呼び込み
  • 新たなビジネスモデルの創出

企業の認知度向上

一つ目は、自社含め、提携企業の認知度を高めることです。自社のサービスを説明する際、同時に提携企業についても説明することで、提携企業の商品やサービスの宣伝になります。

もちろん、逆の場合も同様です。提携企業が宣伝をする際は自社の説明もしてもらえ、より認知度を高めることができるでしょう。

提携が多いほど宣伝範囲は広く、認知度向上効果は高くなります。

また、提携企業とは顧客層が異なる場合が多く、宣伝してもらうことで顧客の新規確保にもつながります。企業同士のつながりによっては、ノーマークの業界からや海外企業からの依頼も十分に考えられます。

他にも、複数の企業がデータや技術を出し合うことで、新しいアプローチのやり方も見えてきます。同じ種類の商品を別の企業が同時に発売したとしても、出版社や広告代理店と提携していればメディアを通じて紹介しやすく、サービスを展開していくうえで有利となるでしょう。

新たな市場創出や顧客を呼び込み

二つ目は、顧客のニーズに合わせた新規市場の創出です。エコシステムによってデータを共有することで、顧客のニーズに沿った新しい市場を提供することができます。

IT技術の進歩により様々なことができるようになりましたが、それでも一企業でできる範囲は限られています。特に、中小企業は技術、人材、資金で問題を抱えやすく、折角のアイデアを諦めてしまうことも珍しくはありません。

ですが、他企業と協力すれば、難しかったアイデアも実現可能になります。それにより、顧客のニーズに合わせたサービスが提供でき、顧客を呼び込みやすくなるのです。

もちろん、市場が活性化されれば企業の認知度向上にもつながります。認知度が高まることで仕事の依頼がされるだけではなく、協力企業も新しく出てくるでしょう。

近年は、人材不足の影響により、縮小を余儀なくされる企業も増えてきています。本来ならそのまま消え去ってしまうビジネスでも、協力企業があれば救済は可能です。新しいビジネスモデルや付加価値を与えることで、再び注目を集めることも難しくはありません。

エコシステムは、共存・共栄による、中小企業の救済措置の側面もあります。諺にある「長い物には巻かれろ」ではありませんが、自社だけで難しい場合は、他の企業を頼ると良いでしょう。

新たなビジネスモデルの創出

三つ目は、新規ビジネスの発掘です。様々な企業がデータや技術を持ち寄ることで、新しいビジネスモデルを作ることができます。

エコシステムの特徴は、様々な企業と関わることです。一技術だけでは限られたことしかできない技術も、複数の技術が集まれば新しい使い方が見えてきます。

もちろん、他業種とは考え方も異なりますので、それが刺激となる場合もあります。同じ業種、ましてや一社だけの考えでは、考えが固まり新しいアイデアは生まれません。違う業種からのデータ、技術、考えが合わさることで、新しい技術やサービスが生み出されていくのです。
そして、生み出されたビジネスモデルは新しい市場となり、企業同士が協力することで実現させます。市場が大きくなれば地位も安定し、ビジネスモデルとして確立していくでしょう。

また、エコシステムの対象は企業だけではありません。顧客も組み込むことで、顧客のニーズも見えてきます。顧客が必要とするサービスをすぐに提供できるようになり、企業と顧客のどちらにとっても、エコシステムはメリットになります。

まとめ:企業や業界の発展にはとても重要なシステム

エコシステムとは、他社と協力して互いの利益とするシステムのことです。一社だけでは限界があったとしても、技術協力を依頼することで実現することができます。

データや考えを共有することで新しいビジネスモデルも生み出せたりと、企業や業界の発展にはとても重要なシステムと言えるでしょう。

ただ、エコシステムを導入することが、必ずしもメリットになるわけではありません。エコシステムには多数の企業が参加するため、その分の費用が発生します。場合によっては、自社だけで製造や進行した方が、コスト削減になる場合も十分あり得ます。

また、付加価値をつけすぎることで、サービス本来の目的を見失う場合もあります。よくあるのがスマートフォンのアプリが多すぎることで、たくさん付加しても、顧客が望んでいなければ意味がありません。本来の目的を見失った結果、「よく分からないサービス」となることも珍しくはないのです。

エコシステムによってさらなる共栄を目指せますが、使い方が悪いと共倒れになる可能性もあります。エコシステムを活用する際は、しっかりとした方向性や目的をもって選択するようにしましょう。

日本のコネクテッドインダストリーズを始め、ドイツのインダストリー4.0、アメリカのインダストリアルインターネットなど、世界各国では、将来を見据えたデジタル政策が取り組まれています。将来のビジネスモデルの一端として、ぜひエコシステムについて注目してみてください。

関連記事

「インダストリー4.0」というのを聞いたことはありますか?これはドイツが政策を進める産業プロジェクトの一環であり、日本では「第4次産業革命」といった意味となります。 18世紀後半に行われた「第1次産業革命」から続く、第4段階目[…]

製造業が注目したいITトレンド~インダストリー4.0~
関連記事

スマートフォンやパソコンなど、電子技術が当たり前となる近年。ドイツでは、「インダストリー4.0」についての政策が発表されました。 インダストリー4.0とは、「第4次産業革命」のことであり、将来に向けた様々なデジタル政策の取り組[…]

製造業が注目したいITトレンド~コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)

動画「多品種少量生産時代の生産管理システム 失敗しない3つのヒント」を
無料プレゼント!

多品種少量生産、試作、特注、一品物など種類が増えるほど管理が煩雑になり、生産管理システムを導入する会社が増えています。「システムが現場に合っておらず、ほとんど使われていない」そんな失敗を未然に防ぐポイントがわかります。

下記ボタンからダウンロードページに移動していただくと「多品種少量生産時代の生産管理システム・失敗しない3つのヒント」の動画を無料でダウンロードしていただけます。