コアコンピタンスとは?製造業DXの推進にも役立つ自社の強みの再認識しよう

コアコンピタンスとは?製造業DXの推進にも役立つ自社の強みの再認識

コアコンピタンスとは?製造業DXの推進にも役立つ自社の強みの再認識

自社の強みを示すコアコンピタンス。強みとは企業の武器であり、市場競争に勝つために大切な要素といえます。

ですが、意外と自社の強みをわかっていない企業は少なくありません。強みと思っていた要素は競合企業も持っている要素だったり、逆に強みがないと思ったら意外な要素が強みだったりします。

競合企業に勝つためには競合企業よりも優れた部分を活かす必要があり、そのためにも、コアコンピタンスは知っておく必要があるでしょう。

コアコンピタンスとは、どのような強みのことを指すのか。コアコンピタンスと呼べる条件や、コアコンピタンスを再認識すべき理由などを紹介します。

コアコンピタンスとは

コアコンピタンスとは?

コアコンピタンスとは、ほかの企業にはない企業の強みのことです。言い換えるなら「競争優位性」です。「作物の収穫から加工までを自社ですべて行なっている(6次産業)」「自社で開発したオリジナルシステムで生産をしている」など、ライバル企業には真似できない優位的な要素のことを指します。「これだけは競合他社にも絶対負けない自信がある自社の強み」とも言えるでしょう。

近年は、グローバル化の影響により、海外の企業も業界に参入するようになりました。逆に日本の企業が海外に進出する場合もあり、昔と比べ、市場の規模は格段に広がったといえるでしょう。

市場が広がることで新しい技術も生まれるようになり、今後の将来性も期待できます。

ですが、その一方で存続の危機に瀕する企業もあります。ライバル企業が増えればそれだけ顧客の取り合いとなり、独自性のない企業は独自性のある企業に負けてしまうからです。

特に、近年はデジタル技術の発展により新しい可能性も追及されています。新しい試みを持って市場に新規参戦する企業も多く、独自性のない企業は業界内で埋もれてしまうのが現状です。

ライバル企業に負けないためには、自社の強みとなる部分を知る必要があります。そして、強みに対してアプローチしていくことで、競合企業に負けない自社だけの武器となるのです。

コアコンピタンスにおける5つの視点

コアコンピタンスかどうかを判断するためには、以下の視点から見極める必要があります。

模倣可能性(Imitability)

一つ目は、模倣可能かどうかです。簡単に模倣できないものは独自性があるといえます。

いくら自社が初めてであっても、簡単に模倣できてしまうと、競合企業も真似をしてしまいます。その結果、自社の独自性が失われ、市場競争に負けてしまうでしょう。

自社の優位性を保ち続けるためには、簡単に模倣できないことが重要です。

移動可能性(Transferability)

二つ目は、汎用性の高さです。一つのことから複数展開できることも、コアコンピタンスでは必要となります。

例えば、企業のブランド名です。有名なブランド名は、別の市場に参入しても信用と注目がされます。信用されるからこそ簡単に手に取ってもらえ、順調なスタートを切れるでしょう。

もちろん、汎用性がないとダメなわけではありませんが、汎用性がないと自社の強みとして長く活用できません。近年はニーズの変化が激しく、ニーズが変わることで優位性も失われてしまいます。

長く自社の強みとするためにも、汎用性の高さは必要な要素といえるでしょう。

代替可能性(Substitutability)

三つ目は、代替えの難しさです。ほかの製品や別の技術で代用できないことは、独自性があるといえます。

たとえ模倣できなくても、ほかのことで代用できるなら模倣する必要がありません。別の方法で同じことができるため、自社の優位性はなくなってしまいます。

もちろん、代用によって変わる部分もありますが、結果が同じなら顧客はあまり気にしません。むしろ、後発であることからコスパなどが改善され、競合企業との優位性が逆転してしまうでしょう。

自社の強みとするためには、代用できない自社ならではのオリジナリティが求められます。

希少性(Scarcity)

四つ目は、珍しさです。競合企業にはなく自社のみであるなら、それは独自性があるといえます。

希少性が高ければ希少価値をプラスすることも可能であり、利益率を高めることもできます。市場を独占することにもなり、自社にとって優位に進められるでしょう。

また、見極めるポイントの一つとして挙げましたが、模倣可能性と代替可能性を兼ね揃えていれば、自然と希少性も満たしている場合が多いです。そのため、あまり意識して考える必要はありません。

耐久性(Durability)

五つ目は、耐用年数の長さです。いつまでも変わることなく影響力があることは、独自性があるといえます。

「移動可能性」でも触れましたが、短期間しか使えないものだと、自社の優位性は長く続きません。再び優位性を得るためには、新しくコアコンピタンスを作る必要があるでしょう。

優位性を長く保つためにも、技術のノウハウやブランド名などのような、年月が過ぎても影響力がある独自性が必要です。

コアコンピタンスとケイパビリティの違いと関係性

コアコンピタンス以外にも、能力を示すものとしてケイパビリティと呼ばれるものも存在します。

コアコンピタンスについてよく知るためにも、ケイパビリティについても知っておきましょう。

ケイパビリティとは

ケイパビリティとは、「能力」や「力量」といった意味の言葉です。企業に当てはめて考える場合は、「企業全体の組織力」を示します。

今まで、重視すべきは個人の力が一般的でした。作業するのは個人であり、個人の能力が高ければ良い成果を得ることができます。

ですが、一人の力には限界があり、状況や体調などによっても大きく左右されてしまいます。個人によって能力の差も大きく、ニーズの変動が激しい近年において、個人の力だけでは対応出来ない事態も少なくありません。

そのため、近年では個人の力ではなく、組織全体の力が求められています。個人の体調が悪くても、別の人がサポートすれば、全体のパフォーマンスを落とすことなく業務を続けられます。技術の差も同様で、技術をマニュアルに落とし込めば、技術の差を埋めることもできるでしょう。

もちろん、下地となる個人能力は必要ですが、近年の激動する情勢に対応するため、ケイパビリティが注目されています。

コアコンピタンスとケイパビリティの違い

コアコンピタンスとの違いは、主軸となる定義の違いです。ケイパビリティは「組織力」を指すのに対して、コアコンピタンスは「核となるもの」を指します。

製造業に例えるとしたら、生産オペレーションがケイパビリティ、使用する技術や完成した製品がコアコンピタンスといえるでしょう。

ただ、どちらも必要であることには変わりありません。よくセットで挙げられているのも、コアコンピタンスの活用や維持にはケイパビリティが必要だからです。

逆に、ケイパビリティの一部がコアコンピタンスともいえ、コアコンピタンスとケイパビリティは親密な関係にあります。

コアコンピタンスはもちろんケイパビリティも意識することで、継続的に自社の強みを活かし続けることができます。

製造業がコアコンピタンスを再認識する意味

製造業がコアコンピタンスを再認識する意味は、以下のような理由が挙げられます。

自社の強みを理解し、弱みをアウトソーシング

コアコンピタンスの再認識が必要な理由は、弱みをアウトソーシングするためです。コアコンピタンスによって企業の強みと弱みを理解することで、苦手な部分をアウトソーシングし、企業の強みに注力できます。

例えば、営業部門のアウトソーシング化です。「製造技術は優れているけど、営業能力は低い」といった中小企業はたくさんあります。製品を売り出すのが苦手なことから、思うように利益が上がらない企業は多いことでしょう。

ですが、営業が得意な企業にアウトソーシングをすれば、効率的に製品を売り捌いてくれます。今まで営業に割いていた人材や時間を生産に回すこともでき、製造に注力ができるわけです。

昔はすべて自社内で対応する必要がありましたが、近年はIoTの普及によりほかの企業とも連携が取りやすくなりました。苦手な部分をシステムがサポートする意味では、IT化やそれによる製造業DXも、一種のアウトソーシングといえるでしょう。

苦手なものを無理に頑張るのは非効率的です。弱みをアウトソーシングし、得意を自社の強みとするためにも、コアコンピタンスを再認識する必要があります。

製造業DXによる製造プロセスのサービス化

近年では、製造プロセスを標準化・デジタル化し、クラウド技術を用いて競合企業に提供する企業も増えてきています。ようは「自社の技術」を提供しており、継続的に活用してもらうことで、長期安定的な利用料収入が期待できるのです。

デジタル化社会となる近年において、昔のように「モノ」に固執する必要がなくなってきています。デジタルデータが主流になることで、モノへの価値が薄れているといえるでしょう。代わりに、経験や体験といった「コト」への価値が見出されているわけです。

IoTが普及したことで、さまざまな可能性が期待されています。製造プロセスのサービス化のように、コアコンピタンスによって、新しい経営戦略も期待されています。

コアコンピタンスを見つけるために役立つ手法

コアコンピタンスを見極めようにも、どのように探せばいいのかわからない人も多いことでしょう。

そんな時には、以下の手法で試してみるといいです。企業の強みや弱みがわかり、コアコンピタンスを見極める切っ掛けとなります。

SWOT分析

SWOT分析とは、内部環境と外部環境を、それぞれプラス要因とマイナス要因に分類して考える手法です。

内部要因と外部要因、プラス要素とマイナス要素の軸で4つに分類して探す手法であり、それぞれが「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」に該当することからそれぞれの頭文字を取ってSWOT分析と呼ばれています。

  • 内部環境:プラス要因 =強み
  • 内部環境:マイナス要因=弱み
  • 外部環境:プラス要因 =機会
  • 外部環境:マイナス要因=脅威

例えば、商品価値は内部環境の分類です。企業のメリットになることからプラス要素といえるでしょう。そして、商品価値は企業にとっても強みといえます。

ほかにも、ライバル企業は外部環境の分類です。ですが、企業にとってはマイナスの要素でもあり、企業にとっての脅威となるわけです。

それぞれ順にステップを踏んで分析したり、どれか一つを掘り下げて分析したりすることもあります。

SWOT分析の強みの項目からさらに精査することで、コアコンピタンスを探すサポートとなります。

GAP分析

GAP分析とは、理想と現状を比較し、理想を達成するためには何が必要かを分析する方法です。差異から課題を見つけ、課題をクリアすることで理想に近づけていきます。

理想と現状との差が少ないほどその要素は優れているといえ、自社の強みとして挙げることができるでしょう。

また、GAP分析の内容をSWOT分析に活用することも可能です。SWOT分析に活用することで、強みだけではなく企業の弱みも見つかります。

VRIO分析

VRIO分析とは、経営資源を「Value(経済的な価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の4つ視点から評価する手法です。「自社製品は希少性があり、購入を促す経済的な価値があるのか」などを分析し、自社の優位性を見つめ直すために活用します。

VRIO分析には、コアコンピタンスの条件となる「模倣可能性」「希少性」が含まれています。VRIO分析を活用することで、コアコンピタンスとなる要素も見えてくるでしょう。

また、経済的な価値や組織(ケイパビリティ)も、企業の強みとなるものです。分析し要素を高めていくことでコアコンピタンスとなっていきます。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、原材料から流通までの流れを分析し、価値の連鎖を評価する手法です。つながりを意識しながら分析することで、全体で見た場合の強みなどを見つけることができます。

強みといえば、単体の要素をイメージしがちです。ブランド力や特定の製品などは、わかりやすい企業の強みといえるでしょう。

ですが、企業の強みはそれだけではありません。6次産業のように、複数の事業を通した強みも存在します。そのような強みは、ほかの手法では見極めるのが難しいです。コアコンピタンスを探すためには、別の視点から見ることも大切といえます。

ちなみに、全体の流れを分析し評価する手法にはサプライチェーンも存在します。サプライチェーンは「物の流れ」を分析するのに対して、バリューチェーンは「価値の流れ」を分析するものです。仕組みは似ていますが、分析対象は異なるため間違えないよう注意してください。

3C分析

3C分析とは、自社環境を「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3点から分析する手法です。3C分析によって、自社の強み(成功要因)を見つけることができます。

3C分析は業界の環境分析を目的としており、3C分析で得た情報はSWOT分析に活用可能です。3C分析単体でも自社の強みを探せますが、SWOT分析と合わせることでマーケティング戦略にも活用できます。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、「業界内の競合」「代替品の脅威」「新規参入者の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」からなる、5つの競争要因を分析する手法です。外部環境を客観的に分析する手法であり、事業展開に活用できます。

ほかの手法とは異なり明確な強みが見つけられるわけではありませんが、競合企業との比較から、代替可能性や希少性が見えてきます。

また、自社にとっての脅威がわかるため、事業を強化する際の参考にもなるでしょう。

コアコンピタンスを決める3つの手順

コアコンピタンスを決める際は、以下の手順に沿って探すと決めやすいです。

自社の強みを洗い出す

まずは、自社の強みを洗い出します。強みを洗い出す際は、「コアコンピタンスを見つけるために役立つ手法」で紹介した手法を試してみてください。特に、SWOT分析は弱みや脅威も分析でき、評価した結果を経営戦略に組み込めます。

また、多角的に判断するためにも、部門やチームのメンバーと話し合って決めてください。

ブランド名や特定の製品といったわかりやすいものだけではなく、広い視点で話し合いましょう。

強みに対する評価・確認を行なう

強みを洗い出したら、それぞれの強みを評価していきます。洗い出した強みが「コアコンピタンスにおける5つの視点」で紹介した項目に当てはまるか確認してください。

ほかにも、「顧客の利益となるか」「応用が効くか」「競合企業に真似されにくいか」なども踏まえて評価すると、より深く評価できます。

より特別な強みを絞り込む

コアコンピタンスを見極めたら、その中からより特別なコアコンピタンスを絞り込みます。コアコンピタンスが複数あることは良いことですが、複数あると経営方針が迷いやすいです。経営戦略としてアプローチする対象を決めるためにも、特に効果的なコアコンピタンスを選ぶ必要があります。

また、経営方針に大きく関係しますので、ほか部門との連携も大切です。特に、経営陣や営業部との関係が深く、絞り込む際は共に行なうのが一般的といえるでしょう。

まとめ:コアコンピタンスを再認識すると製造業DXにも影響

コアコンピタンスとは、「自社の強み」を指す要素です。ほかの企業にはない強みであることから、市場競争において絶対的な有利となります。

経営方針を決めるうえで、コアコンピタンスを知ることはとても重要です。他企業に勝つためには自社の強みを活かすことが大切であり、そのためにも、自社のコアコンピタンスを再認識する必要があるでしょう。

また、コアコンピタンスを再認識することで、今後必要となるIT技術も見えてきます。自社の弱さをサポートするためのシステムや、新しい企業展開をするためのネットワーク技術など、製造業DXの実現に欠かせません。

「灯台下暗し」といった言葉があるように、意外と自社の強みがわかっていない企業は多いです。VUCA時代(予測困難な時代)を生き抜くためにも、コアコンピタンスについて見直してみてください。

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