危険予知訓練を進めるKYT4ラウンド法とは?危険に対する意識を高める

危険予知訓練を進めるKYT4ラウンド法とは?危険に対する意識を高める

危険予知訓練を進めるKYT4ラウンド法とは?危険に対する意識を高める

製造現場において、リスク管理はとても重要な要素です。安全性は、忌避すべき職場を示す3K(きつい、汚い、危険)の一つにもあり、従業員の安全はもちろん、従業員のモチベーションに大きくかかわってきます。

少子化の影響により人材不足が進む製造業ですが、危険な職場のままでは人が集まらず、離職率も高まってしまうでしょう。

安全性を向上させるためにも、危険予知訓練を実施し、事故を未然に防ぐことが大切です。

危険予知訓練とはどのような訓練なのか。危険予知訓練の目的や必要性、KYT4ラウンド法の進め方などを紹介します。

危険予知訓練(KYT)とは?

危険予知訓練とは、現場の危険を分析し、危険に対して対策を講じる訓練のことです。危険・予知・訓練(トレーニング)、それぞれの頭文字を取ってKYT(以下:KYT)とも呼ばれています。

元々は住友金属工業で開発されたリスク管理でしたが、職場の様々な問題を解決するための手法として中央労働災害防止協会が広めました。問題解決を4ラウンド(R)に分けて考えるやり方を提示し、KYTを確立させたのです。

さらに、伝統的な安全確認の方法である「指差し呼称」も合わせることで、よりリスク管理に対する自覚を持たせます。

KYT4ラウンド法」による方法は、リスク管理の一環として、現在様々な企業が取り入れています。

KYTの目的と効果

KYTの目的は、事故のない安全な作業現場にすることです。

製造現場には、様々な危険が存在します。機械が原因の事故を始め、物が落下する、滑って転ぶ、衝突する、素材で指を切るなど、毎年全国の工場では様々なトラブルが報告されています。

中には、切断事故や死亡事故に転じる場合もあり、ホワイトな現場を目指す上で、リスク管理は欠かすことができません。

安全な現場環境は、従業員のモチベーションに影響します。のびのびと仕事ができることで、ストレスフリーな現場環境になるでしょう。

また、KYTの実施は5S活動にも関係します。

5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」からなる作業定義のことであり、作業現場を綺麗にすれば作業がしやすくなることを目的とします。作業効率の向上はもちろん安全性の向上効果が期待できることから、KYTの方針として採用されることも珍しくはありません。

他にも、チームで協力しながらKYTに取り組むことでチームワークの向上など、単純に安全対策だけではなく、心地よい現場作りや人間関係を良くする効果も期待できます。

5Sの内容
整理:不要なモノを捨ててスペースを作る
整頓:使いやすいようモノを整頓する
清掃:綺麗に掃除して使いやすい環境を作る。また、安全かどうかの点検を行う
清潔:整理・整頓・清掃した状態を保つ
しつけ:整理・整頓・清掃が続けられるよう習慣化する
関連記事

製造業でよく耳にする5S活動。現場環境を改善することで作業効率や生産性が向上することから、多くの企業が注目・取り入れています。 もちろん、5Sの考えは製造業だけではありません。医療業界、物流業、サービス業、小売業なども実施して[…]

製造業における5Sとは?活動の目的と製造業における効果

危険予知訓練はなぜ必要?

事故を予防するだけなら、口頭説明や張り紙で十分なようにも思えますが、なぜKYTを実施する必要があるのでしょうか?

必要とされる理由を2つ紹介します。

労働災害を防止する

1つ目の理由は、労働災害を防ぐためです。「目的と効果」の見出しでも触れましたが、KYTを実施することで、事故の発生を防ぐことができます。

労働災害の主な原因は、ヒューマンエラーによるものです。うっかり、聞き間違い、勘違いなど、意図しない不注意が挙げられます。

また、油断によるリスクテイキングも少なくはありません。毎日していることによる慣れや、面倒だからといって自己流を試すなど、本来の作業手順とは異なることで事故へとつながるのです。

KYTの実施には、安全対策を立てる以外にも、労働災害を意識させる目的もあります。意識させることで危機感を高め、それによってヒューマンエラーを減らすことができるでしょう。

危険要因を行動目標と指差し呼称で習慣化する

2つ目の理由は、安全対策を習慣化させるためです。いくら安全対策を実施しても、それが続かないと意味がありません。安全対策がたまにだけだと、いつかは事故に発展してしまうでしょう。

KYTでは、対策を立案するだけではなく、実施の様子も想定して行動目標を立てます。「原因はこうだから、このようにして対策をしよう」といったように、作業の流れに組み込んで対策を講じるのです。

また、指差し唱和も合わせることで、より記憶に残りやすくなります。人は、ただ暗記するよりも、行動として記憶する方が物事を覚えやすいです。唱和によって脳へのフィードバックにもなり、張り紙を見て覚えるよりも、効果的に覚えられます。

安全対策が習慣化されることで、自然にリスク管理が続けられるでしょう。

危険予知活動と危険予知訓練(KYT)の違い

安全対策には、KYT以外にも危険予知活動というものがあります。危険(Kiken)・予知(Yochi)、それぞれの頭文字を取ってKY活動(以下:KY活動)とも呼ばれており、事故が生じないよう、安全対策に取り組みます。

KYTとの主な違いは、活動を重視していることです。KYTは、安全対策のための立案をして計画を立てることですが、KY活動は安全に作業をするための活動を行ないます。「訓練」と「活動」の違いがあり、名称は似ていても、それぞれ目的は異なるのです。

ただ、実際の現場ではハッキリと区別をされていません。訓練をした内容は、実際の活動内容として実践するからです。KY活動の前には活動内容を確認する必要もあり、重なる部分もあることから、ハッキリと区別できないともいえるでしょう。

どちらも同じ安全対策の一環であり、必要なことに変わりありません。KYTとKY活動を合わせて、取り組むことが重要です。

危険予知訓練を進めるKYT4ラウンド法

KYTはどのように実施すれば良いのか、KYT4ラウンド法の進め方について紹介します。

まず初めに、5〜6人規模のチームに分かれます。人数が多すぎると意見がまとまらないからです。1人ずつ意見を聞くのも難しくなるため、人数が多くなるようなら、チームを分けて行ってください。

また、チームを分けたら司会や書記も決めます。KYTも、一般的な会議と基本は変わりません。他にも必要な役があれば、追加してください。

最後に、意見をまとめるホワイトボード(紙)、文字を書くためのペンと赤ペンを用意したら準備完了です。

流れに合わせて、KYT4ラウンド法を実施しましょう。

事前準備
5〜6人のチームに分かれて行う
司会・書記を決める
ボードとペンを用意する

現状把握

1R目は、現状把握をします。「どのような危険があるか」を順番に挙げてください。

その際、「〜なので、〜して(危険要因)、〜になる(事故の型)」形式を意識して発言すると良いです。「脚立から落ちて危ない」といった大雑把な内容ではなく、「床の段差によって、脚立がぐらぐらして、転落してしまう」というように、状況も合わせて意見しましょう。

また、1R目で必要なことは「質より量」です。重要かどうかの判断は、後のラウンドで行ないます。事の大小にかかわらず、とりあえず意見を出していくことを心がけるようにしてみてください。

チーム全員に意見を促し、問題となる現状のすべてを列挙します。

本質追求

2R目は、本質の追及です。挙げた意見の中から、関心が高く重要な項目に、赤ペンで〇を付けて分かりやすくします。さらに、〇を付けた中でも特に危険なポイントを選び、◎とアンダーラインを付け、KYTの目的を明確にしましょう。

◎を決める際は、多数決で決めるのではなく、話し合いによってチーム全員が納得するものを選んでください。部署や担当が変われば重要性も異なるため、一概に多数決で決めるのは望ましくはありません。

◎が決まったら、チーム全員が指差し唱和し、KYTの目的を改めて確認します。先に司会役が「(決めた項目) ヨシ!」と唱和し、続けてチーム全員が言葉にして、問題点を意識します。

対策立案

3R目は、対策の立案です。2R目で選んだ項目に対して司会役が「あなたならどうする」と問いかけ、「自分ならこうする」と、具体的で実行可能な対策を発言しましょう。

可能なら、1項目1案だけではなく、各項目3案程度の対策を挙げてみてください

目標設定

4R目は、目標の設定です。3R目で挙げた対策の中から、「重点実施事項」を1つ設定し、赤字で※印とアンダーラインを付けて分かりやすくしてください

また、設定する際も話し合いをして、チーム全員が合意したものを選ぶようにしましょう。

重点実施事項が決定したら、司会がチームの行動目標として、設定した内容を唱和します。「脚立を使う際は、床が平面であるかを確認してから使用する ヨシ!」といったように、司会が唱和した後、続けてチーム全体が唱和してください。

最後に、時間があれば、実際の現場で同じように唱和します。3回ほど指差し唱和確認をしたら、KYTは完了です。

まとめ:労働災害の予防に役立つ危険予知訓練(KYT)

KYTは、労働災害を防ぐために欠かせない訓練です。口頭説明や張り紙だけでは忘れてしまう人も、KYTを実施すれば、対策を習慣化できます。

また、KYTの副効果として、5Sの徹底やチームワークの向上も期待できるでしょう。作業環境が改善されることで、作業効率はもちろん、生産性の向上も期待できるわけです。

KYT4ラウンド法を各ラウンドで紹介しましたが、まとめると「問題点を列挙し、解決策をみんなで決めた後、指差し唱和をして確認する」だけです。内容や進め方にも寄りますが、20分〜30分もあれば完了します。

安全な職場を目指すためにも、ぜひKYTを実施してみてください。

動画「多品種少量生産時代の生産管理システム 失敗しない3つのヒント」を
無料プレゼント!

多品種少量生産、試作、特注、一品物など種類が増えるほど管理が煩雑になり、生産管理システムを導入する会社が増えています。「システムが現場に合っておらず、ほとんど使われていない」そんな失敗を未然に防ぐポイントがわかります。

下記ボタンからダウンロードページに移動していただくと「多品種少量生産時代の生産管理システム・失敗しない3つのヒント」の動画を無料でダウンロードしていただけます。