ウェアラブルデバイスというのを聞いたことがありますか?医療や介護の現場では血圧や脈拍などを検査するために使われていますが、近年では製造の現場でも活用されています。
従業員の健康管理はもちろん、生産性の向上も期待され、様々な企業がウェアラブルデバイスに注目しているといえるでしょう。
ウェアラブルデバイスとはどのような装置なのか。特徴や活用例などを紹介します。
ウェアラブルデバイスとは?
ウェアラブルデバイスとは、「身に着けるデバイス」を意味する言葉です。文字通り身体に身に着けて利用する端末で、装着者から得た情報をloTによって転送し、取得した情報を分析することで、その結果を返します。
例えば、見た映像を記録するゴーグルを装着するとします。装着者は仕事をする中で映像を記録し、その記録をloTによって集計するのです。そして、集計した結果を基に分析し、どのような対応をすればいいかを、ゴーグルに送信して知らせます。
それにより、スマートフォンやタブレットのように取り出して確認する手間を必要とせず、ハンズフリーかつスムーズに指示や情報を知ることができるわけです。
他にも、スマートウォッチのような体調管理をするデバイスも該当し、ヘルスケア目的で使われるなど、様々な活用がされています。
ウェアラブルデバイスを構成する機能
ウェアラブルデバイスの主な機能は「検知」と「制御」(センシングとフィードバック)と呼ばれる2つの機能があります。
ウェアラブルデバイスについて知るためにも、「センシング(検知)」と「フィードバック(制御)」について知る必要があります。
センシング(検知)
センシングとは、情報を検知することです。いわゆるカメラやセンサーのことを意味し、装着者や周囲の情報を集めます。フィードバックにつなげるためにも、まずは情報を集めないといけません。
センサーの一例としては、心拍センサーや照度センサーが挙げられます。心拍センサーは自身の情報を、照度センサーは周囲の情報を、それぞれ検知するわけです。
他にも、近接センサー、GPS、アイトラッキング、心電図、脳波センサーなどが、センシングの例として挙げられます。
フィードバック(制御)
フィードバックとは、行動を制御し軌道修正を行なうことです。センシングで情報を収集しても、活用されなければ意味がありません。
収集した情報を基に分析し、情報提示や注意喚起といった、必要とされる内容を返信します。
センシングとフィードバックを繰り返し行なうことで、より的確な指示をリアルタイムに受け取れます。
IoT/IoBとの関連性
ウェアラブルデバイスについて理解するためには、IoTやIoBについても理解する必要があるでしょう。
センシングした情報をフィードバックするためには、loT、強いてはloBの技術が必要不可欠といえます。
ウェアラブルデバイスでは、そんなloB(loT)の技術が活用されています。デバイスに内蔵されたセンサーによって生体情報などを収集し、インターネット上に送信します。そして、同じようにインターネット上からフィードバックされ、デバイスに内蔵された出力装置によって、装着者に内容を伝えるわけです。
IoBとは?
IoBとは「Internet of Bodies」の略称であり、「人間の身体とインターネットをつなぐ技術」のことです。また、IoBには「行動(動作)のインターネット」を示す「Internet of Behavior」も含まれており、合わせることで「装着した人の生体情報や行動データを読み取りインターネット上に送信する」といった意味に捉えることができます。
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IoTとは?
IoBと類似する技術にloTが存在しますが、loTとの違いは「収集する範囲」の違いです。loTは「あらゆるモノをインターネットにつなげる」のに対して、loBは「人の情報をインターネットにつなげる」ことを意味します。一言でまとめるとloBは「人の行動や動作の情報に特化したloT」といえるでしょう。
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ウェアラブルデバイスの着用箇所による分類
スマートウォッチのような手首に装着するだけではなく、近年では、様々な場所に装着するウェアラブルデバイスが存在します。
頭/顔:メガネやヘルメットなど
頭部や顔に着けるウェアラブルデバイスには、かけて使うメガネ型や、かぶって使うヘルメット型があります。
メガネは着用者から見た映像の記録や情報を表示するためのディスプレイ、ヘルメットは脳波の測定や取り付けたカメラによる映像の記録などに使われます。
他にも、ヘッドバンド型や、頭部全体を覆うヘッドギア型なども存在します。
腕:腕時計など
腕に着けるウェアラブルデバイスには、手首に装着して使う時計型があります。
スマートウォッチがとくに有名であり、心拍数から様々な生体情報をフィードバックします。
他にも、スマートウォッチ同様に腕に巻くリストバンド型や、上腕部に装着するアームバンド型なども存在します。
全身:衣類型のデバイスなど
全身に着けるウェアラブルデバイスには、着て使う衣類型があります。
衣服には電極などが取り付けられており、全身の動きに合わせて情報を収集します。心拍数や心電図以外にも、筋肉の働きなどによって、動作にかかる負荷を調べることも可能です。体に悪い姿勢も調べやすく、治療や研究などにも活用できるでしょう。
CGの作成などに使われるモーションキャプチャも、ウェアラブルデバイスの一つです。
他にも、そのまま仕事ができるスーツ型や、装着が楽なベルト型なども存在します。
足:靴やインソールなど
足に着けるウェアラブルデバイスには、履いて使う靴型やインソール型があります。
靴自体にセンサーが内蔵されており、足から得た生体情報や行動パターンなどを読み取ります。インソールなら、検知のために履き替える必要はなく、普段の靴に使えます。
他にも、インソールとは別に靴に装着する型のデバイスや、足首に着けて使用するレッグリング型も存在します。
その他
紹介した分類以外にも、様々なウェアラブルデバイスが存在します。指に着けて使うリング型や、胸ポケットに入れて使うウェアラブルカメラ。MP3プレーヤーとしても使えるイヤホン型など、身に着ける種類なら、大体の物がそろっています。
自然に日常生活で使える物も多く、今後は、より身近な技術となっていくでしょう。
製造業でのウェアラブルデバイスの活用例
実際にウェアラブルデバイスはどのように使われているのか。製造業における活用例を紹介します。
作業員の健康管理/歩数管理
最も分かりやすい使い方は、ヘルスケア目的です。ウェアラブルデバイスは医療・介護の現場で使われることが多く、患者の血圧や心拍数などを常に確認するために使われています。
製造業でも健康管理は重要であり、ウェアラブルデバイスによって生体情報を管理できます。従業員の体調をリアルタイムで確認ができ、万全な状態で仕事に励むことができるでしょう。
さらに、生産効率の向上目的として歩数管理に使われる場合もあります。歩数や移動のパターンから動作のムダを判断し、ムダのない配置や工程へと改善します。生産効率が良くなると、時間当たりの歩数が多く、1工程ごとの歩数が少ない傾向となるようです(積極的に活動するため歩数が多く、ムダな動作が少ないため歩数が少なくなる)。
他にも、動作パターンから負荷のない動きを指示したりなど、従業員の負担を軽減し健康を守るために活用されています。
ピッキング作業での活用
ウェアラブルデバイスは、工場内のピッキング作業でも使用されています。
株式会社ゴビでは、ピッキング作業の補助装置として、ウェアラブルRFIDリーダー「TECCO」を使用しています。腕に着けて使うデバイスであり、各棚に設置されたRFIDタグにかざすだけで、簡単かつ瞬時に商品情報が読み取れます。
腕に装着するため、手に持って使う必要はなく、作業の邪魔になりません。また、ピッキングに間違いがあれば振動でフィードバックしてくれるなど、見るのではなく感覚で確認できます。
作業の邪魔をしないことを目的として作られており、作業効率の向上だけではなく、従業員もストレスフリーで仕事ができるでしょう。
既に仕事の現場でウェアラブルデバイスは活躍しており、今後も仕事への導入が期待されています。
遠隔での作業支援/技術伝承での活用
ウェアラブルデバイスによって、遠隔での作業支援が受けられます。従業員全員が眼鏡型のウェアラブルデバイスを装着し、作業内容を眼鏡のレンズ(モニター)に映すことで、指示を送るのです。
口頭や紙で伝える必要がなく、スムーズに従業員全体に指示が出せます。作業内容に変更が生じても、素早く変更内容が伝えられるでしょう。
また、映像で教えれば技術も伝えやすいです。分かりやすいことから、事故がなく安全に教えられます。
業務への使用はもちろん、熟練工から新人への教育などの目的にも活用が可能です。
まとめ:生産性の向上や技術伝承など製造業でも注目
ウェアラブルデバイスは、装着者と装着者の周囲をセンシングするデバイスです。生体情報を始め、映像、行動パターン、動作パターンなど、様々な情報を読み取ります。
また、センシングした情報は分析したのちにフィードバックされ、様々な形でサポートします。健康状態や作業手順を知ることで、自分で管理し改善することも可能になります。
他にも、loTの応用や情報伝達などにも使用でき、活用例は多岐に渡るでしょう。
健康管理は、製造業に限らずどの業種でも必要なことです。そうでなくても、作業効率や生産性の向上は企業にとってとても重要な要素といえます。
ウェアラブルデバイスを、既に導入している企業は存在します。ぜひこれを機に、ウェアラブルデバイスの導入を検討してみてください。